『忌み子』と言われ故郷を捨てた紅髪の女剣士アズリアの魔術文字(ルーン)探索記

灰様作


【あらすじ引用】

これは、タフで情に脆く姐御肌。食べる事が大好きな一介の女戦士が世界を旅する物語。


 寒さ厳しいラグシア大陸北部に位置するドライゼル帝国には珍しい日に焼けたような褐色肌に、ルーンと呼ばれる失われた魔術文字を右眼に宿して産まれた事から「忌み子」として扱われ、16歳の時に故郷である街や国から逃げるように出奔した────流浪の女戦士アズリア。


 勇者という宿命を背負ったわけでもなく。

 世界の危機を救えと神託を受けたわけでもない。


 ただ、失われた魔術文字を使うことが出来る代償として通常魔法が使えないという欠落を背負ったアズリアが、あても無く世界に散らばる魔術文字を探索し継承する一人旅の物語。

 世界中を旅する道中、様々な人物との出会いや色々な出来事を重ねる内に心身ともに成長し、やがて旅の最終的な目的を見つけていくだろう……多分。


【物語は】

ある大陸の中央に位置する大陸最大の国の一角で、主人公が空腹を訴えているところから始まる。武装をしている国であるにも関わらず、どうやらこの辺は隣国との関係が穏やからしい。


主人公が何を目的に、王都に向かっているのか定かではないが、辿り着く前に彼女は限界を迎えた。そこへたまたま通りかかったのが、ある商人の馬車である。彼女はこの商人の良心によって助けられる。この時、彼女を助けてくれた人々の言動により、主人公が尋常ではない重さの武器を持ち歩いていることが、発覚するのだ。何故主人公は屈強な男が二人がかりでやっと持ち運べるような重さの武器を、軽々と扱えるのだろうか?


【世界観・舞台の魅力】

この物語の舞台は、”失われた魔術文字”が存在する世界。

主人公は”日に焼けたような褐色肌に、ルーンと呼ばれる失われた魔術文字を右眼に宿して産まれた”(あらすじより)その為、忌み子として扱われていた。


自分を助けてくれた商人の宅で主人公が夢に見たのは、遠い日の辛い記憶。うなされながら彼女は、目を覚ますのであった。

この夢の中で、忌み子という存在が、人からどんな目で見られるのか分かって来る。

そして助けてくれた商人と主人公の会話の中では、彼女が訳ありの一人旅だという事を知ることも出来る。

しかし彼女は7日もまともな食をしていなかったようで、彼の食事と言う言葉に心が奪われ、無心で食事をすることになる。ここで興味深いのは、魔物の肉を食べることが可能な世界であるという事だ。


その後主人公は、恩人より依頼を受けることになる。それというのも彼女は、お金を所持していないからである。

この物語は、彼女の心情や独り言、会話などによって世界観がわかって来るため、とても分かりやすく読みやすい。主人公の持っていた武器の出所を通して、彼女が何処から来たのか、その武器がどのようなものなのかなどもわかって来る。

そして、これから倒しに行く魔物の特性が、とても興味深い。細部まで設定がしっかりしており、想像しやすい物語である。設定の補足などもあり、親切。


【主人公と物語の魅力】

この物語は一気に世界観が説明されていくわけではない。徐々に明かされていく為、とても分かりやすい上に、なるほどとなる部分も多い。説明が必要になると明かされるので、好奇心を刺激されるのだ。

例えば、主人公の旅の理由は依頼で魔物のと戦うさなかに。その魔術文字の能力の解説と共に明かされていく。繋がりがあるから理解しやすい。構成や展開がとても巧いと感じる。


彼女は身体の一部に宿った魔術文字の力により、尋常ではない身体能力を発揮することが出来る。この物語では力を使うことにより、代償が産まれている。そのバランスがとても面白い。どんな代償があるのかは、本編にて。


そして旅の目的が明確な為、物語に厚みを出していると言える。

主人公は忌み子と差別されていたため、故郷では協力者がいなかった。自分の力の分析も独学。彼女が自分の運命を受け入れ、それをプラスにしようとする努力家であることが分かる。例えその発端が差別などにより、故郷に嫌気が差したからであっても。


【物語の見どころ】

この物語は舞台設定、世界観がしっかりしており、どんな世界で主人公が暮らしているのかが分かりやすい。そして彼女の旅の目的や、そこで暮らす人達のことも想像しやすい。設定が細かいのだが、流れが巧いため読みやすく、すんなり入って来るところが魅力である。

その中で設定が充分活かされているところが、物語の見どころの一つなのではないだろうか。


オリジナル設定である”魔術文字”をたまたま身体の一部に宿してしまった為に、普通の暮らしが出来ない主人公。他の人と同様に扱ってもらえない。幼少の頃にはとても辛く寂しい思いもしただろう。

そんな彼女が16歳になり、”あても無く世界に散らばる魔術文字を探索し継承する一人旅の物語”だ(あらすじより引用)。

旅の中で彼女は恐らく沢山の人と関わり、信頼関係を築いてきたに違いない。それが短期間の関わり合いだったとしても。

7年も旅を続けながら、戦い方も独学。そう、彼女は既に7年も旅をしているのだ。つまり7年目にして、彼女にターニングポイントが訪れたのではないだろうかと想像する。


あなたもお手に取られてみませんか?

旅に出るきっかけは”忌み子”として扱われ、故郷がイヤになったからかも知れない。しかし逞しく生き、旅をする彼女には強い生命力を感じ、これからどんなことに遭遇するのだろうかという、期待感とワクワク感があります。

是非、彼女の行く末をその目で確かめてみてくださいね。お奨めです。

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