殺人餓鬼教室 - リトルマーダークラスルーム -

谷戸灯夜様作

https://ncode.syosetu.com/n1675hr/

(作品URL)

【あらすじ引用】

―――「あなたには選択肢があります。今ここで殺されるか、あの子たちの『先生』になるか」


 新学期直前。

 イータ国の名門・ハーフスター高校が教育の機会に恵まれなかった孤児を対象とした新クラスを設立するということで、新入生対象の実力テストが行われた。

 その試験監督を無茶ぶりされた高校教師の主人公。

 その夜、教室に一人残って採点をしている彼の首元に突然ナイフが突きつけられる。主人公は、その瞬間一つの噂話を思い出した。


 この国には『リトルマーダー』と呼ばれる暗殺・諜報を専門とした少年少女が存在する。

 彼らは幼い頃から訓練を受け、上流階級の命で任務をこなす。

 もちろん殺しもいとわない。そして、しばしば彼らは身体能力や知能に優れた、身寄りのない孤児から選出されると言われている。

 その日、テストを受けに来た子供たちは皆、[Raise Sir Flag]という暗殺・諜報組織のリトルマーダーだった。


 彼らの世話をする監督者の一人が発起人となり作られた『リトルマーダークラスルーム』。

 主人公に与えられた選択肢は、ここで殺されるか、彼らの『先生』になるか。

 究極の選択を迫られた主人公は自分の命と引き換えに名前を変え、住処を変え、あらたに『リン・パレット』として、19人の殺し屋と第二の教師人生を始めることとなる。


【物語は】

 一般人であり、裕福とは言えない教師の主人公が新学期直前に、ある高校の新入生対象の実力テストの監督を任されることにより始まっていく。

 本来なら別の人物が監督をするはずだったが、都合がつかず主人公にお鉢が回って生きたのである。

 教育の機会に恵まれなかった孤児を対象とした新クラスを設立するという名目ではあったが、その試験の対象は普通の子供たちではなく、『リトルマーダー』と呼ばれる暗殺・諜報を専門とした少年少女であった。

 その夜主人公は、一人残って採点をしていたところ命を狙われ究極の選択を求められる。彼が選ばれたのは、偶然かそれとも必然だったのだろうか?


【物語の魅力】

 初めのうちは、主人公が何故命を狙われたのか?

 そして彼が何故、この暗殺・諜報を専門とした孤児たちの教師に選ばれたのかとても謎であった。それほどまでに彼は”普通”だったからだ。

 特に目立った能力を持っているわけではなく、能力に長けた彼らに勉強を教えるという意味では、役不足なのではないかと感じたからである。

 しかし物語を読み進めているうちに、彼が”適役”であることが分かってくる。


 あなたにとって教師とはどんな人物であり、理想とどれくらい一致するだろうか?

 人の好さは、能力ではないということを改めて感じさせる、考えさせられる物語である。

 そして何故彼だったのか? それは物語の中で主人公がオーブという人物から、彼の願いや想いを明かされることで見えてくる。


【主人公の魅力】

 彼の魅力というのは、正義や正しさを押し付けないことにあると思う。

 そのことにより、他者を尊重しありのままを受け止めることが出来る。

 彼は教師らしい教師であり、理想的な教師だと思った。

 これは簡単そうで、難しいことなのだ。


 倫理道徳に基づき、人を殺してはいけないということは簡単だ。

 だがそれを望まずして行い、生きる彼らにとって否定されることは、存在そのものを否定されることに等しい。

 孤児として、生きることそのものに不安しかなかった彼らに、酷なことを強いる大人がいたとしても、食べることができ、命を繋ぐことが出来る生活そのものが救いだったならば? 

 ダメだというだけのことが、どれだけ愚かな行為なのか分かるだろう。

 否定するだけではだめなのだ。そうせざるを得ない環境を作っているのは、同じ人間なのだから。本当の救いとは、自分で未来を選ぶことのできる環境を作ることなのではないだろうか?


 主人公は彼らに、”自分で未来を選んでも良いのだ”と思わせる力を持っていると思う。彼らの生き方を否定することなく、ありのままを受け止め、無理に変えようとはしない。自分の考えを押し付けることもなく、彼らに”自ら選び取る”ということを教えているに過ぎない。彼らに必要なのは自主性なのかもしれない。


【物語の見どころ】

 この物語を読み始めた時、恐らくいくつかの疑問を感じるだろう。

 例えば主人公は何故命を狙われたのか? など。

 その疑問は読み進めていくうちに明かされる。そして、人が人を殺す理由は些細なことがきっかけなのだということにも気づかされるのだ。

 人は死んでしまったら終わり。だから簡単に殺せないものだと感じているのは、日本が戦争をしない国であり、武器を所持しないからである。

 自分たちの知らないところで、日々人は”そんな理由で?”という理不尽な理由で殺されているのだ。自分たちが平和な国にいることについても深く考えさせられる。


 疑問に対しての謎は、自然に物語の中で明かされ、その度に考えさせられる。

 あなたならこの物語を読んで、どんなことを思案するだろうか?

 あなたもお手に取られてみてくださいね。

 この物語の結末をその目でぜひ、確かめてみてください。

 お奨めです。

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