第97話 2歳半編⑧

 3階。大小様々な会議室っぽい。

 後は、資料室?

 ちょっとした図書館っぽい。

 「あれ、僕、どうしたの?」

 たまたま資料室にいたお姉さんの憲兵さんに声をかけられた。

 「しーっ!見つかっちゃうよ!」

 僕は、わざと大ぶりで子供っぽく、言ってみた。んー。なんか、自分が前世で見た、高校生が小学生になっちゃった探偵っぽいな、なんて、段々と面白くなってきたよ。

 「何?かくれんぼでもしてるのかな?」

 「うん。隠れてていい?」

 「誰とかくれんぼしてるの?」

 「ララのお姉しゃんとジップのお兄しゃん。」

 僕は、言いながら、隠れているところを探す風に装いつつ、資料室に置かれた本の背表紙に目を走らせる。

 うーん。冒険者ギルドにある資料とかとラインナップは変わらないね。

 こんな誰でも入れるところに捜査資料的なのはないだろうし・・・


 「ここは、ご本がいっぱいで隠れるところはないわよ。」

 「でも、上は全部鍵がかかってたんだもん。」

 「上は倉庫だからね。」

 「倉庫?」

 「押収、て分からないか。悪い人から取り上げた物とか、いろいろ私たち憲兵が集めて、引き取り手がない物なんかをしまってあるの。後は、古い大切な書類とかね。」

 「古い書類って?」

 「あぁ、難しいか。お約束をした紙とか、こんな事件でしたよ、と、書いた活動の報告とか。古い帳簿、あー、と、お金を払った記録、とかかな、そんな大切だけど、すぐに使わない物が仕舞ってあるのよ。」

 「でもいっぱいお部屋があったよ。」

 「領主様ごとに一部屋だからね。」

 「領主様っていっぱいいるんだ。」

 「あぁ、代替わり、って分からないか。領主様もお隠れになったり、いろいろと変わるのよ。現領主様は、6代目、かな。階段登って左の奥から、初代、2代様・・・と、5つまでは以前の領主様のときの資料なの。一応10代までいったら、別に倉庫を作るって計画あるんで、部屋は全部で10個だったでしょ?」

 僕は、あえて首を傾げた。

 10とかの数って、何歳で分かるか知らないけど、町で買い物をしたときに、片手を超えた数はいっぱい、的な感じで、うまく扱えてない大人も見たことがあるんだよね。

 「ハハハ、難しいかな。」

 「難しくないもん。」

 「僕、何歳?」

 うーん。これは間違えるべきやつだ。

 「アレク君、2ちゃい!」

 言いながら、敢えて4を出す。

 フフフ、と笑いながら、2本の指を優しく折ってくれる憲兵さん。

 「2歳は、こう、ね。」

 「うん。2ちゃい!」

 「はい。正解。」

 「ねぇ、おねえしゃん。上の階って、余りのお部屋も鍵がかかってるの?」

 「ああ。余りはないのよ。残った部屋には、今の領主様になってからの資料が、部署ごとに置いてあるからね。」

 てことは、現領主関係の資料は、右半分の部屋、か。

 もしくは、各部署用のもうちょっとセキュリティを考えた所、とか・・・・


 僕は、とりあえず、候補として頭に入れつつ、資料室を出たんだ。


 会議室は、1部屋は使ってて、僕が入ったら一斉に見られたけど、また、かくれんぼだという言い訳で、何事もなくスルー。

 一番右奥の部屋だけは、鍵がかかっていたけど、どうやらVIPルームみたい。エライ人専用の会議室、みたいなもんだね。


 3階はこんなところ。

 さて、2階へ、行こうかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る