第99話 2歳半編⑩
ダンシュタで、僕らが泊まっている宿に戻ったら、報告会&計画会です。
僕が憲兵さんの詰め所にいる間に、みんな遊んでたわけじゃないよ。さすがに赤ちゃんの僕を働かせて、みんな遊びほうけてる、なんてことはやってない、ということです。
ヨシュ兄は僕とセットで、地図作成。ミラ姉はその補佐をしながら、ダンシュタの市民と触れあい。ほら、僕が勝手に飛び出しちゃったことになっているお店。あれは実在します。本当に僕はそこから迷子になった体で、出てきたからね。あ、猫は嘘です。その後、ヨシュ兄が気づき、僕を探しに出る、という小芝居をやってたはず。僕は広場に行き、その様子をセイ兄が遠くから見守っていたんだ。僕が詰め所に入って、セイ兄とヨシュ兄はチェンジ。そのままセイ兄は隣のザンギ子爵邸に忍び込んでました。
ミラ姉は、しばらく高級店であるその服やさんで、僕を心配しつつの世間話。治安とかを中心に、リアルな市井の声を集めてました。
この町一番の商会はナッタジ。だけど、服とかは扱ってないから(古着はあるけどね)、こういうお店だと、忖度なしのナッタジ評が手に入るんだって。
一方、ゴーダンは、庶民の評判調査。
ナッタジの評判がだだ下がり、というネタを拾ってきたよ。
アンナは、村の方まで足を伸ばしたみたい。
ナッタジの本邸とか、畑、村。
人の様子を中心に、知り合いとかを見つけて、現況確認。
アンナがいなくなって、この1年でさらに家畜奴隷達の状況は悪化してるみたい。ミルクを煮沸して飲む、というのは続けてるみたいで、死んだ人は少ない、らしいけど、家畜奴隷たちは、なんとか救い出したい、と、言ってる。僕と並んで寝ていた子達や少し大きな子達も、僕にとっては家族みたいなもの。僕だって助けたい、そう思うんだ。
さてさて、ここで現況確認です。
まずナッタジ。
ナッタジは食料品が中心。あとは雑貨かな。庶民の日用品がメインのなんでもやさん。・・・なんだけど、ひいじいさんが作り出したチーズやバターは王都にも届けられていた。うん王族御用達。これがナッタジの大きくなった理由かな?もともとは領主のワーレン伯爵が気に入って、領都に出店させられ、それが王都に持ち込まれた、ってことらしい。だけど、王様も領主様も、個人的にひいじいさんと親交があったようだし、本当のところはわかんないけどね。まぁ、表向きは、ナッタジが大きくなったのは、王族御用達の乳製品が理由なんだって。
ただし。
最近はナッタジの乳製品の質が、相当悪くなっている、らしい。以前は家畜奴隷達にアンナが指導して作っていたミルクの加工品。アンナがいなくなると、いろんな所が雑になって、粗悪品が増えたみたい。温度、撹拌回数、保存、どれも真面目にとりくまないと、いい物はできないからね。
またナッタジの商品としては、木や布でカゴを編んだ物がある。これは、村の人たちが主に内職的な形でやってたんだけど、その質・量共に低下。原因は、税の高騰。もともと貧しい村なのに、納めなくちゃならない税が増加してるんだって。これはナッタジの商い縮小による税の減少と、ザンギ子爵がもっと実入りのいい領地をもらえるように貴族に働きかける原資を得るため、領民に負担が来てるんだって。
ナッタジは、利益が減った分を商品の価格に乗せてるらしい。簡単に言えば値上げしたんだ。質が低下し価格が上がる。買う人は減る。さらに値上げ。てな感じで悪循環。ナッタジの評判はダダ下がり。
そんなのだったら、ナッタジはすぐにだめになって、ダンシュタ一の商会じゃなくなるだろう?て思うでしょ。それがね、食べ物を扱うお店、レストランとか露天商まで、乳製品はナッタジで購入しなくちゃならない。あとは穀物も、だね。ナッタジで扱うそれらのものを使えば、購入税はいらないけど、他の商会で買ったら税金が3割も取られる。ザンギ子爵の推進する「地産地消」プロジェクトの一環、という理由だけど、ダンシュタ産と認められるのはナッタジの作るミルクや穀物のみだから、他で買えば高くなって商売が成り行かないんだ。
とまぁ、そんな風な情報を、みなさん、ゲットしてきました。
ナッタジとザンギ子爵がズブズブの関係、なのは、公然の秘密、というより、ここまで露骨だと、もはや秘密でも何でもないよね。
そもそもこうなったのは、あの大襲撃事件(とダンシュタでは呼ばれているらしい)の後のことのようで、少し考えることの出来る人は、ナッタジ家の面々は番頭とザンギ子爵が共謀して殺された、と考えてるみたいだね。限りなく黒に近いグレー。でもこの二者に逆らっちゃ、この町では生きていけないから、黙っておく、それが、この町の現実のようです。
あと、セイ兄だけど、ほぼ空振りだって。
びっくりするぐらい、ザンギ子爵邸って何もない、らしい。
先代以前の倉庫、という名のがらくたばっかりだ、と、言ってました。まぁ、丁寧にザンギ邸を調査する必要がない、という確認が出来ただけでも、よしとしよう。
さて、肝心の証拠だね。
あるとすれば(みんなはある、て確信してるみたい)、憲兵の詰め所。
ヨシュ兄いわく、2カ所を捜索すべきなんだって。
まずは、4階の右半分。
ヨシュ兄は、すごく大事なのはそこにはないと思うけど、財務資料なら見つかるかも、と言ってた。暗部にしても予算はいるから、お金の流れを見れば、いろいろ分かる、んだって。
もう一つ。3階の奥が怪しいらしい。
3階の奥のVIPルームなんだけど、その奥にもう一つ部屋があるのでは、というのがヨシュ兄の推理。外から見える窓の位置から考えて図面を作ると、どうも不自然な大きさなんだって。小さな部屋がVIP部屋の奥にあると見るのが自然、だそう。
ということで、調べるのはこの二つ。
僕が見つけた、屋上の出入り口から侵入。4階と3階で、ザンギ子爵が暗部を使って襲撃事件を起こした証拠を探す。
僕らが探しているのは、ナッタジの領都邸襲撃事件と、ミサリタノボア子爵邸襲撃事件。でも、みんなはもっと色々襲撃している可能性がある、と言ってる。
意外と証拠は簡単に見つかるもしれないね、と、少々楽観的に計画を練ったんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます