帰還

さて……

ジールが持ってきた船にどうにかナウヴェルを乗せることができて(もう水面ギリギリだった)俺たち三人……いや、女性陣含めて、じゃない。例の理事長もいれたら七人。日が暮れかけたことにようやくみんなの避難している島へと行くことができた。


つーか、なんで理事長をわざわざ連れてきたんだ?

「決まってンじゃん。ここで島のみんなに頭下げさせるためよ」

理事長はというと、この前の怪しい目つきとは打って変わってすげえ意気消沈してる。

つまりは「そう、ウマいことハメられたってワケ」

なるほどな、俺たちを神様に担ぎあげて、んでもって無垢な島のみんなを騙して捕らえて……


なんか一日の間にいろいろあったな。火山が噴火して、ナウヴェルに会えて、んでもって仲間になって。


そうだ! それよかチビの方が!

「大丈夫だ、まだポカンと寝ぼけた感じが抜けてはいないがな」と、マティエ。

なんでもチビのやつ、港でずっと俺のいる島の方角を見続けていたんだと。でもってしばらくしたらドッカーン。ってわけ。


「お前の危機を予知していたのかもしれないな。なんであれ不思議な子供だ」

俺がこういうのもなんだが、このクソ真面目女、いい笑顔するようになったな……そう、今見せたのなんか特に。


「えっと、ラッシュさんですか?」そうそう忘れてた、なんかエッザール似の奴が紛れ込んでいるんだが。

そうだと答えると、やたらきゃっきゃと驚き始めた。

「ははハジメマシテ! あたしパチャカルーヤって名前なんだけど特別にパチャって呼んで大丈夫だから!」

いや大丈夫も何もお前のことをまず語れや。


「彼女、エッザールの妹よ。威勢もいいし剣の腕も立つ」

「ほう」

「でもってフィンの奥さんでもある」

「ほう」


……え、ジール今さらっとすごいこと言わなかったか?


「ああ、ちょっとワケがあってね。あいつとは一応結婚しちゃってるんだ。種族の変なしきたりにハメられちゃったっていうか……まあなんつーか、弟が一人できちゃったようなモンかな?」

悪ィ、こいつの言ってることが全然わかんねー。


「強いやつに惹かれる。つまりは惚れっぽい性格なんだ。面倒見てやれ」

マティエのやつもさらっとひどいこと言ってるし。

時々風向きを読みながら、だんだんと島が目前に迫ってきた。

タージアは、あの双子は大丈夫だろうか……なんてガラにもない不安が、ふと俺の胸をよぎっていった。


振り返ると、ナウヴェルが一人しんみりと、小さくなってゆく故郷の島を見続けていた。

そうか、この爺さん賑やかなのが苦手なんだな。けど……

俺はナウヴェルの隣に腰を下ろすと、一緒にあの島を眺めた。

「もっと俺たちに教えてくれねえか、爺さん」

「ディナレのことか」

小さな口でぽつり寂しくつぶやいた。つーか察しがいい。

「ああ。どんな人だったのかっていうの知りたいしな。俺に似ていたんだろ?」

「いや、お前とは全然似ていなかった」


ぶっ殺すぞジジイ。

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