第202話 待望の宝箱!

 なんだか色々あったけれど、ミミックも退治して、ようやく待望の宝箱を開けられる準備が出来た!

 ミミックは私達に敗れると、普通の宝箱になった。


 前の時は確か一つだけだったけれど、今度は二個!

 何が入っているのかしら! ワクワクしちゃう!


「ねえねえ、マルク! 早く開けたいわ!」

 私は両方の拳を握って、ねえねえ、と小躍りしそうな気持ちでマルクにせがんだ。

「まぁったく。デイジーは、そういうところは年相応に子供っぽいのな」

 マルクがそう言うと、仲間がみんなその言葉に同意しているのか、声を上げて笑う。


 ……む。いいじゃない。私はまだ十一歳。楽しそうなものには、ワクワクするのよ!


「じゃあ、まず一個目はデイジーに開けてもらおうか!」

 リィンが私の両肩を掴んで、ミミックじゃなかった方の宝箱の正面に私を誘導する。

 みんなも、うんうん、と頷きながら私の周りを囲む。

 私は、その宝箱の前にしゃがみ込んだ。そして、宝箱の蓋に両手を添える。


「……開けるわよ! せーの!」


 蓋を開けると、麻の袋に入った何かが入っていた。

「……種?」

 麻袋の口を解いて、中のものを手のひらに出してみると、何か種のような物が私の手のひらの中に転がり込んできた。

「うーんと、これは……」

 私は、早速初めて見る種を鑑定しようとする。


 ……んだけど、なんだか種の載った私の手のひらに、リーフとレオンとティリオンがすり寄ってくる。

「ととと、ちょっとあなた達、鑑定の邪魔よ」

「そうは言っても、デイジー様。その匂いがたまならないんです……」

 そう言うのはリーフ。

「一粒ずつで良いのでいただけませんか?」

 そして、おねだりしてくるのはレオン。

 ティリオンも、ピィピィと鳴いて欲しそうに訴えてくる。


「……あ、それ、かも」

 そう呟いたのは、マルクだ。


 とりあえず、鑑定して安全なものだったら、リーフ達にあげようかしら?

 そう考えながら、その種を鑑定した。


【またたびの木の種】

 分類:種子類

 品質:良質

 レア:B

 詳細:獣達が大好きな匂いを発する種。また、テイム時に使用するとテイム率が上がる。種なので当然発芽もする。

 気持ち:獣達がごろごろしちゃうよ!


「『またたびの木の種』ですって。なんか、獣達が大好きらしいわ」

 私がそう説明すると、マルクが「やっぱりそうか」と言って納得する。なんだか、リーフ達の様子でピンときたそうだ。


「これも、以前の種のようにレアものなんだ」

 そう言って説明してくれたのはレティアだった。

 なんでも、『テイマー』という、従魔を従える職業の人達が、喉から手が出る程欲しい品物なのだという。


 まず、テイムする時に、この『またたびの木の種』や『またたびの木の枝』があると、魔獣達の方から寄って来るし、魔獣を従える(従魔にする)成功率が上がるらしい。

 また、従魔になった後も、定期的に与えると、より仲良くなれるそうだ。つまりは、よく懐いてくれるということ。


「それ、上手く育てられたら王宮付きのテイマーにも、冒険者のテイマーにもバカ売れすると思うぞ」

 とは言っても、やはり育てられた人は今の所いなくて、レアアイテム扱いなのだそうだ。


「……この間のように、デイジーが栽培にチャレンジしてみたほうがいいんじゃないか?」

 リィンも頷いている……が。


「そんな、殺生です! 私達に少しでいいので、それを分けて欲しいです!」

 三匹がそう言って私の周りに集まって、おねだり攻撃をしだした。

 いつもはお行儀の良いリーフ達にしては珍しい。それだけ欲しいってことね。


「うーん。この谷を出て安全な場所まで行ったら、三匹にまずは一個ずつあげる。それと、栽培用を確保した残りはそれぞれの主人に分けるってことで良いかしら?」

 もう、目が「欲しい! 欲しい!」とキラキラ輝いていて、涎を垂らしそうな三匹と、仲間のみんなに確認する。


「まあ、いっつもリーフ達には頑張ってもらっているのに、これといって配分があるわけじゃないしなあ。これほど欲しがるものならいいんじゃないのか?」

 と言うマルクのまとめの言葉に、リーフ達も納得したようで、ピシッと姿勢良くお座りをして、「ありがとうございます!」と尾を振った。


「じゃあ、次の宝箱は……」

「はい! 私開けたいです! 初めてなんですっ!」

 マルクが全員に尋ねると、宝箱が初めてのアリエルが、パッと挙手をした。

 その初々しい仕草と言葉に、マルクやみんなの目が細くなる。


「じゃあ、アリエルだな!」

「やったぁ!」

 無邪気な笑顔でその場で飛び跳ねる。そして、いそいそと未開封の宝箱の前に陣取った。


「開けますよ〜!」

 アリエルの両手が宝箱の蓋に添えられ、かつてミミックだった宝箱の蓋が開けられる。

「……また、麻袋に、……種でしょうか?」

 麻袋を取り出し、その手触りや、振って音を確認しているアリエルだった。

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