落とし穴

 ニーナ:ん?w気になる話題を提供したつもりだが、食い付きが悪いなwww

 

 質問の意図を読めず、困惑を続ける俺にニーナは言葉を投げ続ける。

 

 ニーナ:仕方ねーなwww優しい俺様が龍種に進化できる条件のヒントを教えてやるよwww

 

 ヒント?

 

 魔王(龍種)に進化する条件は、魔物を魔王自らの手で100体倒すこと。

 

 しかし、この条件は知識がAランクに成長して初めて知ることができる知識だ。ニーナが自己申告どおりのBランクであれば、知ることは叶わない。

 

 ということは、ニーナは先ほど嘘をついたのか……もしくは、俺と同様に知識Aランクの配下を所有している……の、どちらかとなる。

 

 何だ? ニーナのこの言葉遊びの意図は何だ?

 

 ニーナ:んじゃ、ヒントなwww鯉は滝を登ると龍になる

 

 ――?

 

 このヒントから正解を導くことは不可能だ。

 

 何だ? 何が言いたい? 俺に何を言わせたい?

 

 サブロー:ふざけてるのか?

 

 そんなニーナに対しての俺の答えは、怒りだった。

 

 ニーナ:お?wやっと反応があったなwwwふざけてねーよwww鯉の滝登りとか竜門とか知らねーの? www

 

 サブロー:もう一度聞くぞ? ふざけてるのか? お前は何がしたいんだ?

 

 ニーナ:ヒューwww寂しいねぇwwwならば、言おうか。ふざけてはいない。それより、サブローの答えはそれ・・でいいのか?

 

 ――?

 

 サブロー:何が言いたい?

 

 ニーナ:サブローの答えは『ふざけてるのか?』でいいのか? 何も知らないなら『どういう意味だ?』じゃないのか?

 

 ――!

 

 無駄に草を生やしながら、俺の油断を誘った……?

 

 ニーナ:ひょっとして、サブローは魔王(龍種)の進化条件を知ってるんじゃないか?

 

 クソッ……どうする?

 

 とぼけるか? それとも、敢えて認め、俺の知識がAランクであるとミスリードを誘うべきか?

 

 サブロー:知っていたら、どうする?

 

 ニーナ:でも、サブローの知識はAランクじゃないだろ

 

 ――!

 

 心臓が掴まれたかのように、飛び跳ねた。

 

 なんだ? ひょっとして、このチャットアプリにウィルスでも仕込まれていて……俺のステータス情報が流出してるのか……?

 

 ニーナ:言葉遊びは終わりだ。本題に入ろう。俺様の知識がBランクというのは事実だ。しかし、知識Aランクの配下がいるから、魔王(龍種)の進化条件を知っている。サブローも同じだろ?

 

 何だ……何て答えるのが正解だ?

 

 俺はニーナの言葉の意図が相変わらずに読めず、困惑する。

 

 ここまで見透かされているなら、隠すだけ無駄か……。

 

 サブロー:そうだ

 

 俺はニーナの推測を肯定した。

 

 ニーナ:もう一度聞く、サブローの知識はいくつだ? 理由も欲しいなら答えるが、必要か?

 

 サブロー:理由を教えてくれ

 

 ニーナ:俺様……いや、魔王ミユと魔王シオンは同盟を結んでいる。そして、うちはこの関係は非常に重要であると認識している。望むなら、言葉……いや文字にして答えると、魔王ミユは魔王シオンを信頼している

 

 サブロー:嬉しい言葉だが、理由になっていない

 

 ニーナ:焦るな。うちは魔王シオンとの同盟関係を重視しており、魔王シオンを信頼している。だからこそ、盟友である魔王シオンに助言を送りたい

 

 助言……?


『言ってみろ』と一度入力し、削除。

 

 サブロー:教えてくれ

 

 そして、正しい言葉で入力し直した。

 

 ニーナ:慎重なのはいいことだ。この際、貴方の知識がいくつなのかは、問わない。但し、この助言は受け入れて欲しい。知る・・ことと理解・・することでは雲泥の差が生じる

 

 知る・・ことと、理解・・すること……?

 

 サブロー:もう少し、分かりやすく教えてくれないか?

 

 ニーナ:知識を成長させると、この世界の新たな仕組みが頭の中に直接インストールされる。全く知らないことなのに、ソレは一般常識のように……昔から知っていたかのように

 

 んー、わからないような……わかるような……。

 

 サブロー:他者から聞くことは知ることで、自ら知識を成長させて得たソレは理解になると……いうことか?

 

 ニーナ:簡単に言うとそういうことだ。そして、理解している知識と知っているだけの知識は、使う者によって大きな差が生じる

 

 サブロー:つまり、俺は知識を知っているだけで、理解してない……と言いたいのか

 

 ニーナ:バカにしている訳ではない。仮に知った知識だとしても、教養を深めることで理解に至る。そして、うちから見るとサブローはバカではない。むしろ、理知的な部類だと評価している

 

 サブロー:ありがとうとでも言えばいいのか?

 

 ニーナ:誤解しないでほしい。そういうつもりで言った訳ではない。うちが言いたいのは、サブローが理知的な魔王と評しているからこそ、違和感を覚えたのだよ

 

 サブロー:違和感?

 

 ニーナ:そう。チグハグと言えばいいか……サブローほどの頭脳があれば、対処できるであろうことをしていない。そんな現象をチラホラと観測できる

 

 サブロー:例えば?

 

 ニーナ:例えば、そうだな……今回の件でいえば、【統合】

 

 サブロー:【統合】? たしか、支配領域を合併させる行為だったか?

 

 ニーナ:その通り。【統合】とは今ある支配領域を合併させるスキルだ。統合にはメリットとデメリットが様々生じる。最初はデメリット部分ばかりに目がいくが……理解していれば、大きなメリットに気付くこともできる

 

 【統合】のメリットとデメリット……?

 

 俺はニーナの言葉を受けて、考えるが……何も分からない。

 

 ニーナ:なるほど。シオンの知識はC未満か

 

 ――!

 

 反応に遅れたことで、失敗したようだ。

 

 こうなると、正直に話すのもありか?

 

 サブロー:俺の知識はEだからな

 

 ニーナ:お? wようやく本音を見せてくれたかwww

 

 サブロー:本音で話した瞬間にニーナになるのかよ

 

 ニーナ:シリアスモードは得意じゃなくてなwww

 

 サブロー:俺はシリアスモードのニーナのほうが好きだけどな

 

 ニーナ:おいおいwwwどストレートだなwww俺様の中身がいくら超絶美人だからって惚れるなよwww

 

 サブロー:ほざけ。そんなことより、なんで急にこんな話をしたんだ?

 

 ニーナ:んー、話題の提供?www後は、サブローちゃんの大好きなシリアスモードの俺様の言葉で言うなら……魔王シオンはうちが見込んでベットした魔王だから、だなwww

 

 サブロー:なるほどな。期待を裏切らないように精々頑張るさ

 

 ニーナ:おうwwwがんばれやwww

 

 本当に腹の中が読めない奴だ……。


 途中ストレスも感じたが、結果的に有意義な時間となったチャットを終えた俺は、内政業務に戻るのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ダンジョンバトルロワイヤル〜魔王になったので世界統一を目指します〜 ガチャ空 @GACHA-SKY

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