第35話


 ぬあー……まだちょっとふらふらするー……

 さっきの反動なのかお腹が空いたのか分かんないけど、もうちょい休めばよかったかなー。

 でも古代遺跡なんかにあんまし長居したくないしなー。

 何が出てくるかわかんないもんね。


 もうすぐ入口だし、さっさと帰ろう。



「――オウカ!! その床は!!」

「……へ?」



 ぶぃん、と床が鳴った途端、見えていた景色が変わった。


 は? なに?


「――警告が遅れました。転送トラップです。

 ――現在地を確認中。周囲に魔力反応多数、警戒を」

「……とりあえず危険なのは分かった。リング」

「――Sakura-Drive Ready.」


「Ignition……またぞろぞろと出てきたな」


 ぼこぼこと地面から沸いてくる骨。

 スケルトン。数が多い。十体以上はいる。

 全ての個体が剣と盾で武装している。

 とりあえず、撃ち抜こうか。


「さて。一緒に踊ろうか、骨ども」



 構える。腰を落とし、左手を前に、右手は逆手に頭の横に。


 振り下ろされた剣。銃底で弾き、ガラ空きの頭を撃ち抜く。

 横薙ぎ。更に深く沈み込み、頭上でやり過ごす。

 起き上がり様に蹴り上げ、盾を弾き、ヘッドショット。


 回転。勢いを付けて、銃底を叩きつける。

 怯んだ隙に県に剣に銃撃。手を離れて飛んでいく様を視界の隅で捉えながら、目の前のスケルトンを蹴り飛ばした。

 骨が違う個体にぶつかり、その隙を逃さず撃ち仕留める。


 倒しされたスケルトンは塵になって消えていく。

 しかし、すぐに違う個体が地面から這い出てくる。

 キリがない。どうしたものかと考えながら踏み込み、足元を蹴り払い、崩れた所に銃撃を叩き込む。


「――現在地を確認。地下階のようです」

「は。道理で地面が見えてる訳だ」 

「――この先に制御室があるようです。マップ表示します」

「了解。ここに向かったらいいのね」

「――肯定:制御室から上階に移動可能です」

「じゃあ行くか。いつまでもここに居たって仕方がない」


 沸いた端から頭を撃ち抜きながら駆ける。

 射程が長いと便利だな。接近戦での威力も増してるし。



 案内通り進むと、上に昇る階段があった。

 スケルトンが追って来ないのを確認し、一旦拳銃をホルダーに戻す。



 薄紅色の残滓を曳いて階段を上っていくと、廊下の向こう側にでっかい箱のような物が見えた。

 カタカタと動いてる。なんだあれ。


「――オウカ、警戒を。魔力反応、スケルトンではありません」

「ん、見えてる。なんだろーねあれ」


 四つ足の生えた鉄の箱に見えるけど……めっちゃこっち見てるなー。

 さっきから目があってるし。いや、目かどうか分かんないけど。なんか丸い光点がこちらを見つめているように見える。

 敵、なのかなー。なんか怖くないんだけど。


「んー。リング、あいつ解析できる?」

「――解析不能:ですが、生物ではありません」

「うん、そうだろねー」


 めっちゃ鉄だもんな、あいつ。

 なんだろ。ゴーレムの仲間なのかな。


『認証完了/ご命令を』


 おお? 喋った? リングの仲間、なのかな。


「あんた、言葉が分かるの?」

『Yes/ご命令を』

「えーと。どうしよっか……げ、追ってきた」


 ガチャガチャと音を立てて、背後からスケルトンの群れが迫って来た。

 うわ、どうしよ。


「ねえあんた、とりあえずあのスケルトンどうにかならない?」

『了解/排除します』


 おお。腕っぽいのが四本生えた。先端のあれ、銃口か?

 筒みたいになってんのが、ゆっくり回し始めた。



 チュイイイイン……

 ダダダダダダダダダダダッッッ!!!!



