閑話、魔獣領を忌む者

「ふんっ・・・毒婦共が・・・」


 第三騎士団の鍛練場を見下ろし、楽し気に過ごす女共に吐き捨てるように呟く。

 国を乱す毒婦共。国の秩序を乱す魔獣領の者が、上手く王子達に取り入りおって。

 一体次は何をするつもりだ。この国の在り方を乱して何を企む。


 時によって国王陛下の言葉すら、一切従う様子を見せない魔獣領。

 ただ関わらずに好きにしているだけ等と言いながら、国の庇護下には在り続けている。

 ふざけるなよ。ならば勝手に独立すれば良いのだ。貴様等は貴様等で生きて行け。


 権利を行使する癖に、責務を課せばのらりくらりと逃げおって。

 古代魔道具使いを手にしたのであれば、それは国の為に献上するべきであろうが。

 そんな当たり前の事すら拒否しておきながら、陛下に責を問うなど甚だ不愉快だ。


「貴様らが早々に陛下に渡していれば起こらなかった事であろうに・・・!」


 思い出すだけで腹が立つ。何が情報を漏らし、古代魔道具使いと領地を危険に晒しただ。

 貴様等が身の丈に合わぬ力を手放さず、傲慢にも我が物にした報いだろうが。

 素直に手放していれば良かっただけの事。それを陛下の責任に擦り付けるなど言語道断。


 そう私が告げたとて、陛下は首を縦に振る事が無い。

 国を、王族を、国王陛下を舐めた一族を、陛下は断罪しようと成されない。

 法と秩序の都合の良い部分を使い、都合の悪い事には従わない奴らだというのに。


「絶対に、貴様等の良い様にはさせんぞ」


 魔獣領が古代魔道具使いを得た。それは奴らが正式に謁見をした事で公認となった。

 陛下があの小娘をお認めになった以上、下手に手を出せば責に問われる事になる。

 故に奴らが相変わらず関わらない事を選択している間に、小娘を奪いたかった。


 だが誰一人小娘を奪う事は出来ず、更に面倒な事態になりおった。

 何をどうやったのか知らんが、あのクソ生意気な古代魔道具使いの家と通じるなど。

 あの娘の事だ。あの家の事だ。自分の立場を脅かす存在を許すはずがない。

 故にぶつかるであろうと予測していたというのに、蓋を開けてみればどうだ。


 何故か魔獣領の後ろ盾になると正式な書簡を出し、魔獣領と協力関係を結びおった。

 最初は奴らが新しい古代魔道具を抱えたのかと思ったが、それならば話がおかしくなる。

 なぜなら魔獣領に何時までも居るからだ。もし企みがあるなら既に取り上げているはずだ。


 一体どんな利を示したのか知らんが、本当に手を組んだという事だ.

 面倒な家と気に食わない家が手を組み、いったい何を企む。国をどうするつもりだ。

 こうなればどう足掻いても衝突を避けられない様に、敵対する様に仕向けるしかない。


 そう思っての策も、阿呆が焦って雑な事をして、当然の様に潰された。

 処罰を逃れようと口利きを頼みに来たが、あのザマでは庇う事が出来ん。

 王子殿下方に目を付けられたのではな。どう足掻いても手遅れだろう。


 最早騎士団長であっても、その発言力は部下にすら通用するかどうか。

 特に第二はそういう連中の集まりだ。これ幸いに騎士団長が潰れるのを嗤うだろう。

 奴らに関わるとこれだ。こうやって魔獣領は国を乱して来る。国の毒だ。


 今もああやって、王子殿下を取り込もうとしている。国を、王族を、貴族を馬鹿にしながら。

 ふざけるなよ逆賊共が。絶対に潰してやるぞ。貴様らはこの国に要らない一族だ。

 

「・・・俺は貴様等を絶対に許さん。絶対に認めんぞ」


 息子と孫を殺した連中を、許すつもりは、無い。

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