私の親友は巨乳じゃなくてちっぱいです!

 ◇ ◆ ◇



 リアルの私は、家から駅まで10分、更にそこから電車で数十分の所にある共学の私立高校に通っている。車椅子で通うのは少し大変だ。ちなみにお兄ちゃんは家の近くの県立高校。


 私もお兄ちゃんと同じ学校に通いたかったけれど、両親から「心凪(ここな)は体が弱いんだから、せめて勉強は頑張りなさい」と言われて高校受験をした。一応偏差値が60くらいの進学校らしい。合格した時は両親はかなり喜んでくれたし、お兄ちゃんも喜んでくれたけど……ちょっと複雑な気持ちだよね。


 私はいつものように授業を受けて、あっという間に放課後になる。うん、今日はしっかりと睡眠が取れてたお陰で眠くなることもなく、授業に集中できたよ! これで期末試験もバッチリだね!



 部活に入っていない私は、荷物をまとめて帰宅しようとしていると


「あ、あの……心凪ちゃん」


 と声をかけられた。見ると、私の隣に茶髪のサイドテールの、小柄だけどすらっとした少女が立っていた。友達の露木(つゆき) 希歩(のあ)ちゃんだ。


「どしたの希歩(のあ)ちゃん?」


 交わす声は少しぎこちない。だって私たちまだ高校に入学してから数ヶ月しか経ってないし、私はともかく希歩ちゃんはかなりの人見知りだから、少しずつ距離を詰めてるの。


 希歩ちゃんは小ぶりな胸の前で両手の指先をくっつけたりしながらもじもじすると、意を決したように口を開く。


「あの! ……私……始めたの!」


「ん? なにを?」


「えと……この前心凪ちゃんが言ってた……ゲーム」


「あー、『トロイメア・オンライン』のことね」



 そういえばこの前希歩ちゃんに「不眠症だから『トロイメア・オンライン』をやるんだー」みたいな話をしたような気がする。覚えてくれてたんだ。


「そう、それ……昨日早速買ってやってみたんだけど……」


「うん、どうだった!?」


 私の食い付きが良すぎたせいか、希歩ちゃんは「ひぃっ」と声を上げて後ずさってしまった。全く、ビビりなんだから……。


 でも私はこの子の本性を知っている。希歩ちゃんは女子バスケットボール部のエースで、私も何度か試合を見た事あるけど、小柄な身体で相手ディフェンスを切り裂いていくテクニック、フットワークは見ていてとても興奮した。私、自分がスポーツできないから他の人がやってるの見るの好きなんだよね。


「あ、えと……とても楽しかった……よ?」


「ほんと!? よかったぁ……」


 希歩ちゃんなら『トロイメア・オンライン』の世界でもきっと上手くやれると思う。


「リアルより……緊張せずに話せる気がする……みんな映画とかアニメとかのキャラクターみたいだから……」


「うんうん、よかったよかった!」


「あのっ、心凪ちゃん。……も、もし良かったらフレンドに……」


「あー、ごめん。私、リアルのことはゲームに持ち込まないし、ゲームのことはあまりリアルに持ち込まないようにしてるの」


 っていうお兄ちゃんの言いつけです。ごめんね希歩ちゃん。ほんとは希歩ちゃんとワイワイゲームがしたいよ。


「そ、そう……なんだ……」


 少し残念そうな希歩ちゃん。


「……ごめん」


「でも……心凪ちゃんならゲームでも友達たくさんいそうだよね……私なんかがフレンドになっても……」


「あぁぁぁぁっ! 違うのそういう意味じゃなくて!」


 私は慌てて手を振って否定した。すると、希歩ちゃんは「一緒に帰ろ?」と言いながら私の背後に回る。私が車椅子を手動で押せるようにギアを切り替えると、希歩ちゃんは車椅子を押しながら歩き始めた。

 こうしながら話す方が私の顔が見えないから緊張しないらしい。私も希歩ちゃんの顔が見えないから寂しいんだけどなぁ?


「心凪ちゃん、頭いいからゲームでも大活躍してそう……」


「ん? そんなことないよ?」



 大活躍……大活躍なのかな? ただ自爆してボスを一撃で倒しちゃったり、大量虐殺しちゃったり、やりたい放題やってはいるけど。

 あと、頭いいというのは買いかぶりだ。リアルで体を動かせない分頭を動かす癖がついているだけで、必ずしもいいアイデアが閃くわけではない。


「もし……偶然ゲームで会ったら、よろしくね? 私、心凪ちゃんに負けないように頑張って強くなるから」


「私も弱いって……希歩ちゃん運動神経抜群だからすぐに追い抜かれるよ」


「そ、そうかな? 少し進めてるんだけど全然分からなくて……」


「あー、とりあえずステータスを極振りしないようにすれば何とかなるよ多分。あとはベータテスターの人からアドバイス聞いたりすれば」


「きょくふり……?」


「うん、1つのステータスをひたすら強化することをそう言うらし――どしたの希歩ちゃん?」



 突然私の車椅子を押していた希歩ちゃんが立ち止まったので、私は首を傾げながら振り返った。すると希歩ちゃんは口元に手を当てて考えるような姿勢で固まっている。


「……やっぱり、だめだったのかな……?」


「えっ、何がダメなの?」


「あ……ううん、なんでもないよ……?」


 希歩ちゃんは、そう言いながら、にへっと笑った。



 ◇ ◆ ◇



 《トロイメア・オンライン(TMO) 総合雑談掲示板♪》


 トロイメア・オンライン(TMO)における、みんなの雑談掲示板になります。基本的に書き込みは自由ですが、他人の誹謗中傷やアカウント晒しは禁止です。トロイメア・オンライン(TMO)に関する雑談をみんなで楽しみましょう!



【自業自得で草】初心者狩りのベータテスター集団、逆に初心者に狩り殺されるwww


 101.名無しさん

 初日に狩られてて草www


 103.名無しさん

 いやまて、初心者狩りしてたのはルー〇たちの一団だろ? 10人のベータテスターを倒した初心者って?


 104.名無しさん

 謎初心者の詳細求む


 106.名無しさん

 >>104

 なんか、ウチの店にルークたちの装備らしきものを売りにきたプレイヤーがいたけどそれかもしれない


 107.名無しさん

 >>106

 早速店開いてて草wwwどんなやつだった?


 108.名無しさん

 >>107

 ふわふわの金髪、赤い目の女の子だった。装備からして『精霊使い』かな。


 109.名無しさん

 >>108

 嘘松www『精霊使い』にそんなやべぇ魔法使えるわけないだろwww


 111.名無しさん

 >>109

 それなwww


 112.名無しさん

 『精霊使い』装備なら、『闇霊使い』の自爆魔法かもしれんで


 115.名無しさん

 >>112

 まさかwww


 116.名無しさん

 [画像が送信されました]

 なんか出回ってるの見つけたんだけどもしかしてこいつ?


 117.名無しさん

 >>116

 なにこれwwwコラ?


 118.名無しさん

 >>116

 エッッッッッッ


 120.名無しさん

 >>116

 すっぽんぽんwww

 

 121.名無しさん

 >>116

 ロリ巨乳www

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