第193話 ルリイロカネ
「アナさん、この金属がいいみたいだわ」
そう言って、私はルリイロカネの前でアナさんを呼ぶ。
【万年氷鉱】
分類:鉱物・材料
品質:高品質
レア:A
詳細:装備品に加工することで、三十%の氷属性の追加ダメージを与える。
気持ち:なんて美しい方……。私はこの方と共になりたいわ!
【ルリイロカネ】
分類:鉱物・材料
品質:高品質
レア:A
詳細:遠い東国で採掘された希少金属。鍛えれば強靭な武器となる。
気持ち:ほう。強さと美しさを兼ねた方だ。我が伴侶に相応しい。
鑑定で見ると、相性もとっても良さそう!
「どれどれ。おお、これは実にいい結果が得られそうだ!」
アナさんが私の元にやって来て、その二つの素材を見比べる。アナさんは、オーラのようなもので物同士の相性が見えるそうだけれど、その結果も良好みたい!
必要になるのは、アリエルの矢、リィンのハンマー、あとは念のためにマルクとレティアの分。
多めに見積もった量を、店主に総額計算してもらったら、やはりなかなかの金額になってしまった。
「これは、遠い国からの輸入品だからね。輸送費が半端じゃないし、物も少ないしで、どうしても値が張るんだ」
店主さん曰く、そういうことらしい。
「デイジーは商売繁盛だろうから、払えない額じゃぁないと思うけれど、他の仲間はどうするんだい?」
アナさんが心配してくれる。
そう。必要経費はちゃんと仲間といっても請求させてもらっているのよね。
「うーん。多分みんなそれなりに、いつもの足した魔獣の精算分で収入あるのよね。さらに、そもそも本業があるし……」
アリエルにだって、ちゃんと普段はミィナのパン工房のお手伝いをしてもらっているので、お給金を支払っている。
最悪、足らない人がいたら、ドレイクを倒した暁に精算して貰えばいいかな。亜種といっても、竜種の中ではそう倒されて、素材持ち込みなどされないから、ドレイクは高く売れると思うのだ。
「いいわ。ひとまず私もちで買っちゃいます!」
思い切って精算してもらって、ポシェットに入れて持って帰ることにした。
そして、私のアトリエの前でアナさんにお礼を言って解散し、私は、自分のアトリエに帰ってきた。
「ただいま」
「お帰りなさい。良い素材、ありましたか?」
店舗内の掃除をしてくれていたらしいマーカスが、その手を止めて尋ねてくる。
「うん、かなり取り揃えの充実したお店だったから、相性のいい金属も無事に見つかったわ!」
「それは良かったですね!」
私は、マーカスのそばに行って、ポシェットの中から一つルリイロカネのインゴットを取り出して、彼に手渡す。
すると、早速マーカスは鑑定の目で見ているようだ。
「ルリイロカネ……。こんなに綺麗な金属、初めて見ますね。こんな金属があっただなんて。世界は広いですね」
そして、うっとりとした目で暫く金属を眺めていた。
「他にも、それと対になるような、ヒヒイロカネという金属もあったわ。今度機会があったら、そのお店にマーカスも行く?」
すると、マーカスが、キラキラした期待に満ちたような目を私に向ける。
「ぜひ!」
とっても嬉しそう!
そうして、マーカスから、渡したインゴットを返してもらい、私は金属調合の場所である錬金釜の元へ行く。
錬金釜の中に、買ってきたルリイロカネと万年氷鉱を入れる。
そして、いつもの厚手のエプロンと軍手を身に付けて……。
さあ! 合金作成の開始よ!
壁に立てかけてある撹拌棒を手に取って、錬金釜に差し込む。
……さて、魔力を注ぐわよ。溶けて、一緒になれる瞬間を味わう時よ!
素材達に心の中で語りかけながら、攪拌棒に魔力を通す。
【結氷のインゴット?】
分類:合金・材料
品質:中級品
レア:A
詳細:武器にした場合、氷属性ダメージを与えることができる。だがまだ与えるダメージは弱い。
気持ち:まだまだですね。私達の力はこんなものではありませんわ。
そうね。そうよね。そんなんじゃ困るわ。
だって、これがドレイクを倒すための武器になるんだからね!
……もっともっと強くなってもらわなくちゃ、私も困っちゃうわ!
そうした願いとともに、魔力を注ぎ込んでいく。
【結氷のインゴット】
分類:合金・材料
品質:高級品
レア:A
詳細:武器にした場合、氷属性ダメージを追加で三十%分与えることができる。
気持ち:なんか、これじゃあ普通って感じがしない? あなたはこれで満足しているの?
え? 鑑定からすると、品質は高級品に上がって、予定していた氷属性ダメージを与える代物になっている。
なのに、まだ足らないの?
……というか、『あなたはこれで満足しているの?』って、私に挑戦している?
ちょっと面白くなってきて、私はニヤリと笑う。
……何が欲しいのか、言ってご覧なさい!
『冷たく冷たく冷やしきった水属性の魔力が欲しいわね!』
錬金釜の中のドロリとしたものが、私の問いにそう答える。
私は、一旦攪拌棒から手を離して、魔力の練り上げを始めることにした。
……おへその下から魔力を取り出して、そして両手の間に魔力を止めて、練って練り上げる。
それは冷たく、永久に溶けないほどの冷たさ。
ううん、きっとこの子はそれじゃ満足しない。もっと冷たく。
リリーの言う、ものはこんな形をしていると言って書いていた絵。
あの存在が、一切動けなくなって、物の性質すら破壊してしまうほどの冷たさ……!
すると、私の魔力を練り上げている両手のひらの間の丸い魔力から、白い煙のようなものがモヤモヤと生まれだしてきた。
「ほら! これが欲しいんでしょう!」
そう叫んで、錬金釜の中に放り込む。
すると、
本来なら溶けていた金属が冷やされて、固体に戻ってしまいそうな物なのだが、どろどろの金属はそのままで、その中に、私の投げ入れた魔力がズブズブと飲み込まれていく。
『これはいい! あなたやるわねーー!』
素材がそう歓喜の声を叫ぶ(?)と共に、青白く発光した。
私はあまりの眩しさに、額に手をかざすのだった。
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