心地良くない目覚め
「それじゃあ、ボクは一足先にパデイラに行ってるから!」
水溜りみたいな姿と化したズパさんは、ぽちゃんと、言葉だけ残して地面に吸い込まれて消えてしまった。
そういはなんか言ってたっけ、自分の身体は浄化の水で出来ている。つまりはダジュレイの血で穢された場所に自分が行かなければ、大地をきれいにすることができないんだってことを。
「……ありがとう、ラッシュ」髪ひとつ濡れてないルースが、申し訳なさそうに俺に話しかけてきた。
「どうだ、具合は?」
「うん、ずっと胸の中にあった重苦しさがきれいさっぱり無くなってる。ズパのおかげだよ」
「だな、礼ならあいつに言った方が……」
「いや、さっき水の球の中で話してたんだ。ラッシュは自分のことより仲間のことを真っ先に気にするやつだから、彼に礼を言いなって」
別に例もなにも、ホントに願い事なんてなかったしな。
「ラッシュには二度も借りを作っ……て痛ぁ!」
あんまりグダグダ話し続けてるもんだから、一発殴って黙らせた。
つーかこいつに二度も借りなんてあったか?
……あ、南の島でナウヴェルに会った時のことか。ンなことすっかり忘れてたな。
とはいえ、ルースはともかく俺はあいつと死ぬまで戦ってたから異様に疲れていた。そう、身体を使ってないのに、だ。
対してチビは……まだダメだ。俺のことを警戒して全然近寄ってもくれない。こっちを怪訝そうな目でチラチラ見つつ、その手はルースの服の裾を掴んだまま。
やべえな。こりゃ完全に嫌われてるっぽい?
そんなことで俺たちはルッツェル公とメイドたちに事の次第(ズパさんとの一件はうまくルースがはぐらかして)を報告。近いうちにスーレイも元の大地に戻ると説明しておいた。
「どーする、これから?」
「どうするもなにも、何日かしたらジールたちがここに来るはずだしね。それまでここにご厄介させてもらってもいいんじゃないかな」
俺たち三人にあてがわれた客室のベッドで大の字に寝転ぶと、疲れが一気に押し寄せてきた。
そうだな、メイドたちは俺の服を洗濯しちゃってるし、返してくれるまで、ここで……ぐう。
……………………
………………
…………
……
「死んじゃってるの?」
「そんなワケねーだろ。つーかコイツ女装癖なんてあったのか?」
「こうやってみると、ラッシュさんってかわいく見えませんか?」
「ちょ!? アスティそれ本気で言ってるのか?」
「つーか全然起きないね。ルースと抜け駆けしたっていうのに」
「もう少し寝かせておきましょうよ、なんかここでいろいろ事件に巻き込まれたって話ですし」
「このまま……みんな目を覚まさないなんてこと、ないよね」
「トガリ、おめーは心配性なんだよ。このバカが一生寝てるワケねーだろーが」
「おっ母が昔から教えてくれたんだけど、こーゆー場合ってキスしたら目が覚めるって」
「……どこの物語だよそれ」
「はぁ、仕方ないな……」
「ってオイジール! お前こんな女装野郎にキスする気か!?」
すう……
「起きろ! この変態犬!!!」
「ぐわぁァァァァァァ!!!!!」
目が覚めた。
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