終わりのはじまり


 魔王生活30日目。


 約定の時まで、残り24時間。


 アホな魔王達の情報漏洩により、世論は打倒魔王へと傾倒していた。


 明日になれば、俺の支配領域に【ロウ】――人類が攻め入ってくるだろう。


 魔王=悪なのだから。


 全ての人類から【カオス】の人間――魔王が人間の頃だった記憶が消失している。


 人類は、正義という大義をもって魔王を討伐するだろう。


 元人間であるという事実も知らないから、罪悪感もなく魔王を討伐するだろう。


 巫山戯るな! 俺は絶対に生き抜いてやる! そして自由を手にするのだ!


 正義感を振りかざす人類も、自分勝手な魔王も知ったことか!


 俺は自分の為だけに、行動しよう。


 侵略者を迎え入れる準備も万全だ。


 配下はスライム300体。ラット300体。バット100体。ウルフ200体。ゴブリン100体。コボルト50体だ。


 ゴブリン100体の内訳は、50体はナイフ(錬成CP2)を装備、20体は鉄の斧(錬成CP10)と皮の鎧(錬成CP5)を装備させ、15体は木の弓(錬成CP5)、12体は鉄の弓(錬成CP10)を装備させ、3体は――『反則ゴブリン』(錬成CP200)だ。


 コボルト50体の内訳は、27体は鉄の剣(錬成CP10)と革の鎧、20体は鉄の槍(錬成CP10)と鉄の盾(錬成CP10)と鉄の鎧(錬成CP10)。1体はシルバーソード(錬成CP100)とシルバーシールド(錬成CP100)とシルバーヘルム(錬成CP100)とシルバーアーマー(錬成CP100)。1体はシルバースピア(錬成CP100)とシルバーシールドにシルバーヘルムにシルバーアーマーを装備させた。


 他に侵略者を釣るための餌として、錬成CP50の中から黒鉄の剣、黒鉄の斧、黒鉄の槍、黒鉄のインゴット*3を錬成した。


 後は、雰囲気+利便性を重視して玉座や、【真核】を収める魔導具の結界、切り札として使い捨ての魔導具を数種類錬成。余ったCPは支配領域を少し華やかにするのに使用した。


 これで、俺の残りCPは0。明日には240になるが、それはケースバイケースで使用することにした。


 スライム、ラットは言わば餌だ。支配領域の入口付近に配置し、侵入者を釣る。


 1kmほど進むと、宝箱が設置されており、そこにはガーディアンとして、ナイフを装備したゴブリンを三体配置した。


 宝箱の位置から奥へと進むと、バットやウルフが登場。


 中腹まで進むと、弓を装備したゴブリンが待ち構えており、一斉射撃にて侵入者を牽制。出来れば、ここで引き返してくれると嬉しい。


 そして、生き残った侵入者は俺の支配領域を『弱いモンスターがいて、豪華な宝がある』と宣伝してくれればベストな結果となる。


 仮に、ゴブリンの弓矢を超えたら――コボルト軍団が対応。


 無事に最奥まで辿り着いたら、全身シルバーシリーズのコボルト2匹と魔王である俺がお出迎えとなる。ちなみに、魔王よりもコボルトの方が強いかも知れない。


 これで、負けたら……もう無理だ。


 俺の中では考えられる最高の布陣だ。


 ちなみに、支配領域内であれば全てスマートフォンを利用したライブ映像で確認が出来た。


 俺は何度も何度もリハーサルを行った。


 最初は醜悪に感じていた配下達も今では少し愛嬌を感じるようになった。


 ――擬似的平和(残り時間0h)


 そして、運命の日を迎えた。



  ◆



 あの日――全世界を巻き込んだ『大変革』から一ヶ月が経過した。


 俺は今、自分の支配領域であるダンジョンの最奥にて、来たるべき侵攻に備えていた。


 俺の傍らに控えるのは、腰元に銀の剣を備えた半犬半人のモンスター――コボルト。


 目の前には邪悪なる妖精――ゴブリンの集団が、俺の号令を待っている。


 来るがいい――自称勇者の集団よ!


 俺はあの日、自由と混沌――そして創造を求めた。


 まずは、侵攻してくる勇者を撃退しよう。


 俺はこの世界を生き抜いてみせる。自由を必ず手に掴む。


 自由への切符! その一歩として、この地――『金沢市』で最強の魔王になろう!

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