第53話 路面電車での激闘

 ある日、ポートフロンティア学園の帰り道だった琴音ことねは、横中市街を走る路面ろめん電車でんしゃに乗る。

「ここが、ポートフロンティア学園前の電停でんていね…」

すると、新横中駅へと向かう路面電車が到着した。

「この電車は、新横中駅しんよこなかえき経由けいゆ岩瀬いわせふ頭行きでございます」

「来たわ」

琴音は、この路面電車に乗る。ちなみに、つぼみとらんは徒歩で、沙奈さなとアリスは横中をめぐるバスでポートフロンティア学園へと通っている。

 「次は、横中市役所前でございます」

琴音を乗せた路面電車は、ダイヤどおりに運行している。しかし、

「乗車中は席をお立ちにならないようお願いいたします」

「ちょっとお待ちなさい!」

突然とつぜん、運転士の背後から怪盗かいとうトリオが現れた。

「あら、またお会いすることができて本当に光栄こうえいですわ」

「本日のじゅうはこちら!」

車掌しゃしょうの魔獣だ!」

怪盗トリオの合図で、白と黒の制服を着た車掌の魔獣が現れた。

 「さあ、ショータイムのはじまりよ」

琴音は、エースミュージックポッドでドールプリンセスに変身する。

「プリンセスジュエル、セット!プリンセス・ドレスアップ!」

赤と黄金色こがねいろの光が琴音を包む。

ほのおのプリンセス・スカーレットエース、見参!プリンセスステージ、レッツスタート!」


 スカーレットエースが現れると、

「次は、横中市役所前でございます」

「次は県庁前でございます」

魔獣が車内アナウンスを行った。

「新横中駅行きは、左の白い方だわ」

すると、スカーレットエースは魔獣の特徴とくちょうに気づき、

「ちゅる!」

「次、止まります。電車が止まってから席をお立ちいただくようお願いします」

コロンが降車こうしゃボタンを押した。

 「さあ、クライマックスよ」

スカーレットエースはエースミュージックポッドにガーネットのマジカルジュエルをセットする。その力をプロミネンスエースカスタネットにさずけると、

「プリンセスステージ、ライブスタート!」

スカーレットエースによる魔獣の浄化が始まった。

「愛の太陽」

「いつも心の中で晴れている」

「こんなにこころふるえるの 初めて」

「愛の太陽」

「周りに雲一つない」

「言えないけどあなたが好き」

「すごいけ足 はしわたった」

「あなたの元にサプライズ訪問するわ」

「電話したい」

「メールしたい」

「それでも まったく時間はない」

「愛の太陽」

「いつも心の中で晴れている」

「こんなに心震えるの 初めて」

「愛の太陽」

「周りに雲一つない」

「言えないけどあなたが好き」

「愛の太陽」

「いつも心の中で晴れている」

「こんなに心震えるの 初めて」

「愛の太陽」

「周りに雲一つない」

「言えないけどあなたが好き」

「ガーネットのかがやきでパワーアップ!乙女おとめの力!ガーネット・スカーレット・ファイヤーワークス!」

スカーレットエースがプロミネンスエースカスタネットを魔獣に向けて響かせる。すると、魔獣は跡形あとかたもなく消えていった。

「ちゅ、ちゅ、ちゅるるわー!」

とコロンはマジカルジュエルの気配けはいを察知した。マジカルジュエルが落ちていく方に行くと、

「キャッチ!」

とコロンがマジカルジュエルを回収することに成功した。それをエースミュージックポッドに認識して、

「サンゴ。薄紅色うすべにいろのマジカルジュエルよ。折れて海岸に漂着したり、海底から採取されたりした一部のサンゴは見た目の美しさにより、古代から世界各地で宝飾品ほうしょくひんとして使用・取引されてきたの。日本で、はサンゴを三月の誕生石としているわ。結婚三十五周年を珊瑚婚式さんごこんしきともいうわ。仏教における七宝の一つだわ。西洋でも宝石サンゴには長い歴史と様々な関連文化があるわ。ギリシア神話によると、英雄えいゆうペルセウスが怪物メドゥーサの首をき切った時、あふれた血からペガサスが、地中海にしたたり落ちた血のしずくから珊瑚が生まれたとされているの。ローマ時代から護符ごふとして愛用されたの。カスティリヤ王アルフォンソ十世がまとめた『宝石誌』には、珊瑚は金星と月に結びついた宝石と書かれているわ。イタリアの農婦の間の俗信では持ち主の女性の月経の間は珊瑚の色がせると考えられていたの。伝統的に金星は肉体的なあいつかさどるヴェヌス、月は妊娠にんしんをつかさどるダイアナに結びつく惑星とされているわ。イタリアでは古くから地中海の珊瑚C. rubrumを使った工芸が発達し、海にちなむことから船乗りや血のような赤い色から妊婦の厄除やくよけとして珍重ちんちょうされてきた歴史があるの。