第101話 2歳半編⑫
人の動きを見ていると、ほとんどの憲兵さんは、このダンシュタから出ない。ダンシュタから出ちゃうと、僕のフォロー外になるから、どこに行ったかは分からないけど、そこはそれ、その行動自体が情報になるんだ。だって、憲兵さんはダンシュタで雇われてることになってるんだから、お仕事で外に行くのは相当レア。もちろん、僕の産まれた場所みたいに、小さな集落や村がダンシュタの支配圏にあって、そこまではここの憲兵さんの行動範囲だから、そういう所に行く場合はあるけど、ほとんどが村になんかあったときにその村人が助けを求めてダンシュタまでくるか、ちょっと大きな村だったら、そこに駐在している憲兵さんがいるので、この町から出る、あの詰め所の憲兵さんは本当にレア、なんだ。
僕らがしばらく、この動きをフォローしていると、2つの特殊な、というか、僕らが注目すべき動きを捕らえることが出来た。
1つは、ヨシュ兄が怪しいと言っていたVIP部屋。
決まった人達が数名、この部屋に入っていくんだ。
VIP部屋、といってもその用途は会議室。
会議なのに一人とかせいぜい二人で入ってしばらくそこにいるのはおかしいよね。しかも、あの部屋は鍵がかけられてるのに。
はじめ、セイ兄なんかは、さぼりにきてる奴らじゃない?なんて言ってたけど、さすがによく見ているヨシュ兄。
「まず入ると、この辺りで止まります。そしてしばらくして、奥に行く。まだ中に入ってみないと分かりませんが、おそらく、ここに壁か何かがあって、この止まる辺りに隠し扉があるんじゃないでしょうか。」
みんなで様子を見ていたときに、そう言いながら、奥から四分の一ぐらいの所に線を引いたんだ。そして、その線上、部屋の奥まった辺りに、バッテンをつけた。
そうすると、確かに、この部屋に一人で入ってきて、バッテンの所で止まって奥に行く、という人が何人かいたんだ。
しかも、だよ。ここに出入りしている人の多くが、ダンシュタ外で活動している。
てことは、当然暗部基地候補?
そんなわけで、ここは、要チェック。
ヨシュ兄とセイ兄で、潜入することとなった。
もう一つ怪しい場所。
それは、ザンギ子爵邸の庭だった。
この庭は、憲兵の詰め所と接している、というか、繋がっている。
この庭にチェックしていたVIP部屋へ入る人のうち二人が、頻繁に行っている。ほぼ、屋敷に隣接した場所。
また、この二人はザンギ子爵邸にも入っている。
そして、僕らがチェックし始めて、ザンギ邸に初めて入っていたその2人なんだけど、保存していたブレスレット1つを持参したようだった。
ゴーダンが、ブレスレットの使われ方を見るために、直接見張っていた時にちゃんと確認したんだけど、見知らぬ商人から大量にもらったブレスレット、一応性能チェックはしていたみたい。
パッと見で、見る人が見れば、防御力アップの加護がついてるのは簡単に分かるし、当然、憲兵さんたちもすぐ分かったみたい。そんな便利そうな物、試したくなるよね。で、訓練施設でしっかりチェックしてたみたい。様子を見てたゴーダン。
「ありゃ"簡単な"防御力アップなんてもんじゃないぞ。おまえらやり過ぎだ!」
と、睨まれたけど、まあ、それだけの加護は仕込んであるんだ。
ゴーダンはあきれてたし、ちょっと怒ってたけど、あのぐらいの性能がなきゃ、みんな使いたいって思ってくれないと思うんだ。実際ね、ほぼ全員が使ってくれてるみたいでしょ?
で、そこまで期待してたわけじゃないけど、さっきのお話。ザンギ邸に余ってたブレスレットを持参した人がいた。
そして、それをしっかり装着した人物。
そう、ザンギ子爵その人が、ブレスレットを手に入れて、自分の防御力アップをはかったみたい。実際つけているのを、ゴーダンとセイ兄が確認している。二人は、僕が買われた時にいたから、子爵を直接見たことあるし、間違いないよ。
そこで分かったこと。
さっきの二人とザンギ子爵は、ザンギ子爵がダンシュタを訪れる度に、その『庭』で密会しているようです。
でも、なんで庭?
セイ兄が見張ってみつけました。
庭、じゃなかったよ!
庭の地下だった!
セイ兄が見張ってる中、小さな小屋状のもの?前世で言う百葉箱みたいな感じ?の扉を開けて何かすると、ぽっかり口を開けた地面になって、人がその中に消えたんだって!
はじめの時、セイ兄がこっそりザンギ邸に忍び込んだけど、ほとんど物置状態、だった。大切そうな物なんて、ないな、なんて、言ってたんだけど・・・
ザンギ子爵は、出入り口のない屋敷側から庭のそのポイントに近づいていたんだ。そのちょっと前には、庭の方からそのポイントに近づく二人。
そして、しばらくそこに滞在して、離れていく。
そんな状況を何度か僕らは目撃したんだ。
そこで、こっちはミラ姉が担当することになった。
セイ兄が見張ってみつけた出入り口。
一応、百葉箱のような建物が、出入り口に関与していそうなことは間違いないよね。
で、ミラ姉がその百葉箱を調べて、出入り口を発見、できれば、地下らしいその場所の捜索。
ゴーダンとアンナだけど、二人は、おそらく暗部のトップではないか、と目をつけたそのザンギ子爵に会っている二人を特定することにした。
セイ兄が目撃した、地下に消える二人がそうだろうけど、その時は彼らを見てた訳じゃなくて、ザンギ邸をチェックしてただけだから、遠目だったし、誰がその二人かまでは、判明していないんだ。
僕にしても、あくまでブレスレットの動きをチェックしてるだけで、顔とか全然分からないからね。うん、このトップの特定は大事だね。
余裕があれば、VIPルームに出入りする全員を特定する、とゴーダンは息巻いてたけど、とりあえずはザンギ子爵の密会相手が分かればいい、と思うんだ。
こうして、みんな、それぞれの調査対象に、より深く近づくことになった。
僕?
僕は、宿からみんなのフォローだよ。ブレスレットが近づくと知らせる役割。
このぐらいの距離だと、親しいみんなの魔力は分かるし、念話も届けることが出来るからね。
さあ、情報収集は、次の段階に突入だ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます