新たな配下①
「どうする?」
「……何が?」
「お前の配下の生死と、お前の未来だよ」
「あーしに何を言わせたいの?」
魔王サラは憎悪の視線を絶やさぬまま、不承不承に問いかける。
「俺の眷属になれ」
「あーしに眷属になれと?」
《降伏》でもいいが、【真核】を用意させるのは手間だ。侵略者を配下にするのは眷属にするのが手っ取り早い。
「どうする? 答えが10秒遅れる度に、そこの変態がお前の配下の血を啜る」
「――な!? ありえんてぃ!? マジ悪魔!」
「悪魔じゃねーよ。その王――魔王だよ。っと10秒だな。サブロウ、《吸収》を許可する」
「シオン様のご命令とあらば……このダークネス・ドラクル三世、謹んでお受けいたす……いっただきまぁす!」
サブロウは変態力全開で、一人の女性エルフの首筋に喰らいつく。
「嫌、嫌、嫌ぁぁぁああああ!?」
女性エルフの悲鳴が周囲に響き渡る。
「うむ……美味。お主さては処――」
――黙れ!
脅しとしては十分な効力を発揮しているサブロウだが、これ以上の変態発言は俺の配下へ下る決心を揺るがしかねない。
「で、どうする? 10、9、8,7……言い忘れたけど、あいつは男もイケるぞ?」
俺はカウントダウンしながら、冷たい視線を美麗のエルフの騎士へと向ける。
「――な!? 我輩は――」
――黙れ!
いらぬ口を開こうとしたサブロウを強制的に黙らせる。
「っと、3、2――」
「わかった! わかったし!」
俺の口から洩れる恐怖のカウントダウンは、悲鳴にも似た魔王サラの言葉に遮られる。
「ん? 何がわかったのだ?」
「……眷属になる。あーしはあんたの眷属になるよ」
口の利き方がイマイチだ。もう一度サブロウを
「あーしはあんたの眷属になる。でも、一つ、一つだけ願いを聞いてくれないか?」
「願い? 言ってみろ」
「あいつの……あの変態の配下に付かせるような真似だけはしないで!」
魔王サラは軽蔑と憎悪の混ざった視線をあの変態――サブロウへと差し向ける。
「わかった。約束しよう」
条件としては格安だ。俺は魔王サラの願いを快諾した。
「――な!? 我輩との約束は?」
「知らん。約束をした記憶もない」
「そ、そんな……力を発揮すれば、エルフを我輩のハーレムメンバーに――」
――黙れ!
本気で記憶にない約束を語りだすサブロウを強制的に黙らせる。
「約束は守れよ……。早くあーしを眷属にするし」
魔王サラは目を瞑ると顎をあげた状態で、俺の前で片膝を付く。
「……?」
「ほら! 早くするし! 秒で終わらせるし!」
「……何をしている?」
「何って、あーしを眷属にするんでしょ! 早く《盟約》を済ませるし!」
魔王サラは顔を赤面させながら、早口で捲し立てる。
「シオン様。よければ、我輩が見本を――」
――《ファイヤーランス》!
なぜかキリッとした表情で近寄ってきた
「魔王は進化した種族によって眷属にする方法は異なる。知らなかったのか?」
「し、知ってたし! 試しただけだし!」
魔王サラは狼狽しながら早口で答える。
「俺の場合は《
俺は【血の杯】を魔王サラに差し出し、脅しの意味を込めてコンガリと焼けたサブロウに視線を送る。
「飲む! 飲むから! いちいちあの変態をけしかけるのはやめるし!」
魔王サラは意を決した表情で手にした【血の杯】を一気に喉に流し込む。俺は魔王サラが【血の杯】を飲み干すタイミングに合わせ、魔王サラの頭上に手を
――《
淡い輝きが魔王サラを包み込み、輝きは緩やかに収束する。
自分の身に起きた現象を確認するように、自身の手や身体を見回す魔王サラを尻目に、俺はスマートフォンに映し出された画面を確認した。
『 名前 :サラ=シオン
種族 :エレメントエルフ
ランク:B
LP :20/120
肉体 :D
知識 :C
魔力 :B
特殊 :四大元素強化
弓技 (E)
炎魔法(上級)
水魔法(上級)
氷魔法(中級)
風魔法(上級)
雷魔法(中級)
土魔法(上級)
多重詠唱
省略詠唱
風の調べ
編成 :エルフロード *1
スナイパーエルフ*3
エルフ *10
ダークエルフ *5 』
魔王サラは強力な敵であったが……相変わらずステータス画面で見るとパッとしないのはなぜなのだろう? 恐らく表示されるステータスが3項目だけで、Dが目立つのが要因だろうか?
と言うか、こいつは……。
「何だよ? あーしの顔をジロジロと……」
「いや、お前ってダークエルフじゃなかったのか」
「お前言うなし! あーしはエレメントエルフだし」
「その割には肌の色が……」
「は? ありえんてぃ! あーしなんてまだまだホワイトだし!」
いや、どう考えてもホワイトじゃないだろ。憤慨するサラを見て、思わずため息を漏らした。
「シオン様。やはり、我輩の予想通り……敵、いや! 今は同胞となったサラはギャルでしたな」
サブロウが鼻の穴を膨らませて、勝ち誇る。ってか、こいつ復活日々早くなってないか? 吸血種なのに炎耐性を自力で習得したのか?
「は? あーしはギャルじゃないし! 魔王だし!」
「魔王でもないけどな」
「そうか、魔王じゃないのか……サゲテンだよ」
魔王と言う立場を失ったサラのテンションが明らかにダウンする。
「まぁ、お前……じゃなくて、サラたちの運用についてはヤタロウたちと相談して決めるとするか」
「我輩の配下になるという可能性は……」
「俺に約束を破れと?」
「我輩との約束――」
「――《ファイヤー――》
「ハッハッハ! 冗談ですぞ! 我輩の操はすでにカノンたんに――」
「この人死なないかなぁ?」
「お!? 可愛い妖精! あげぽよぉ!」
サブロウの言葉は絶対零度の視線を宿したカノンの言葉に遮られ、カノンの姿を見たサラは目を輝かせて、カノンに近づく。
サラたちの運用方法か。
出来れば侵略組に組み入れたいが……既存の侵略組に組み入れるべきか、リナ部隊、クロエ部隊に続く第三部隊を新規に立ち上げるべきか。
一度戦力の整理をするか。
俺は更なる勢力の拡大を狙って、戦力の整理をすることを決めたのであった。
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