第18話 未来からやってきた妖精

ダークネス団の発表会が間近に迫った夜、一筋ひとすじの流れ星が横中の空にってきた。

「待っていて、みんな…。すぐにそこへ行くからね…」

流れ星はこうささやいて、つぼみの家へと落ちていく。

 その時、おとぎの世界にいた光の女神は、

「プリンセスドールズ、そろそろ試練の時が近づこうとしています」

とささやくと、家にいたプラチナも、

「ついに、未来からのメッセージが届くのか」

とその先の未来を予知していた。

 夜が明けると、

「おはよう、チララ」

「おはよう…。ん?あそこに何かいるみたい」

「これはもしかして!」

つぼみは、自分のベッドの枕元まくらもとに、突然とつぜん妖精ようせいがいるのを目撃もくげきする。

 「しかも、新しいプリンセスジュエルの妖精…!」

「本当なのか!?」

「そうよ。わたしはプリンセスジュエル・パープル&シルバーの妖精、パルルよ。あなたたちこそ、ラブリーピンクの愛沢つぼみとそのパートナーのチララなのね」

「私たちのこと、もう知っているの!?」

「うん」

「どうして!?」

「ずっと、未来からあなたたちのことを見てきたのよ」

パルルは、すでにつぼみたちについて知っていることを語ると、

「実は、あなたたちの時代からはるか遠い未来からやってきたプリンセスジュエルの妖精なの。おとぎの世界にいる光の女神からの話によると、何やら黒いドールプリンセスがいることを発見したらしいわ」

と明かすと、

「私は、時空とき宇宙そらをかけるプリンセスジュエルの妖精。星と月のドールプリンセスを探しているの。そんなあなたにこの力をさずけるわ」

と、チララにある力を与える。

「銀のマジカルジュエルだ!室温での電気伝導率と熱伝導率、可視光線の反射率はんしゃりつは、金属中で最大である。光の反射率が可視領域にわたって高いことから、美しい金属きんぞく(きんぞく)光沢こうたくを持っている。延性や展性にすぐれており、その性質は金に次ぎ、銀は長い線に伸ばすことができる。溶融ようゆうぎんはすごく高い温度で酸素さんそと接触すると、その体積より多い酸素を吸収し、凝固のときに吸収した酸素を放出し表面がアバタとなる spitting と呼ばれている現象を起こす。純銀の鋳造ちゅうぞうは、これを防止するため酸素を遮断しゃだんした状態で行う。貴金属の中では比較的ひかくてき化学かがく変化しやすく、空気中に硫黄いおう化合物かごうぶつふくまれていると、表面に硫化物が生成し黒ずんでくる。銀が古くから支配階級や富裕階級に食器材料として用いられてきた理由の一つは、硫黄化合物やヒ素化合物などの毒を混入されたときに、化学変化による変色でいち早く異変いへんを察知できる性質からという説がある。銀イオンはバクテリアなどに強い殺菌力さっきんりょくを示すため、現在では広く抗菌剤こうきんざいとして使用されている。例えば、抗菌加工と表示されている製品の一部に、銀化合物を使用した加工をほどこしているものがある。塩素などハロゲンと直接結合しハロゲン化銀を生成する。また酸化作用のある硝酸しょうさん熱濃ねつのう硫酸りゅうさんに溶解し銀イオンを生成する。ただし王水には溶けにくい。また空気の存在下でシアン化ナトリウムの水溶液にもシアノ錯体さくたいを形成して溶解する」

チララは、銀のマジカルジュエルの力を手にした。

「そこで、あなたたちに大切なお願いがあるの。ダークネス団によってうばわれてしまったダイヤモンドのマジカルジュエルを取りもどすことと同時に、黒いドールプリンセスを助けてほしいわ!」