赤い珊瑚で角を象ったコルノという護符は厄除けとして現在でもよく好まれるわ。中世の夢判断においては夢に珊瑚が現れると病から回復する予兆であるとされたわ。一方で、珊瑚の色が褪せることは持ち主の健康がおびやかされている予兆よちょうだとおそれられていたの。イワンらいていに謁見(えっけん)したサー・ジェローム・ホーシーは、皇帝が美しい珊瑚をホーシーの手に取らせて間違まちがいなく美しい色合いをしていると確認させた後、自分の手に乗せた珊瑚がひつぎぎぬの色に白く褪せて自分の死を予知しているの。と言ったと記録しているの。三年前に癇癪かんしゃくから妊娠中の皇太子妃をり殺し、妻を助けようとした皇太子を撲殺ぼくさつ、皇太子妃の身ごもっていた初孫をも殺害しており失意の底にあった皇帝は、ホーシーが謁見して間もなく自らの言葉通り発作を起こして死んだの。日本では奈良時代以来、シルクロードをわたった地中海産珊瑚を珍重していたわ。産地イタリアでは地中海珊瑚は乱獲らんかくが原因で絶滅ぜつめつに近い状態におちいり、代替品が求められていた。十九世紀、土佐沖でシロサンゴが発見されるやいなや、インドに駐留ちゅうりゅうしていたイタリア商人が中国商人を通じて買い付けイタリアに送ったわ。次いで土佐とさおきでアカサンゴ、モモイロサンゴが発見されるに至り、日本が開国を決めるとイタリアの珊瑚商人が自ら買い付けに土佐に乗り込んだわ。イタリアの人々は久方ぶりに輝くような赤や桃色ももいろの珊瑚を手に取れるようになったの。日本産珊瑚のうち、日本、中国、台湾たいわんで最も人気があるのはアカサンゴで、そのうちでも深みのある赤を市場では血赤珊瑚と呼んで最高ランクとされ、台湾や中国の富裕層に人気が高く国の発展に伴い値段の高騰こうとうが激しいわ。この人気のため日本の海域でアカサンゴが大規模に密漁されているわ。モモイロサンゴは桃色の名をかんするが朱色しゅいろから桜色まで色調が広くアカサンゴより大型のものが多いので広く使われるの。ヨーロッパではアカサンゴより本種が人気よ。本種もふく透明感とうめいかんのあるあわいピンク色のものは市場では天使の肌という意味のエンジェルスキンとロマンチックな名で呼ばれるが、日本の流通業界ではボケと呼ばれているの。一般的に植物のボケの花の色に由来するといわれるが、商売上手のイタリア人が日本人や中国人の仲買人をだますために、色がぼけていて安価でしか買いとれないとうそをついて安く仕入れて大もうけしたという俗説もあり、正確な語源はいまだに不明だわ」

 「それではみなさん、また次回輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」

スカーレットエースが勝利宣言すると、

「もう、また負けちゃったんじゃないの!」

「今日は勝てると思ったのに!」

「次という次こそは絶対に勝つ!」

怪盗トリオはこうなげいて、マシーンに乗ってどこかに去っていった。


 それから、

「みんな、ちょっと聞いて」

チララはつぼみたちをある場所へと招集する。

「ダークネス団がキミたちに宛てた手紙を送ってきた!」

つぼみたちが今いる場所は、プリンセスフラワーガーデン。

 すると、つぼみは手紙をチララから受け取った。

「読んでみるね」

つぼみは、早速手紙を読む。

「プリンセスドールズとその仲間へ 我々が現実世界に送り込んできた幹部と大切なものをかけて近いうちに決闘けっとうを行う。この戦いは、我々とお前たちの未来がかかっている大事な戦いだ。我々が与えた任務を遂行すいこうできないなどまったく役に立たない地下ちか倉庫課そうこかよりも優秀ゆうしゅう幹部共かんぶどもは、相当そうとう手強てごわい相手になるのだろう。それなりの覚悟かくごをして戦うがいい。 ダークネス団最高責任者 ネメシス・オメガ」

中身は、オメガからの挑戦状ちょうせんじょうだった。

「これは、どんな戦いになるのだろう?」

「予断をゆるさない状況です」

「目がはなせないわね」

つぼみたちは、危機感をあらわにした。

 一方その頃、ダークネス団アジトでは、

「紹介しよう。我々の幹部であるライトとダークだ」

「よろしくお願いいたします」

「どうも」

ライトとダークは、怪盗トリオに挨拶あいさつした。

「あなたたち、これから何をするつもり?」

「人間界に出向きます」

「プリンセスドールズにあることを仕組もうかと…」

ライトとダークは、あることをたくらんでいるようだ。

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