穢れを知らぬ君に告ぐ

 唯、走れ。


 其なる傷は軈て勲章へと変る。


 唯、穢れを畏れず往け。


 白布とは汚れゆく物に他ならぬ。


 唯、前方を見よ。


 何、何れ雨は止むであろうさ。






 君よ、穢れを知らぬ君よ。



 敢えて言おう、其方は艱難辛苦に塗れた道である。



 羽根を剥がされ痛みに泣く日も有ろう。



 孤独に潰れる夜も有ろう。




 然し、然しだ。君よ、然れど穢れを畏れぬ強き君よ。




 唯、泥濘を行け。



 羽根は無くとも脚は有ろう。



 孤独は有れども同士が居ろう。



 降らぬ雨来ぬ夜は無く、晴れぬ空明けぬ闇も亦た無く。



 歩き出せ、君よ。




 例え歓待されぬ旅路であれど、生を手放すは理に非ず。



 美学とは、数多の抗いの先に有るのだから。

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