五十四日目


五十四日目


 道というものは自分で切り開くものなんだよ!


 というわけで今日もまだ道は見つかっていないよ。

 方向を間違えてないといいんだけど、昨日はサイコメトリーで確認できてないんだ。


 ちょっと迂闊だったよ。


 私、テントなんて組み立てたことなかったんだ。

 夜になってからどうやって組み立てるんだろうっていじってたら、サイコメトリー誘発しちゃった。


 そもそもテントの組み立て方くらい出発前に確かめておくべきだったんだけど、サイコメトリーの検証とか色々やってたら記憶からすっぽ抜けてたんだ。


 まあ、おかげでちゃんとテントは組み立てられたし、姫ニャンもいっしょにもぐり込んできたもんだからあったかいやら恥ずかしいやらで、以前の野宿に比べたらずっと快適に眠れはしたんだけど。


 ただまあ、テントの中は快適だったんだけど周囲の様子がわからないのが少し不安だ。


 ちょっとした物音でもビクッとしちゃうし、夜中に何回も目が覚めてしまった。

 山の中とかなら火をたけば安心できたんだけど、人里に近づくとなると人間が近寄ってくる危険が出てくるよね。


 一応補足しておくと、私がこの世界で会ったことのある人間というのはあの冒険者たちだけだ。

 会うたびに殺されかけたし最後には強姦されかけて、結局私の方が殺しちゃったあれだけだ。


 というわけで私はこの世界の人間というものには強い警戒心を覚えている。


 ……あれ、これ私、本当に人間の町なんて行って大丈夫なのかな。


 出発したばかりなのに不安になってきたけれど、もうやるって決めたんだ。がんばろう。


 そんなわけで昨日に引き続き太郎丸を走らせているのだけれど、あたりの景色が変わってきた。


 荒野だったのが草原や森みたいな緑の方が多くなってきた。


 ゴツゴツした岩が転がる草原。なんだか私が初めてこの世界に来たときの景色に似ている気がする。


 さらに太郎丸を走らせると、今度は川を発見した。

 森みたいなところに入ってたから速度落としてたんだけど、太郎丸の速さに酔ってパカラッてたら落ちてたかもしれないね。気をつけないと。


 そういえば川沿いって草原の中でも妙に木がいっぱい生えてて、小さい森みたいになってるところが多いんんだよね。


 もしかして水場を探したければ森っぽい塊を探せばいいのかな?

 実際にどうなのかは検証が必要なところだけど、次から見かけたら確かめておこう。


 ともかく、川を見つけたので今日のご飯はここでいただくことにした。


 太郎丸もご飯がたくさんで喜んでるみたいだけど、馬のご飯ってずっと雑草でいいのかな?

 なんかこう、藁みたいなものを食べてるイメージがあったんだけど、お腹壊したりしないかな。

 それともこの世界の馬は雑草だけで生きていける生態なんだろうか?


 ちょっと不安になってきて様子を眺めてたんだけど、どうやら太郎丸は雑草ならなんでも食べてるわけじゃなさそうだった。


 私、植物のことはよく知らないけど、葉っぱが柔らかそうなものを選んで食べてるみたいだったかな。

 大きければいいってものでもないみたいで、食べがいがありそうな背の高い雑草をスルーしてることが多かった。


 好みの問題なら別にいいんだけど、やっぱり食べさせたらダメな草とかもあるのかな。


 太郎丸のご飯はあまり手渡しではあげないようにしよう。

 少なくとも私よりは本人の方が食べちゃダメなものとかわかってるだろうし。


 異世界生活五十四日目。鹿肉も美味しいけど、やっぱり魚が好き。

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