三十一日目
三十一日目
オークさんたちを見つけた。
みんな死んでいた。
襲撃を受けてから今日で五日。もっと早く戻ることができたら、誰か助けたりできたのかな。
どうしようもなく無力で、私はしばらく泣いてた。
どれくらい泣いてたのかな。
日が傾き始めたころ、私はオークさんたちの遺体の数が少ないことに気付いた。
いっしょにきたオークさんたちは二十人以上いたはずだ。
でもここには十人分くらいしかない。
子供オークくんは見当たらない。
オークママの遺体もひとつしかない。亡くなってたのは洗濯を手伝うたびにゴリゴリ頭を撫でてくれたオークママだけど、他にもうふたりいるはずだ。
ここにいないみんなは、逃げることができたんだろうか?
足跡は……めちゃくちゃに入り乱れていてわからない。
でも、女子供でも見境なく襲う冒険者が逃がしてくれるようなことなんてあるんだろうか。
オークさんたちの遺体を確かめていて、理由がわかった。
冒険者のひとりが、木の枝に突き刺さって死んでいた。
他に怪我は見当たらなかったから、たぶん不意打ちでやられたんじゃないかと思う。
もう少し探してみると、ふたり目の冒険者の死体を見つけた。
オークさんのひとりに押しつぶされたみたいで、下敷きになって死んでいた。
押しつぶしていたのは、最初にやられたはずの怪我人オークさんだった。
この人は、あのあと立ち上がって戦ったんだ。
そしてみんなを守ったんだ。
ありがとう。
あなたが世界一かっこいいオークさんだったことを、私は絶対に忘れない。
冒険者は三人いたけれど、あとひとりは私と道連れになって落ちたはずだ。
あとひとりがどうなったかはわからないけれど、すぐにここに戻るなんてことはできなかったんじゃないかな。
ということは、ここにいないオークさんたちは生きているはずだ!
追いかけよう。
ここに置き去りになっちゃった荷物も、少しなら持っていけると思う。
あまり重たいものは持てないけれど、食料とかは必要だし。
荷物を探してみたら薬らしきものも見つけることができた。
こういうのは軟膏って言うんだっけ。塗り薬だ。避難中も怪我人オークさんの手当てに使っているのを見た覚えがある。
それと包帯に使えそうな布もあったから、足の怪我も改めて手当てできた。
表面はぱっくりいってるけれど、奥の方は塞がり始めてるような気がする。消毒もないのに膿まないで済んだのは奇跡だろう。
これなら、まだ歩ける。
ただ、私じゃオークさんたちの遺体を動かしたり埋めたりはしてあげられなかった。
ごめんね。布をかぶせてあげるくらいしかできない。
仏教式の黙祷じゃ効果ないかもしれないけれど、みんなに手を合わせてから私はまたオークさんたちを追いかけることにした。
異世界生活三十一日目。どうかみんな無事でありますように。
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