三十九日目
三十九日目
観念して水浴びをすることにした。
昨日に引き続き絶賛迷子なのだけれど、毎日森の中を徘徊して泥だらけだし、血とかも少し残ってる。
制服も破られたまま紐で結んだだけだし、もう限界だ。
というわけで、川を探して水浴びを敢行した。
石けんも少しだけ持ってきたから、体も制服もパンツに至るまで全部洗ってやったぜ。
綺麗になってから足の傷を確認してみたけれど、ちゃんと塞がってるみたいだった。
まあ、傷跡は残りそう。
私、これでも女の子なんだけどね。まあ命あってのものだし、受け入れるしかない。
姫ニャンも楽しそうに飛び込んでくるもんだから、水の掛け合いっことかして遊んだりもした。
姫ニャン、オークさんたちと違ってほぼほぼ人間型だからちょっと恥ずかしかったけどね。違うの耳としっぽくらいだし。
ただ、この世界に来たころより少しは温かくなったとはいえ、まだ春かそこらの陽気だ。
水も冷たいし、濡れたまますっぽんぽんというのは果てしなく寒かった。
ガタガタ震えていたら、見かねたように姫ニャンが引っ付いてきた。
姫ニャン、あったかいな。
なんかペロペロ舐められてるけど、これって親愛の証とかなのかな。
捕食の前戯とか所有物へのにおい付けとかじゃないといいな。
ところで野性的な姫ニャンだけれど、舌の感触はつるつるというか、人間と同じみたいだ。
猫の舌ってもっとざらざらしてるイメージなんだけど……ごめん無理。これ以上は私の語彙力じゃ表現できない。
どうしよう。どんどん道を踏み外していってる気がする。……今さらか。
まあ、とにかく寒かったけれど、ここ最近の汚れとか全部落とせてさっぱりしたよ。
悪い方向に考えがちだった頭もすっきりした気がする。
あと、すっぽんぽんでたき火に当たるのだけは、やってはいけないことなんだと思い知ったよ。
枝に水分が残ってるせいかな。
細っこい枝でも、結構爆ぜるんだ。それに火の粉も飛んでくる。
つまり、体中どこに当たっても超痛いんだ。
それでたき火から離れてプルプル震えていたというわけさ。
まあ近づくのは危険だとわかったけれど、制服とかを乾かすにはとても役に立ってくれたよ。
この調子なら昼には乾きそうだし、移動もできそうだ。
それにご飯のお魚を多めに焼いておくこともできた。
魚は姫ニャンも好物みたいだ。最初に魚をくれたのは姫ニャンたったものね。
姫ニャンは生でかぶりついたりするけど、焼いた魚も普通に食べていたよ。
熱いのは苦手みたいで、いつも冷めてから食べてるけど。
あとは塩とかあるといいな。
集落ではオークさんたちが塩を持っていたけど、そういえば塩ってどうやって手に入れていたんだろう?
冒険者の落とし物じゃあ毎日の消費を賄えないだろうし、自分たちで手に入れていたように思う。
塩って海から採れるイメージだけれど、近くに海でもあるのかな?
いやでも岩塩とかもあったよね。岩塩って森とかで取れるのかな?
食が安定してくると今度は調味料が欲しくなるものだね。
さまよいがてら、岩塩とかも探してみようかな。
さて、服も乾いたようだしお腹も膨れた。今日もオークさんの集落を目指して迷っていこう。
異世界生活三十九日目。今日も森を抜けられず。
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