学舎と寄宿舎生活:術士のレベルは意外と上だった そして洞窟に踏み入れた

 いよいよ冒険者の実践の授業が始まる。


 ……前に。


 二年生になってから今日まで、僕らの学年では一人退学者が出て六十人になった。

 六人一組の編成なので、パーティは十組作られることになる。

 どの組も、その役割はバランスよく編成されているとは限らない。

 だから先生達は、その抜けてると思われる役割を埋める形でついて来てくれるんだそうだ。

 そういう意味では、僕らのパーティはバランスが取れてる方らしい。


 そして、一組ずつ洞窟に入る。

 確かに他の部屋の生徒とも交流はあったりするけど部屋ごとの交流はほとんどないから、パーティ同士の連携は戦力は上がるけど意思疎通が難しいから危険度も上がる。

 それだけで済むならまだいいかもしれない。

 全員生還した後、相手の落ち度の責め合いになるから、生徒の仲が険悪になることもある。


 だから前の組が出発した後、次の組がそれに追いつくことがないくらいに十分に時間が経過したのをスタートをチェックする先生が確認して、次の組を出発させる。

 出発前には、そのメンバー一人一人がもつ二つのレベルを鑑定してもらう。


 その二つとは、冒険者レベルと技術レベル。


 技術レベルとは、僕ら術士学部の生徒では、発動できる魔術のレベル。

 高ければ高いほど、その術の使い手として一流になっていく。

 回復術士なら、診療所で生計を立てるなら、どんな患者でもたちどころに治してくれる、なんて評判も早く広まるだろう。

 闘士学部なら、剣術にせよ体術にせよ、優れた指導者にもなれる。


 そんな技術を中心として、冒険者としてどんな依頼でも受けて達成する。

 冒険者レベルが高くなれば、その依頼の難易度が高くなっても平気、といった関係らしい。


 ちなみにステータスは、冒険者という業種が認可されてからいろんな項目があったらしいけど、次第に増え始めて、それを全部項目にあげたら誰も自身のパラメーターを把握しきれなくなって、レベルという枠だけを目安にすることにしたんだとか。

 だから先頭になった時、レベルの差が五以上あれば、高い方がほぼ勝てる、とのこと。

 レベルが低い方のステータスのどれかは高い方よりも優る項目はあるらしいんだけど、それくらい差があると低レベルの方が戦闘で勝つのは難しいらしい。


 そんな冒険者についての講義で、先生の話が横道に逸れたことがあって、その中でステータスでどんなのがあるかって話になった。

 筋力関係では、腕力、脚力、腹筋、握力、持続力、瞬発力、耐久力

 五感では、視力、聴力 嗅覚、味覚、感覚

 素早さでは、瞬発力、反応速度、走力、跳躍力

 瞬発力は筋力と素早さでは別物なんだって。

 あとは、知識力、記憶力

 さらに、冒険者として活用できる技術レベルもその中に入るらしくて、火、雷、水、地、風の五大元素のほかに、熱、爆、毒とか

 回復では……とさらに続き、聞いてた僕を入れたみんなが次第に疲れてきた。


 聞いてるだけでも疲れるのに、それぞれの能力を分かりやすく数値にあてはめて、となったら、自分のは把握できたとしても、魔物との戦闘になった時、相手のパラメーターを知って自分のと比較してどっちの何がどれくらい多いか少ないか、の把握がね。

