小さな村の大きな戦い そして……
……なんだったんだあれは一体。
もうそれしか言えなかった。俺も、他のみんなも。
ルースが言うには、みんなの目を覚ます香を焚いたって話だが……うん。なんか今まで嗅いだことのない煙臭さがする。最初は火事でも起きたのかと焦ったんだが、だんだんと大広間のモグラたちがうろたえてるのを見て、なんか納得。
「ドゥガーリ……私たちはいったい何を?」
そんなことを長老のやつが言ってきた。どうやら全然記憶がなかったみたいだ。
トガリとルースがことの顛末をみんなに話しているあいだ、ついてけない俺はチビと二人で外の空気を吸いに出ていった。
そうそう、ルースが言うには、どうやら俺たちがここにたどり着く前に来た先遣隊が何かやらかしたって話だ。
「まず長老を催眠状態にして、その後アラハスのみんなを一箇所にまとめて、催眠効果のある香で全員同じ状態にしたってことさ」
誰がそんな手のかかることをしたんだ? 目的は? ってルースに尋ねてはみたものの、それはまた調べなおすよ……ってあいつ苦い顔していたな。
とにかく、トガリ絡みのトラブルはこれで解決できたみたいだ。あとは……そう。
「おとうたん、もうメシたべないの?」
足元で寝そべっているチビがそんなこと言ってきた。こいつもいっちょ前にメシなんて言葉使うようになったんだな。
「なんだ、また腹減ったのか?」
「うん、はらへった」
ちょっと言葉づかいが俺に似てきたな……直さないとマズいかな?
「さっきいっぱいメシ食ったばかりだろ?」
「うん。でもトガリのメシの方がだいすき」
そのことばに、ぷっと思わず俺は吹き出しちまった。
そうだよな……いくら贅を尽くしたモグラ連中の豪華料理で腹いっぱいになったとはいえ、やっぱり食べ慣れたあいつの毎日作るメシの方が断然うまい。
だけど、もしトガリの親が催眠にならずに、普通に勝負を挑んできたら、あいつは勝つことができたろうか……?
「こんなとこにいたのですか」
後ろから聞こえたその声に振り向くと、チビと同じくらいの背丈の……そう、いまいち見分けはつかないが、おそらくトガリの母ちゃんがそこに立っていた。
「ドゥガーリから聞きました。リオネング国でいろいろお世話になっているとかで」
「あ、いや……別にあいつはそんな」焦って俺もなんで答えていいか分からずしどろもどろに。
「右も左も分からない地で、ラッシュさんにたくさん街のこととか仕事のことを教えてもらえたんだって、あの子照れ臭そうに話してました……本当になんて感謝していいのか」
「そんな、俺は……」
「おとうたんね、いつもトガリの頭をごーんってたたいてるの」
「え……」
「でもね、トガリたたかれてもうれしそうなんだよ。いたいっていってるのに」
「ラッシュ……さん……」
俺の背中を、めちゃくちゃ冷たい汗がつたい落ちた。
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