とパルルはつぼみたちにあるお願いをする。

「やるしかないよ」

「みんなの力で助けよう」

これに関して、つぼみたちはこう受け入れた。


 「大変です!」

あやしい気配けはいがするわ!」

その時、沙奈さなとアリスがつぼみの家を訪れた。

「つぼみちゃん、近頃のインターネットでは、著名人への誹謗ひぼう中傷ちゅうしょうが相次いでいるわ!」

「それによる自殺も相次いでいます」

「えっ!」

「それは、ワールドストリートにいるはずだ!」

チララの言葉通りにつぼみたちがワールドストリートに向かうと、そこには怪盗かいとうトリオの姿があった。

「あら、またお会いすることができて光栄こうえいですわ」

「本日のじゅうはこちら!」

「ボックスの魔獣だ!」

怪盗トリオの合図で、デスクトップパソコンをイメージしたボックスの魔獣が現れた。

「さあ、変身よ」

「うん」

つぼみ、沙奈、アリスはプリンセスミラーでドールプリンセスに変身する。

「プリンセスジュエル、セット!プリンセス・ドレスアップ!」

あいのプリンセス・ラブリーピンク、見参!」

「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!」

「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参!」

「私たち、プリンセスドールズ!プリンセスステージ、レッツスタート!」


 プリンセスドールズが現れると、

「きっと誰かが救いの手を」

「差し伸べてくれるのなら」

「私は構わないわ」

「街に灯るネオンの光」

「もう見飽みあきちゃったの」

「そう 私はもう」

「見慣れた私ではない」

「生まれ変わるのだから」

「今」

「探しているの ほしいもの」

「時をえて 空を超えて」

「まだ見たことない宝石ほうせき

「それが黒いダイヤモンド」

「出口のないトンネル」

「答えのない質問」

「今の世界はわからないものばかり」

「そう 私はもう」

「誰にもたよらない」

「何もこわくないのだから」

「見つけたい つかみたい」

「大地をかけ 大空をかけ」

「私が勝ち取るから」

「それが黒いダイヤモンド」

「見つけたい つかみたい」

「時を超えて 空を超えて」

「夢がかなう宝石」

「それが黒いダイヤモンド」

魔獣のディスプレイ上に、ダークミラージュの新曲のミュージックビデオが流れてきた。

「ネットでの中傷が多い原因は、これだったのね!」

「もうげられませんよ!」

アクアブルーとシトラスイエローが訴えると、

「言葉には、人を傷つける意味を持っているものもあるよ。だから、思いやりを持って生きていこう」

ラブリーピンクの熱弁で、ディスプレイは真っ黒になってしまった。

 「さあ、行くよ」

「うん」

ラブリーピンク・アクアブルー・シトラスイエローは、ルビー・サファイア・シトリンのマジカルジュエルをそれぞれのプリンセスミラーにセット。その力をプリンセスバトンロッドに授けると、