「ちょ、おま……うるせぇわああぁぁぁぁ!!」

『申し訳ありません/掃討完了しました』



 いや、たしかに銃弾の雨でスケルトン全部消えたけど。耳がキーンってなったわ。


「むう。とりあえず、ありがと。で、制御室に行きたいんだけど、分かる?」

『了解/お乗りになりますか?』

「え、あんたに乗れって?」

『Yes/お乗りになりますか?』

「まあ、折角だから、乗ろうか」


 箱によじ登って、ぺたんと座ってみる。

 あれ、案外冷たくないのね、こいつ。



 がしょん がしょん がしょん


 がしょん がしょん がしょん



 おおお。揺れが少ないし、結構乗り心地悪くないかも。

 魔物も勝手に倒してくれるし、こりゃ楽だわ。

 ちょっと楽させてもらおう。



 がしょん がしょん がしょん


 がしょん がしょん がしょん



 そだ、今の内にご飯食べちゃお。

 穀物や干した果物を固めただけの携帯食だけど、食べないよりはマシ。

 うん、やっぱもそもそしてんなーこれ。今度美味しい携帯食、模索してみっかな。ハチミツ入れるとか。

 食事は出来るだけ美味しいもんがいいからね。



 がしょん がしょん がしょん


 がしょん がしょん がしょん


 がしょん がしょん がしょっ!!



 お? ドアの手前で止まった?

 てことは、この部屋なんかな。


『到着しました/足元にお気をつけください』

「ありがと。助かったわ」

『ご用の際は/お呼びください/Type-0様』

「……その呼び方あんまし好きじゃないわ。オウカって呼んで」

『オウカ様/了解致しました』


 鉄の箱から降りて頭を撫でてやる。

 頭、なのかな、これ。まあいいけど。


 がしょん がしょん がしょん


 がしょん がしょん がしょん



 おぉ。戻っていった。なんなんだろね、あの子。

 敵じゃないみたいだけど……よう分からん。


「――オウカ。先に進みましょう」

「……そだね」


 扉の前の丸いとこに手を当てると、やっぱり自動で開いた。

 うわー。なんか窓みたいなのがたくさんある。

 文字みたいなのが書いてあるけど、全く読めん。

 てかこれ、リングの内側に掘ってあるのと同じ文字か?


「リング、これ読める?」

「――遺跡の稼働状況のようです。ほぼ休止状態です」

「んー。なるほど?」


 つまり今は動いてないってことか?

 でもドアとか勝手に空いたんだけど。あっちは魔導具なのかな。


「――この遺跡は人造英雄の保管施設だったようです」

「……そっかー。ね、人造英雄って私以外にもいるの?」

「――過去に存在したようですが、現在保管されている個体はありません」

「あー。だよねえ」


 もしかしたら、って思ったんだけどね。

 昔の遺跡だし、そりゃ残ってないか。

 でも、やっぱ私以外にも居たんだね。


「……ね、リング。人造英雄の検索とか、できる?」

「――不可:データベースに魔力パターンが記録されていません」

「この遺跡にその魔力パターン? って残ってないの?」

「――データが破棄されています。復旧中ですが、時間がかかります」

「破棄って、誰かが消したってこと?」

「――肯定」

「……うぅむ。ま、無理なもんは仕方ないか。で、階段はどっち?」

「――マップに表示します」

「ありがと」


 しゃーない。元の予定通り、ちゃっちゃと帰りましょうか。

 マップはー……あ、こっちね。了解。


 階段を上がるとすぐに出入口があった。

 そこから外に出ると、私が出てきたとこがガチャって動いて壁になった。

 隠し扉的なやつなんだろうか。ちょっと面白い。

 まあ、多分また来るし、その時に色々見て回ろっかなー。

 中々に興味深い場所だったし。



 ひとまず、帰って美味しいご飯でも食べようか。

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