Episode1
初めての防衛
そして、訪れた運命の日!
………………。
………………。
………………。
特に何も起きなかった。
そりゃそうだ。
今は【ロウ】――人類が【世界救済プロジェクト】の説明を受けている真っ最中だ。
擬似的平和解除! と同時に襲撃! 何てことは起こりえるはずがなかった。
試しに某匿名掲示板を覗いてみれば――
35 名無しの冒険者 ID:roaejdir
うはwww 天から声が聞こえてきたwww
どうやら、黒幕は支配領域以外の全ての地域で、同時に説明をしているようだ。
1時間が経過した。
黒幕による【世界救済プロジェクト】の説明は終了したようだ。
ネットニュースには、今回の説明の概要が記事として掲載されている。
俺が受けた説明と違う点は――『世界は未曾有の危機です! 世界を脅かす魔王を討伐しよう!』というフレーズくらいだろうか?
実際に支配領域の外側は土地不足、食糧不足といった未曾有の危機に陥っていた。
いつ侵略してくるんだろ?
俺はヒマを持て余していた。
◆
103 名無しの冒険者 ID:aoefhns
俺のクラス戦士www
106 名無しの冒険者 ID:qksufrj
俺は魔法使いwww テラ当たりクラスwww
113 名無しの冒険者 ID:pkejusn
僧侶だわ
121 名無しの冒険者 ID:heirofk
冒険者だったwwwちょっと冒険してくるwww
132 名無しの冒険者 ID:xnhdirr
俺遊び人www
134 名無しの冒険者 ID:jsheuao
>132 嘘乙
137 名無しの冒険者 ID:djwiaie
んじゃ、俺自宅警備員w
140 名無しの冒険者 ID:uayejri
>137 イ㌔
278 名無しの冒険者 ID:wioeofj
ちな、ステータスは? 俺、肉体G 知識G 魔力F
292 名無しの冒険者 ID:mawordu
ステータス3種類とかwww手抜き過ぎwww
ちな、肉体F 知識G 魔力G
304 名無しの冒険者 ID:zsddjri
俺の知識がHな件
306 名無しの冒険者 ID:bjseihf
>304 イ㌔
匿名掲示板は、ステータスの件で盛り上がっていた。
精査した限り、【ロウ】側のクラスは戦士、魔法使い、僧侶、冒険者の4種類。遊び人、自宅警備員、勇者、侍などの書き込みもあったが、ネタ臭かった。
ステータスは肉体と知識と魔力の3項目のみ。値はF~Hのいずれかであった。
掲示板を眺めていると、外の世界は本当に危機的状況なのだろうか? と思った。
そして、大変革から8時間後。
――ビィィィィィ!
スマートフォンが激しい電子音を奏でた。
スマートフォンには――『侵入警報』の四文字が表示。
俺は急いでスマートフォンを操作して、ダンジョンの入口の様子を確認する。
自衛隊?
支配領域の入口には、迷彩服を纏い、重火器を構えた12名の人間が映し出された。
俺は緊張から生唾を飲み込む。
侵入者は互いに背を合わせ、一歩ずつ慎重な足取りで歩みを進める。
侵入者が十歩ほど進んだ先には、3つの直径80cmの水たまり――スライムが待ち構えていた。
俺は初めての配下の戦闘に胸が高まる。
『隊長! 前方に怪しげな物体を発見!』
『総員! 構え!』
ふよふよと動く三体のスライムを目前に、12名の侵入者は銃を構える。
『――撃てぇぇぇぇ!』
オーバーキルだろ……と思えるほど、銃弾の雨をスライムへと降り注ぐ。
耳を
侵入者はハンドサインで、目標物――スライムを確認。
『――なっ!?』
『後退! 後退せよ!』
煙が晴れると、そこには変わらぬ姿でふよふよと佇む3匹のスライムが、溶解液を侵入者へと発射する。
『うぁぁぁぁ!?』
『ば、化け物ぉぉぉぉ!?』
そして後方からは入口付近に控えていたラットの群れが銃口の音に気付いて、侵入者へと押し寄せる。
錯乱した侵入者が放った乱射が、跳弾となって味方の侵入者へ当たり、倒れた侵入者にスライムが覆い被さり、更にはラットも押し寄せる。
『退け! 退けぇぇぇぇ!』
入口へと一目散に走り出す9人の侵入者と、スライムとラットの餌食と化した3人の侵入者。
まさかの敗北要員として配置したスライムとラットが勝利を収めるという結果で、俺の支配領域の初陣は幕を閉じた。
現代兵器――銃火器の類いは効かないって黒幕は説明してないのか?
勝因は単純に敵の装備構成だ。
配下及び魔王である俺には銃火器の類いは効かない。
侵入者のステータスは不明だが、恐らく殴れば勝てたと思う。
少なくとも、最初の12対3の状況であったなら、100%勝てただろう。
9人の自衛官を撤退させ、3人の自衛官を倒してしまった訳だが……その後に続く侵入者は現れるよな?
宝箱の位置をもう少し入口に近づけるべきか?
思いもよらぬ結果に俺は戸惑うのであった。
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