「プリンセスステージ、ライブスタート!」

プリンセスドールズによる魔獣の浄化が始まった。

「Shining! かがやきを」

「いっぱい集めて」

「そのボルテージを」

「高めていこう」

「ここからまた始まる」

「私たちの物語」

「夢をかなえてみせる」

「絶対」

「Star Light Stage」

「ときめいて」

「アイドルになっちゃおう」

ずかしがらずに」

「Star Light Stage」

「一緒に」

「盛り上げていこう」

「一体感を高めて」

「Stardom!」

「ここからまた始まる」

「私たちの物語」

「夢を叶えてみせる」

「絶対」

「Star Light Stage」

「ときめいて」

「アイドルになっちゃおう」

「恥ずかしがらずに」

「Star Light Stage」

「一緒に」

「盛り上げていこう」

「一体感を高めて」

「Stardom!」

「今こそ、みんなの心を一つに!乙女おとめ結束けっそく!プリンセス・トリニティ・ストリーム!」

プリンセスドールズがプリンセスバトンロッドでそれぞれのシンボルマークをえがき、魔獣に向かって放つ。すると、魔獣は跡形あとかたもなく消えていった。

 「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」

と、チララが魔獣のコアから出てきたマジカルジュエルのありかを察知。そこにたどり着くと、

「キャッチ!」

とマジカルジュエルを回収することに成功した。それをラブリーピンクのプリンセスミラーに認識すると、

「アメジスト。むらさきのマジカルジュエルだ。むらさき水晶すいしょうとも呼ばれているアメジストの名前は、ギリシア語のamethustosに由来している。古くから、いを防ぐ効果があると信じられていた。素焼きの陶板とうばんにこすりつけると白いじょうこんが残る。ハンマーなどで割ると貝殻状かいがらじょうの断口が残る。光沢はガラス光沢で、色はあわいライラック色からい紫色まで幅広い色合いがある。紫色の発色は、ケイ素を置換ちかんした微量びりょうの鉄イオンが放射線を受けると電子が飛ばされて電荷でんか移動いどうが酸素原子と鉄イオンとの間で起こり、三価の鉄イオンが四価の鉄イオンになり、これが形成した色中心が光のスペクトルの黄色を吸収するため、その補色である紫色が通過する様になることが原因である。紫外線に曝露ばくろすると退色する。照射する光のスペクトル組成によって、見た目の色を大きく変化させる紫水晶は、カラーチェンジアメシストかカラーチェンジタイプアメシストと称されている。 また、加熱すると色が黄色に変化し、宝石名としてはシトリンとなる」

 「それではみなさん、また次回輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」

プリンセスドールズが勝利宣言すると、

「もう、また負けちゃったんじゃないの!」

「今日は勝てると思ったのに!」

「次という次こそは絶対に勝つ!」

怪盗トリオはこうなげいて、マシーンに乗ってどこかに去っていった。


 それから数時間後、テレビのニュースでは、横中でダークネス団の発表会が開かれることを連日のように報道されている。

「全国の皆さん、こんばんは。時刻は午後六時になりました。イブニングニュースをお伝えします。横中市で開催かいさい予定よていのダークネス団による大規模な発表会が刻一刻と近づいています。本日も最新情報も合わせてお伝えします」

東京都心にあるテレビ局のスタジオに、突如とつじょとして怪盗トリオが未来世界からやってきた。

「あら、顔見知りの人が多いのですわ」

「そんな人のために自己紹介だ!」

「誰かの声が聞こえたのなら」

「すかさずここにやってくる」

「世界の危機を救うため」

「今日も明るく出動だ!」

「レッド・アルファ!」

「ブルー・ベータ!」

「グリーン・ガンマ!」

「三人そろって、神出鬼没しんしゅつきぼつの怪盗トリオ!」

「なんてな!」

怪盗トリオは、全国ネットの夕方のニュース番組を担当するアナウンサーやスタッフたち、そして視聴者たちに自己紹介をする。

「我らが、ダークネス団がほこ地下ちか倉庫課そうこかだ!」

なんと、怪盗トリオがニュースの進行をさまたげに来たのだ。

「あなたたち…何者ですか?」

「だから、怪盗トリオ…。いや、地下倉庫課ですわ!覚えてちょうだい!」

突然のサプライズゲストに困惑しているアナウンサーに、アルファはご立腹の様子。

「宣伝、行くぞ!」

「ガッテンだ!」

 それでも、ベータとガンマはアナウンサーとスタッフの指示を無視してまでネメシス財団の発表会を告知する。

「近いうちに、我々ダークネス団の発表会があるぞ!」

「当日に直接会場に行けない人には、インターネットの動画サイトでの配信もあるからな!世紀の瞬間しゅんかん見逃みのがすな!」

 これをアナウンサーが、

「人の番組で勝手に宣伝するのはおやめください!あなたたちは入局にゅうきょく許可きょかを取っていませんよね!?」

と注意するも、

「気まぐれにやっちゃいますわ!」

「ガッテンだ!」

「ちょっと、カメラを止めて!」

「キャー!」

「誰か助けて!」

とあまりにも身勝手すぎる放送事故を起こし、しばらくフィラー映像を流さなければならない事態となってしまった。

「ダイヤモンドのマジカルジュエルを、必ず取り戻さなければならない!」

「今すぐそのことをつぼみたちに伝えてくれ」

「分かった」

これを受けて、晴斗とプラチナは急遽きゅうきょビデオ電話で会議を開き、ダークネス団の計画を阻止そしするための作戦に出た。

その頃、ダークネス団アジトの近くにある公園に滞在していたドクターはこう述べる。

「いくつものドタバタはあったが、電波ジャック作戦はある程度成功したようだ」

すると、ある人にスマートフォンで電話をかける。

「もしもし」

「もしもし、私は今横中にあるポートフロンティア学園中等部にいますが…」

「ああ。それなら例の作戦を実行しろ」

「分かりました」

「では、健闘けんとういのる」

「失礼します」

 その相手は、つぼみたちのクラス担任である西野先生だった。

「さあ、今度は生徒たちをつぶそうか」

とあることを目論もくろんでいるようだ。

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