第8話恋のかけひき

次の日、会社近くの喫茶店に未来は、礼二を呼び出した。


「何のつもりだ?」


「ワガママです。」


「電話で言ってたワガママか…。」


未来は、悪戯っぽく笑った。


礼二は、ため息をついた。


「わたしの作戦に協力してください。」


「早く言え。」


礼二は、周りをキョロキョロ見て落ち着きが無い。


隼が、喫茶店に入って来た。


「キスしてください。」


「は?」


「上野さんがわたしにキスしてくれたら長谷川さんはわたしに手は出しません。それとも長谷川さんにわたしを取られても良いんですか?」


礼二は、頭を掻きむしった。



「そんな事、俺が出来るか…。」


「そうですか。」


未来は、寂しそうな顔をした。


隼が近づいて来た。


「お二人で何コソコソしてるの?」


「田中先生の事で話し合ってたんですよ。」


未来は、深刻そうな顔をして隼に言った。


「美少年君がどうしたの?」


「実は、わたし、田中先生に好意を持たれてるみたいで。」


未来は、上目づかいで礼二を見ながら言った。


隼が、顔を歪ませた。


「あのガキ。」


と隼は口走った。


隼は、舌打ちを二度した。


一回は、礼二を睨み付けて。


もう一回は、虚空を見つめて舌打ちした。


隼は、喫茶店から出て行った。


「満足か?」


「いえ、上野さんからキスしてもらってないので不満です。」


「バカ野郎!仕事もろくに出来ない新米が!生意気だぞ!」


礼二は、席を立とうとした。


「もう一つワガママを聞いて下さい。」


礼二は、未来を無視して喫茶店を出て行ってしまった。


未来は、上野の背中を見つめながらため息をついた。


コーヒーのブラックを飲んで苦いと感じた。

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