 分かった時には致命傷を受けかねないから、だって。

 まぁ魔物の場合は僕ら人間のパラメーターは見ようとはしないし、本能で逃げたり何も考えずに襲い掛かってきたりするからね、とのこと。

 だから、どんな冒険者でも最優先することは生還。

 それを基準にどんな行動をとるか、が大切、って言ってた。

 魔物の体の一部とか持ってるアイテムを収拾するのが目的なら、その戦闘相手を選ばなきゃならないけど、圧倒できる魔物以外なら、なるべく戦闘を回避するのが基本らしい。


 そんなパラメーターが見えるようになるためには、卒業、あるいは規則違反以外のやむを得ない退学者に、それが見えるようにしてくれるらしい。

 術を使う仕事を生業とするなら、見える方が仕事しやすいから、だって。

 違反者の場合は、それを悪用されるかもしれないから、そういう措置は取らないらしい。


 いいよいよ冒険者の実践の授業が始まる。


 ……前に。


 二年生になってから今日まで、僕らの学年では一人退学者が出て六十人になった。

 六人一組の編成なので、パーティは十組作られることになる。

 どの組も、その役割はバランスよく編成されているとは限らない。

 だから先生達は、その抜けてると思われる役割を埋める形でついて来てくれるんだそうだ。

 そういう意味では、僕らのパーティはバランスが取れてる方らしい。


 そして、一組ずつ洞窟に入る。

 確かに他の部屋の生徒とも交流はあったりするけど部屋ごとの交流はほとんどないから、パーティ同士の連携は戦力は上がるけど意思疎通が難しいから危険度も上がる。

 それだけで済むならまだいいかもしれない。

 全員生還した後、相手の落ち度の責め合いになるから、生徒の仲が険悪になることもある。


 だから前の組が出発した後、次の組がそれに追いつくことがないくらいに十分に時間が経過したのをスタートをチェックする先生がが確認して、次の組を出発させる。

 出発前には、そのメンバー一人一人がもつ二つのレベルを鑑定してもらう。


 その二つとは、冒険者レベルと技術レベル。


 技術レベルとは、僕ら術士学部の生徒では、発動できる魔術のレベル。

 高ければ高いほど、その術の使い手として一流になっていく。

 回復術士なら、診療所で生計を立てるなら、どんな患者でもたちどころに治してくれる、なんて評判も早く広まるだろう。

 闘士学部なら、剣術にせよ体術にせよ、優れた指導者にもなれる。


 そんな技術を中心として、冒険者としてどんな依頼でも受けて達成する。

 冒険者レベルが高くなれば、その依頼の難易度が高くなっても平気、といった関係らしい。


 ちなみにステータスは、冒険者という業種が認可されてからいろんな項目があったらしいけど、次第に増え始めて、それを全部項目にあげたら誰も自信のパラメーターを把握しきれなくなって、レベルという枠だけを目安にすることにしたんだとか。

 だから先頭になった時、レベルの差が五以上あれば、高い方がほぼ勝てる、とのこと。

 レベルが低い方のステータスのどれかは高い方よりも優る項目はあるらしいんだけど、それくらい差があると低レベルの方が戦闘で勝つのは難しいらしい。


 そんな冒険者についての講義で、先生の話が横道に逸れたことがあって、その中でステータスでどんなのがあるかって話になった。

 筋力関係では、腕力、脚力、腹筋、握力、持続力、瞬発力、耐久力

 五感では、視力、聴力 嗅覚、味覚、感覚

 素早さでは、瞬発力、反応速度、走力、跳躍力

 瞬発力は筋力と素早さでは別物なんだって。

 あとは、知識力、記憶力、器用さ、計画性、カリスマ性……

 さらに、冒険者として活用できる技術レベルもその中に入るらしくて、火、雷、水、地、風の五大元素のほかに、熱、爆、毒とか

 回復では……とさらに続き、聞いてた僕を入れたみんなが次第に疲れてきた。


 聞いてるだけでも疲れるのに、それぞれの能力を分かりやすく数値にあてはめて、となったら、自分の把握できたとしても、魔物との戦闘になった時、相手のパラメーターを知って自分のと比較してどっちの何がどれくらい多いか少ないか、の把握がね。

