第153話 水着を選ぼう!

 火山洞窟の採取を終えた翌朝、朝早くから起き出したリィンがソワソワと落ち着きなさそうにしていた。

「ちょっと、リィン。食べ方汚い」

 早速、朝食で出された食べ物をぼろぼろと崩してしまい、食べ終わった皿の汚さをアリエルに注意されていた。

「だぁってさあ。海なんて初めてなんだよ?出かけるのが待ちきれなくて……」

 リィンは、下唇を尖らせてむくれる。

「……リィン、海は逃げない。落ち着け」

 ポフン、とレティアに頭を撫でられる。

「わかってるけどさあ〜」

 リィンのむくれ顔はまだ治らない。肘をついて、ぷうと頬を膨らませていた。

「じゃあ、水遊びのための水着や遊び道具を見繕いに行くか?」

 そう提案しながら、レティアの手が、再びポンポンと頭を撫でた。

「行きたい!」

 ばん!とテーブルを両手で叩いて、リィンが立ち上がった。

「もう、マナー悪いんだから〜」

 再びアリエルが眉を顰めるが、「しょうがないか」と腰をあげる。

「「行こうか!」」

 私とマルクも立ち上がる。……が。

「お前は男一人で物色してこい」

 レティアに、肩をぽん、と抑えられるマルクがガックリ肩を落としていた。

「……せめてパーティーに男がもう一人いれば……。男一人で観光地か」


 まあ、そんなマルクはかわいそうだけれど、残念ながら別行動だ。

 だって、遊び道具ならともかく、水着はねえ……。

 ちなみに、貴族は肌の露出が多い事は、あまり良くない事とするけれど、こういう避暑地や水辺の観光地だけは別。水着で肌を見せることも認められているのだ。


 ……とは言っても。


「……どこもみんなイマイチなデザインね」

 やはり、生地のカラーやデザインが気に入るようなものは無い。

 まず地味。なんか、ぴったりした半袖シャツに短パンを合わせるようなものばかりだ。

「まあ、これが常識的なものだがな」

 そう言って、この辺りで適当に選ぶか尋ねてくるレティア。


 ……ん、待って!


 なんか、どこかで見たことがあるような人がやって来るのだ。

 化粧が濃い。背が高い。ガタイがいい。でもフリルたっぷりのブラウスを体のラインピッタリで着ていて、パンツは黒のピチピチレザーパンツ。……そして身体は男性。

「「「マリリン、さん?」」」

 思わず、マリリンさんと面識のあるちびっ子三人組が、すれ違いざまに呟いた。

「……ん?」

 いや、ちょっと顔の造形は違うんだけど、その人は、やはり、マリリンさんの知り合いなのか立ち止まった。

「アナタたち、王都のマリリンを知っているの?」

 艶々な赤に染められた爪の、その小指を立てながら、私達に尋ねてくる。

 ……あ、『王都の』ってことは、やっぱりマリリンさんの知り合いだ!


「私達、王都のマリリンさんのお店でお世話になったことがあるんです!」

 私は思いきって答えてみた。

「あらまあ、マリリンのお客さん!私はここで『マリリンの店・二号店』を任されている、リリアンっていうの!あ、ちなみに私は、マリリンのよ」

 そう言って、ちびっ子三人組にフレンドリーに握手を求めてくるので、各々それに応えた。

「二号店って、洋品店なんですか?」

「ええ、ただし、場所柄水着とかのリゾートウェア中心ね!うちのは可愛いわよ!」

 ふふふ、とリリアンさんがウインクしながらアピールする。

 ……可愛い水着!

「私達、水着探してたんです!」

「あら、じゃあ、ウチにいらっしゃいよ〜!」

 私達ちびっ子三人組は、ダサい水着を見飽きて、リリアンさんの店に行く気マンマンだ。レティアは、そんな私達のウキウキした表情を見て絆されたのか、リリアンさんの店でまず物色することに同意してくれた。


 そしてやってきた、『マリリンの店・二号店』!

「あ、かわいい!これワンピースみたい!」

 店にやって来て、早速私が目に付けたのは、まるでスカートのように裾がフリフリしていて可愛いワンピース。胸元はサイドの生地を持ってきて、ちょうど胸元でリボン結びになっている。だから、ちょこっとだけ、そのリボン結びの下あたりに生地がなくて肌が見えちゃうけど……。これくらいの肌見せならいいよね!

 私は即決した。

「そうね、あなた達くらいの女の子なら、背伸びしないでそういうワンピースとかはイイわね。あとは……」

 そう言いながら、店内からいくつか商品を出してきてくれるリリアンさん。

「上下別れた、『タンクトップ型』って私は言っているけれど、上はオヘソが出るくらいのトップスで、下をフリルいっぱいの可愛いボトムスにするか、ボーイッシュなタイプにするかも選べるわね!あとは……『ビキニ』型って名前にしたタイプも用意しているけれど、ちょっと恥ずかしいわよね?」

「……私はこれだな」

 そう言って出された品の中から、シンプルな黒のビキニを取り出したのはレティアだった。

「「「……わー、大胆……」」」

 ちびっ子三人組は、その潔さにほけ〜っと口を開けてしまった。

「あ〜ら、お姉さんは自分をお解りみたいね。あなたみたいにスタイルよし、クール系美女には、それで決まりよ!」

 リリアンさんの賞賛の言葉に、両者はハイタッチをして、ニヤリと笑いあう。

「買った」

「まいどあり!」

 とするとあとは、リィンとアリエルだけど……。

「私は、この『タンクトップ型』ってやつで、胸と腰の部分がフリルになっているのにする!」

 アリエルは、おへそは出ちゃうけど、その体型カバーがあるのにしたようだ。

 で、残りはリィン。

「あたしはそういう、可愛らしいのは無理!これにする!」

 そう言って選んだのは、やはり『タンクトップ型』のスポーティなデザインのものを選んだ。


 こうして、ようやく各自の水着が決まったのだった。

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