四十六日目
四十六日目
オークさんの生き残りはオークニキだった。
たくさん怪我をしたみたいで、また傷跡が増えている。
まだ塞がってない傷も多くて、私は手持ちの薬でできるだけの手当てをしてあげた。
ちなみに姫ニャンは一応いっしょにいるけれど、やはり臭いがダメみたい。
すっごく離れた場所から毛並みを逆立たせて警戒してる。
オークニキは集落から離れた岩場に案内してくれた。
岩と岩が重なり合って洞穴みたいな形になっている。
遠目に見てもここに誰かいるなんてわからない。私たちはたぶん、この傍も通ったと思うんだけど気付かなかったよ。
どうやらここは避難場所になっているみたいで、毛皮のベッドがあった。
他にも薬や食料なんかが保管されている。壁の傍には折れた鉈や壊れた鎧なんかが放り出されていた。
他にオークさんの姿はない。生き残ったのはオークニキひとりみたいだ。
辛かったよね。
さて、オークニキの状況は見ればわかるのだけれど、私たちの状況はどう伝えればいいのかな。
私は枝で地面に絵を描き描き身振り手振りで説明してみた。
冒険者の絵は兜でいいか。特徴的だし、たぶんオークニキにも伝わるだろう。
それを三人分描いて、オークさんたちと私を描いて、それらにバッテンを付けていって、生き残ったオークさんたちの分は○で囲って。
オークニキはしばらく難解な数式でも突き付けられたみたいな顔で唸っていたけれど、私たちが追いつかれたこと、冒険者三人が死んだということは伝わったんじゃないかと思う。
説明し終わると、励ますみたいに頭を撫でてくれた。
これでひとまず目的は果たせたことになるかな。
オークニキも傷が治ったら避難先に向かうだろうし。私はそれまでに何かできそうなことでも探そうか。
ただ、何をしたらいいのかな。
ああ、そうだ。あまりここに留まっていると新しい冒険者が来るかもしれないことも伝えないと。
これは絵を使っても説明が難しかったけれど、何度か描いているうちにオークニキにも伝わったみたいだ。
険しい表情をした。
……まあ、私の絵が下手すぎて険しくなっていた可能性も否めないけれど。
危機は伝わったような気がするけれど、オークニキはまだ長距離の移動は難しそうだった。怪我もさることながら、まだ体力が戻ってないように見える。
それでよく全員分のお墓なんて作ったもんだと思うけれど、たぶん逆なんだろうね。
オークさんたちの亡骸を埋葬しようと無理をしたから、傷が長引いてるんだ。
私にできることって何なんだろう。
冒険者も今すぐ来るわけじゃないと思うけれど、いつかは避難先にも押し寄せてくるんだと思う。
その度に、また前みたいに別の場所へと避難するしかないのかな。
それできっとまた何人もオークさんが命を落とすことになるんだ。
なんとかしたいけれど、何もできることが思いつかない。
私はニートだし、言葉もわからないし、チート能力もないし、生活能力もない。
冒険者に見つかったら何故か殺されそうになるし、戦う力もない。
うわ、並べてみたら悲しくなってきた。
考えてもわからないから、ご飯でも獲りに行こう。
姫ニャンもオークニキには近づこうとしないから、そろそろ恋しくなってきた。
異世界生活四十六日目。オークニキはお魚嫌いだったみたい。
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