第192話、その時
「では私もお聞かせ願えませんか。お二人がどういう関係なのか。勿論先程の会話からある程度は察しておりますが、はっきりとした話を聞いておきたいので」
ガライドの反応に少し困っていると、エシャルネさんが王女様にそう告げた。
なので私も王女様に視線を向け、メルさんは・・・動く気が無いらしい。
膝を突いて私の手を握ったまま王女様に顔を向けている。
「・・・そちらが本当の貴女なのですね、エシャルネ様。完全に欺かれました」
「少々違いますね。普段の私も間違い無く私です。語る言葉は本音です。リーディッドお姉様を敬愛し、グロリア様に感謝と尊敬を抱き、その想いから紡がれる言葉は全て本心ですから」
「そ、そう、ですか・・・」
「ええ。この国の貴族でお姉様程素晴らしい方は居りません。残念ながらこの国の貴族はそんな事も理解出来ない者達で嘆かわしい。魔獣領を下に見るなど、甚だ愚かな事だというのに」
「そ、そう、ですね」
『・・・これだから解らんのだ、この娘は』
雰囲気は静かだけれど、エシャルネさん凄い早口だった。
そのせいか王女様が少し気圧されている。
ただ私はもう慣れちゃったので、あんまり気にならない。
「んんっ・・・申し訳ありません。滾る想いが口から出ると止まらない時が有りまして」
「い、いえ、おかげで貴女が信用に足る、という事は重々理解出来ましたから・・・」
「それは何よりです。では殿下、お話を聞かせ願えますか?」
「ええ。と言っても、こちらは大した話はありませんよ。貴女も予想が付いている通りです」
「構いません。お聞かせください」
「では―――――」
そこからは王女様が私達に会いに来て、そして今までの事を語った。
途中、どれだけガンさんが素敵な男性か、と語る時間が長かった気がする。
リーディッドさんの事を語るエシャルネさんと完全に同じだ。
聞いている彼女は何故か、物凄く温かい目を王女様に向けていた。
その最中のガンさんは凄くソワソワしていて、視線が宙を彷徨っていた。
「という事で、グロリア様とご友人になるに至った、という事です」
「成程・・・では殿下、私達は良い友人になれそうですね」
「ええ、とても。末永くお付き合いしたいですね、エシャルネ様」
「「うふふ」」
二人はとても嬉しそうに笑いあう。本当に嬉しそうに見える。
間違い無く嬉しそうなのに、何故か少し怖い。本当に何故だろう。
ただそんな二人の間に。バッと飛び込む人が居た。
「これで皆友達だねー。ねー?」
のんびりとした様子で、二人の肩を組むキャスさんが。
彼女は何処かホッとする笑顔で、二人の雰囲気も柔らかくなった。
そっか。そうだね。これで皆友達だ。エシャルネさんも、王女様も。
じんわりとその事実を実感し、私も少し嬉しくなる。
何時かエシャルネさんも魔獣領に来て欲しいな。
皆に、友達に、あって欲しい。きっとすぐ仲良くなれる。
そう思っていると、パンっと軽く手を叩く音が響く。
音の主はリーディッドさんで、ニコニコしながら口を開いた。
「さて、ではお互いに信用出来ると理解した所で、そろそろ皆で行きましょうか」
「そろそろ? 皆様何処かにお出かけになる予定だったのですか?」
「いえ、私は聞いておりませんが・・・」
『む? 私も何も聞いていないぞ?』
エシャルネさんが首を傾げて問うも、王女様は首を横に振る。
ガライドも知らないみたいだ。
メルさんも私に目を向けるも、私も何も聞いてはいない。
ガンさんも同じ様に怪訝な様子で、キャスさんは何故かニッコニコしてる。
もしかしてキャスさんは知ってるのかな。
「謁見の間ですよ。そろそろエシャルネ様のお父様方が、貴族の前で良い顔をしている所でしょうから。私達も混ぜて貰いに来ましょう。私達の話なのですから当然ですよね?」
「・・・お姉様、まさか・・・いえ、解りました。参りましょう」
「はい、参りましょう、エシャルネ様」
エシャルネさんが一瞬驚いた表情を見せ、けれど決心をした様に頷き返す。
それに満足そうに頷いたリーディッドさんは、王女様へと目を向ける。
「殿下方はどうなされますか?」
「参らない、と言う訳には行かないでしょう。私も一緒に参りますわ」
「グロリア嬢が行くのであれば行こう」
『本当にブレんなこの男は』
どうやら二人も一緒に来てくれるらしい。メルさんは応えつつ私を持ち上げる。
何時もの所で抱えられ、そして扉が彼の手で開かれた。
ただし先に行くようにと、リーディッドさんを促して。
「では、参りましょうか。助かった気でいる愚か者に、最後の時を与えに」
「はい、お姉様。覚悟は、既に出来ております」
な、何だろう。皆何だか、ピリッとした様子になっている。
ガンさんまで同じ感じで、私だけ解ってない様な。
あ、でもガライドは・・・。
『成程。では、上手くやるとするか』
・・・うん、そうだよね。ガライドが解らない訳ないよね。
変な事しない様に、指示されるまでメルさんに掴まってじっとしてよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます