確定事項

「『未来が視えるなんて、さぞ詰まらない人生だろう』」


 彼が口を開く。


「人はよくそんなことを言う。」


 剣呑、不敵な笑み。


「……では逆に問うがね」


 ちりりと火花が空を舞う。


「未来の視えぬお前の人生は、そんなに良いものかい?」


 刹那、拳銃が吼える。


 混凝土コンクリートに赫華が乱れる。


 翻って後方、背広の男。


「お前にゃ、この未来も視えていたんだろう」


 銃持つ右手で頭を掻く。


「聞き入れられない問い、応答のない問答を、駄目元で尋ねてみたってところか。全く、難儀なこったな」


 周囲に一瞥をくれる。


「……まあ、まだ居ンなら答えだけはくれてやる」


 溜息。


「確かに俺は明日生きてるかも判らん、人の未来も解せん」


 のち、悪漢の含笑。


「けどまあそれでも、お前の雁字搦めの人生よかはマシってもんさ。」


 乾いた嗤いと銃声が三度。


 宛ら芸術アートが如き血痕と、醜悪グロテスクに臥す老人の屍体。


 未来が、此処に収束した。

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