第209話晒すために同窓会に呼んできたクラスメートに反抗してみた1

 ※法律や裁判について作者が勉強してるため、別の話挟みます。


 数日後。とあるファミレスにて。

 奏介はリリス、味澤、宇津見、長池と向かい合っていた。

「で、なんだよ。用事って」

 奏介はやや不機嫌そうにコーヒーを一口飲んで、借りてきた猫のごとく小さくなっている四人に問う。

「あ、いや、その……上嶺かみみねさんて覚えてますか?」

「あぁ。四年の時のクラスメートね」

「はい」

 石田南城は五、六年の時。上嶺は四年の時で根黒と一緒に虐められていた記憶がある。クラスメートと言っても三クラスしかなかったので学年全体で一体感があった。奏介の視線が鋭く四人を射抜く。

「で?」

「菅谷と話してたところを見てたみたいでさ、今度同窓会のパーティに呼んで来いって言われて」

「へぇ。……行くけねぇだろ。お前らなんなんだ、わざわざ喧嘩売りに来たのか?」

「ち、違うのよ! ほら、上嶺って結構お坊ちゃまでしょ? 半ば脅しっていうか」

「あいつの父親、かなり権力があるって話だもんな。国会議員なんだっけ」

 奏介は少し考え、

「そういうことなら行ってやろうか」

 リリス達は無表情でいう奏介にゾクリとした。

「あ、あの、別に無理をしなくても良いですよ?」

「そ、そうよ。どうにか断っておくから」

「日付決まってるから、都合悪いことにしてなんとか言い訳出来るだろ」

 頷きあう四人。奏介は手を伸ばした。

「預かってきた招待状見せて」

 リリスは少し躊躇いながら、カバンから1枚のハガキを取り出した。宛名は『菅谷奏介』、差出人&主催者は『上嶺有孔かみみねゆうこう』となっている。

「ふーん。ちゃんと作ったんだ」

 奏介は招待状を見ながら薄く笑う。

「分かった。行くって言っといて」

「良いんですか? 菅谷さん、あの、多分」

「あぁ。どうしても来てほしいみたいだからな。四年の時のクラスメート、まとめて黙らせに行くわ。お前ら、俺の邪魔だけはすんなよ? 巻き込まれたくなかったら知らんふりしてろ」

 四人一斉に背筋を伸ばす。

「わ、分かってます」

「あったりまえよ!」

「この場で誓うぜ!」

「料理に集中してっから」

 奏介は頷いて、

「それじゃ」

 ファミレスを後にした。



 冷や汗をかきまくった。四人はテーブルへ一斉に突っ伏した。

「上嶺終わったわ、あれ」

「もう知りません。わたし達は一応止めたわけですし」

「あぁ、関わらないで置こうぜ」




 数日後、休みの土曜日。

 奏介はある程度正装をして、高級そうなホテルへとやってきた。

 参加費五千円持参とのことだったので懐に入れてある。

「あ、菅谷さん」

 丁度来たらしく、リリスが近づいてくる。シンプルなドレスワンピース姿である。

「おはようございます」

「あぁ。初めて来たけど、凄いところでやるんだな」

「お父様が偉い政治家てすからね……。ここで何度か同窓会やってるんですよ」

「ふーん」

「あの、本当入るんですか?」

「あぁ?」

「ごごごごめんなさいっ」

 ビクンと肩を震わせて、頭に両手を乗せる。

「ここまで来たんだし、当たり前だろ。……」

 奏介の視線に気づき、リリスが首を傾げる。

「な、何か?」

「いや、なんか檜森ってそういう格好、引くほど似合うな」

 さすが、ファンクラブがある美少女と言ったところである。

「ふぇ!?」

「顔赤らめるなよ。別に褒めても貶してもないから。ただの感想」

「うう、なんでわたしがドン引きされるんですか……?」

「てか、檜森は先行け」

「は、はい。失礼します……」

 ぺこりと頭を下げ、中へと入って行った。彼女の背が見えなくなってから、ホテルの中へ。

「いらっしゃいませ。小学校の同窓会ですね。こちらへ」

 長い廊下を通り、案内されたのは学校の教室二部屋分。少し広めなホールだった。赤い絨毯に小さなシャンデリア。細長い長方形のテーブル、全員で向かい合えるようになっている。名前のプレートが置かれ、席は決まっているようだ。入り口に席表が貼ってあったので自分の名前を確認してその位置へ。

「ん?」

 奏介の席があるはずのそこには名前のプレートがなかった。

「……」

 見つめていると、座っていた女子がこそこそと話し始めた。

「やだぁ、菅谷じゃない?」

「嘘でしょ、来たの?」

 奏介はため息をついて、上嶺の姿を探す。



 菅谷奏介がホールに入ってきた瞬間、吹き出してしまった。ホール内からクスクスと笑い声が漏れる。

 空気読めなさ過ぎるだろう。小学校を卒業し、同級生との関係がチャラになったとでも思っているのだろうか。入り口テーブルの近くで自分の席を探す奏介に爆笑しそうである。

「えぇ……菅谷じゃん」

「ウッソでしょ。キモ」

「あれでお洒落したつもり? 似合ってねー」

 上嶺の近くに座っているメンバーがクスクスと笑う。

 見当たらないことに気づいたらしく、上峰の席へと歩み寄ってくる。

「あ、あの上嶺君。こんにちは。よ

呼んでくれてありがとう。あの、俺の席は」

 頬を赤らめて嬉しそうに聞いてくる。

「やぁ、菅谷君。君本当に来たんだ? 呼んだこと忘れてたよ」

「へ?」

「すっかり記憶から抜け落ちていたね。皆から嫌われていた君がここに来るとは思わないからさ。君の席と料理、用意してなかったよ」

「え」

「料理も人数分しかないんだよね。悪いけど、帰ってもらえる?」

 彼の周りにいる元同級生がくすくすと笑い始める。

「てか、普通くる?」

「神経図太すぎ」

「空気読めないよね」

 リリスだけは窓の景色を眺めている。

 奏介はにやりと笑い返した。

「随分とアホな主催者だな。参加する客の人数も数えられなかったのか? 呼んだ客の席と料理も満足に用意出来ないとか、知能足りないんじゃないか?」

 上嶺のテーブルの空気が凍りつく。

「……は?」

 唇を震わせながら見上げてくる上嶺。

 奏介は冷たい表情で招待状を彼の額をぺしぺしと軽く叩く。

「ここに俺の名前、主催者で招待者はお前の名前。呼び出しといて、席が用意できてないは、あり得ねぇだろうが。算数やり直せよ、参加人数すらまともに数えられないくせに、何、ニヤニヤ笑ってんだ。恥ずかしいやつだな。このクソ無能野郎が」

 シンとなる上嶺周辺。会場内は静まり返った。

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