ひとつの願い
えーと……好きっていったいどーゆー意味?
おまえ男だろ……?
「あれっボクのこと男だと思ってた? ないないそれはない。第一ボクたち性別とかそーゆーの存在しないし」
「つまりは男であって女でもある……とか?」
「違うんだなぁ、そもそも分けること自体に意味がないのさ。我々侍者にはね」
ルースが不思議がって聞いてはみたものの、謎は謎のままだった。つーか俺にはレベル高すぎてもう何がなにやら。
「つまりさ、ラッシュ、キミという存在に同行したくなってきたのさ」
だったら最初からそう言え。
けどお前みたいなバケモノが俺たちの仲間になるとしてもだ、その姿じゃ人目引くどころじゃねえぞ。それにこいつはこのスーレイの土地神だろ。勝手に出てしまったらヤバいんじゃ?
「ああ、その辺に関しても大丈夫さ。別にボクが居なくってもここは滅びたりはしないし」
俺の胸の内を読んでいたズァンパトウは、それより……とまた話を続けた。
「同行するにあたって、ボクに新しい名前を付けてくれないかな? 同意する名前が決まったことで、今後はキミたちの仲間となれる。まあ契約に似た感じカナ?」
「ネネルのつけた名前じゃ不服なのか?」
「だーかーら最初に言ったじゃない。あのおてんば姫はネーミングセンス最低なんだ。もうね、発音するたびに舌噛んじゃいそう」
隣にいたルースが苦笑していた。そうだったな、こいつ噛みまくってたし。
しかし、新しい名前……ね。いきなりそんなこと言われても迷うし。
「ズパさん」
突然、チビがそんなこと言ってきた。あいつを指差しながら「ズパさん」と。
「あ、いいねその名前! 決まり! じゃあ今日からボクの名前はズパさんで行こう!」
「「えええええええ!?」」
ズァンパトウは腰をくねらせながらチビにビシッと親指を立てた。
って、いいのかそんな名前で、唐突にそんな変な名前をチビに付けさせていいのかオイ!?
「うん。シンプルだし言いやすいしね。それに御子が即決で付けてくれたんだ、ボクにとっては名誉さ!」
ああダメだ。だんだんこいつの……ズパさんの明朗なノリについていくのがキツくなってきた。
そんな俺たちの目の前で、ズパさんの足がフワリと宙に浮いた。
「さあ、これで今日からボクはキミたちの仲間だ。スーレイの縛を解かれて今はとっても最高な気分。さて……今度はラッシュ。キミがボクにお願いする番だよ」
よく見ると身体の色も変わっていた。さっきまではちょっと濁った感じの水晶みたいだったのに、今は透き通った海の青色のようだ。
「いちおう条件はある」とズパさんは解説した。
死んだ人を生き返らせるとか時間を戻す、歴史を改変する、未来を変える……みたいなものは無理。もちろん世界を平和にするとかもダメ。
「だったらどういう願いなら大丈夫なんだ?」
うーんとひとしきり考えたのち「片想いの女の子を振り向かせたり……みたいなのかな」だとさ。
やってることがもう占い師と全然変わらねーじゃねーか!
まあ、つまりは個人の小さいレベルってワケか。
…………
……
あ!! ひとつあった!
「ズパ、ならばお願いしたい」
「ズパさんって呼んでよ。じゃなきゃやだ」
「ズパ……さん。俺からの願い。決めたぞ」
「わかったよ、それで叶えてもらいたいことはなにかな?」
ポン、と俺はルースの両肩に手を置いて告げた。
「こいつの……ルースの身体を治してもらいたい」
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