第85話 休日②
「レオ、お願いがあるの」
夕食を終えた後ソファでまったりしている最中にあることを思い出す。声をかけるとレオンスは不思議そうな表情で首を傾げる。
「お願い?」
「明日か明後日、どっちでも良いからレオのご両親に挨拶に行きたいの」
お願いするなら早い方が良い。
そう思って提案するとレオンスは穏やかな笑みを浮かべて「良いぞ」と了承してくれる。
「もっと早くに言ってくれたら今日行けたのに」
「レオが朝までしなかったら行けたわ」
睨みながら言うとレオンスは苦笑いを浮かべる。
反省しているみたいなのでもう怒ってはいないがあれこそ事前に言っておいて欲しかった。
誤魔化すように「他に行きたいところはないのか?」と聞いてくるレオンスがおかしくて頰を緩める。
それにしても他に行きたいところね。
日帰りで行けるところと言ったら限られてくる。
「レオは行きたいところないの?」
「アリアと一緒だったらどこでも楽しそうだろうな」
さらっと恥ずかしいことを言ってのけるレオンスは爽やかな笑顔を浮かべた。
無意識でやっていると分かっているが照れてしまう。
頰に熱が帯びるのを感じながら「ありがとうございます」と顔を逸らした。
「アリアの行きたいところに連れて行ってやろう。帝都から離れたところでも良いぞ」
「日帰りじゃないと駄目じゃない」
「転移魔法を使う」
転移魔法は魔力消耗が激しい魔法だ。転移する距離が開けば開くほど身体への負荷が大きくなる。
いくらレオンスの魔力量が多くとも無理をさせたくはないのだ。
首を横に振って「近場で良いわ」と答える。
「遠慮しなくて良いぞ?」
帝国内で行きたいところはあるけど今すぐ行きたいわけじゃない。皇妃の公務として地方に行く機会もあるだろうし、そのうち行ける機会があるはずだ。
残念そうな表情を向けてくるレオンスの髪を撫でながら「大丈夫よ」と笑う。
深く溜息を吐いて肩に寄りかかってくる彼に首を傾げた。
「アリアは無欲過ぎる。もっと我儘を言ってくれ」
「そう言われても…」
私は無欲な人間じゃないし、我慢をしているわけでもない。
望むもの全てをレオンスが与えてくれるのだ。
満たされている状態だから我儘を言う必要がないだけ。むしろ甘やかしてもらい過ぎだと思うくらいだ。それを全く分かっていないレオンスは面白くなさそうに唇を尖らせた。
「十分甘やかしてもらっているわ」
「甘やかし足りないぞ」
どれだけ私を甘やかすつもりなのか。レオンスに甘え続けていると駄目人間になってしまいそうだ。
ぐりぐりと額を押し付けてくる彼の髪を撫でながら「レオこそもっと甘えてよ」と言葉を返す。
年下だけど妻なのだ。これくらい望んでも許されるだろう。
「十分甘えているぞ」
「もっと甘えて欲しいの」
「これ以上甘やかそうとするとは。アリアは俺を駄目人間にする気か?」
拗ねた顔をするレオンスの額にキスを落として「お互い様よ」と笑いかける。
擽ったいのか身を捩り、離れていく。最近自分から触れる機会が多くなった気がする。
ちょっとはしたなかったかしら。
流石に嫌がられたかもしれないとレオンスを見ると顔を手で覆い隠し、深く溜め息を吐いていた。
「アリアが可愛過ぎて辛い…」
耳まで真っ赤にしているレオンス。照れているのが丸分かりだ。
嫌がられているわけじゃなさそうで安心する。
一線を越えたというのに額へのキスで照れるとは可愛らしい人だ。黒髪から覗いている形の良い耳に触れると熱を帯びていた。拗ねた声で「あまり見るな」と言われてしまう。
「それでご両親への挨拶はいつにする?」
このままでは話が進まないと思って尋ねると「どっちで良いぞ」と返されてしまう。
明日挨拶ついでにどこかに遊びに行って、明後日は丸一日のんびり過ごすのが良いはず。
「明日行きましょう」
「分かった」
明日の予定も決まったし、今日は早めに寝た方が良いだろう。
さっき起きたばかりで眠くないけど。
レオンスに「今日は早めに寝ましょう」と声をかけると何故かキスをお見舞いされた。
体重をかけられてそのまま倒れ込む。
「れ、レオ、なにしているの?」
「夫婦の営みだ」
「え?」
今日もするの?
驚き戸惑っている私にレオンスは「無理はさせない」とワンピースを捲り上げようとくる。
「いや、あの…!今日は無理だから…」
「嫌なのか?」
傷付いた表情を向けられて胸が痛む。
ただ昨日の今日であの激しい行為をするのは少しだけ辛いものがある。
「あ、明日の夜いっぱい付き合うから…」
言ってから失言だったと気が付いた。
レオンスを見上げると嬉しそうに笑う。
「昨日無理をさせてしまったからな。今日はやめておこう」
「ありがとう…」
「その代わり明日はたくさん付き合ってもらうからな」
明後日もベッドで過ごすことになりそうね。
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