 分かった時には致命傷を受けかねないから、だって。

 まぁ魔物の場合は僕ら人間のパラメーターは見ようとはしないし、本能で逃げたり何も考えずに襲い掛かってきたりするからね、とのこと。

 だから、どんな冒険者でも最優先することは生還。

 それを基準にどんな行動をとるか、が大切、って言ってた。

 魔物の体の一部とか持ってるアイテムを収拾するのが目的なら、その戦闘相手を選ばなきゃならないけど、圧倒できる魔物以外なら、なるべく戦闘を回避するのが基本らしい。


 そんなパラメーターが見えるようになるためには、卒業、あるいは規則違反以外のやむを得ない退学者に、それが見えるようにしてくれるらしい。

 術を使う仕事を生業とするなら、見える方が仕事しやすいから、だって。

 違反者の場合は、それを悪用されるかもしれないから、そういう措置は取らないらしい。


 さて……。


 ※※※※※ ※※※※※


 裏口のすぐ横に、机といすが置いてあり、そこに一人の先生が座っていた。

 その先生は座ったまま、僕らに声をかけてきた。


「さて、レベルを鑑定するぞ。先のレベルは冒険者の。あとのレベルは技術レベルだからな。……リーダーはカーク・クラフト。レベル3とレベル8」


 チェックする先生の鑑定が始まった。

 僕らはまだ冒険者の活動はしてないから、技術レベルを冒険者レベルが上回ることはまずないらしい。

 一年と半年以上学舎の授業を受ける中で、技術を使った回数は数知れず。

 だから技術レベルは上になる。

 冒険者レベルの方が上という冒険者もいる。

 その場合は、冒険者職の適性が間違ってる、と言えるんだそうだ。

 剣士の方が向いてるのに、不向きの魔術を好んでその系統の職種になった人とかがそう。

 けど入学時に闘士と術士の適性検査を受けた僕らには、その例はないんだって。


「サクラ・ミンカ。レベル3、レベル9」


 名前順で鑑定してもらってるから、2番目はサクラさん。

 回復術は日常でも使ってるし授業でも鍛錬してるから、技術レベルはカーク君よりは上なんだな。


「ラーファ・セレスト。レベル3、レベル9」


 弓戦士のラーファさんは、あまり目立つ特徴じゃないけどとても器用らしい。

 弓を射出してから次の弓を番えるまでの動きに無駄がない、という先生からの評価。

 一度に二本の矢を放つ練習もしてるとか。

 会得できたらその要領で、三本とか四本も番えられるようになる、とも言ってた。


「リーチェ・ヌイック。レベル4、レベル8」


 細身の剣士なだけあって、繰り出す攻撃の手数は多いんだけど、素早さが高いんだとか。

 だからカーク君の後ろにいつもいるんだけど、そこから飛び出る方向がまちまち。

 だから予測不能なんだって。

 もともと素早いから、彼女ならではの攻撃ができるからだとか。

 そういう工夫もできることが冒険者レベルにも影響してるとのこと。


「レイン・ターツ。レベル4、レベル8」


 消灯時間になっても、寝室で勉強してるらしい。

 光の魔術を使って。

 だから魔術を使う回数は、本人の思う以上に多いってことになる。

 本人も驚いてたから。


「ルスター・ロージー・レベル3、レベル10」


 ……はい?


「え?」

「何で?」

「嘘でしょ?」

「何インチキしてんのよ!」

「何でお前の技術レベル、そんなに高いんだよ」


 いや、こっちが聞きたいんですけど?


 技術レベルは誰よりも高い。

 と言うか、まさかの二桁。

 冒険者レベルが低いのは納得してるけど……。


 と言われても、2つか1つしか違わないじゃないか。

 二桁と一桁って、別に大きな壁があるわけじゃないよね?


「そう言えばシュース先生から話聞いてるぞ。食堂の人から包丁の手入れ頼まれたり、先生も大工道具の修理とか頼まれてるんだってな。おそらくその成果じゃないか?」


 ……あ……。

 うん……。

 思い出した。

 学舎で時々いたずらしてた。

 先生達が使うチョーク、短くなったのをどこまで直せるか試したり。

 黙ってそう言うことをしてるから、言わない方がいいかなぁ?

 寄宿舎内ではほら、シュース先生達に感知されたら何言われるか分かんなかったし、学舎ではそんなことをする先生いないらしいし。


「メロウ先生、そろそろ出発していいですよ」

「あ、了解です。まぁでも、このミョール先生のレベル鑑定は正確だし、インチキはないな。それにこの授業の重要なところは、その技術をいかに実戦で生かせるかってことだしな。技術職の道に進むか、冒険者業に進むか。将来の分かれ道の一つだからな。レベルが上の者に嫉妬せず、レベルが下だからと卑屈にならず、目の前の役割を果たすこと、ただそれだけに集中するように!」


 強い言い方に僕らの気持ちも引き締まる。

 仲間同士で何かを言い争うなんてことは、油断以外の何者でもない。

 それはみんなも分かってるようで、顔つきも変わる。


「はいっ!」


 僕らはほぼ同時に、気合の入った返事をする。

 そして洞窟の中に進んでいった。


 ※※※※※ ※※※※※


 洞窟内の道の幅は思ったより狭くはない。

 けど、照明は弱く、間隔が広い。

 だから反対側の壁がぼんやりとしか見えないし、照明の間も薄暗い。

 天井もうっすらと見えるから、注意しなければならない範囲は心持ち狭いから気が楽ではある。

 けど慎重に進まなければ、突然近づいてくる魔物がいたら対応ができない。


「本当に危険になったら動くが、多少の怪我をしてしまいそうになっても先生は動かないからな」


 僕らの一番後ろにいるメロウ先生は、腕組みをしながら歩いている。

 何があっても僕らだけで何とかしろ、ということらしい。


「魔物、動物、色々いるが、ここらに出てくるそいつらのレベルは、高くても2や3。落ち着いてれば対応できるはずだ。冒険者レベルでは差はほとんどないが、地力はお前らの方がはるかに上だからな」


 その忠告を聞いて少しは安心できた。

 慎重に、油断なく進むべきだけど、恐れの気持ちが強くなったらレベル差の優位はなくなってしまうから。


「光の魔術使おうか」


 レイン君の提案は、この活動には適したもの……だと思ったんだけど……。


「やめとけ。その光に釣られて、とんでもない物を呼び寄せることになるかもしれねぇし」


 とカーク君が止めた。


「先生達は、ここの道の説明してくれたけどさ、あたし達以外の物が通る道まで説明してくれなかったよ? と言ってもあたしもこのことに今気づいたんだけど」


 リーファさんが続いてそんなことを言ってきた。

 言われてみればそうだ。

 この薄暗い中で、小さいトンネルが見えづらい所にあったらば……。


「小さくても数えきれないほどの数で襲われたら対応できないしね」


 闘士学部の授業は、多分厳しいんだろう。

 三人とも、ここに来るのが初めてじゃないような言い方をする。


「すると、前線の三人の能力増強も、ピンチの時以外は控えた方がいい……よね」


 道具管理担当になった僕も、今まで思いもしなかったことに気付く。

 けどその反応は……。


「そんなの当然だろ」

「何でもないときに回復薬使って意味あると思ってんの?」

「例えば急に天井が崩れたりした時に、必要な薬とかが切れてたらどうするつもりなのよ」


 まったくもってその通り。


「……その小さいモノがいくつか……前にいるんじゃない?」


 洞窟に入って早々、サクラさんが何かの存在に気付いたようだった。

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