第317話 VSヴァリス(6)

 ヴァリスと戦い続けて30分位が経過した。

 決定打も攻略法も見つけられずに時間を浪費した。

 まずいな・・・そろそろなんとか活路を見いださないと・・・


 僕は傷をかなり負ってた。

 骨折も何度かした。

 でも、魔法で回復しながら戦っているから、見た目はそこまででは無い。

 だけど、魔力はかなり減っている。

 これ以上回復に魔力を使うのは、止めをさせなくなるかもしれない。


「ふははははは!!どうしたどうした!そんなものか!!」


 クソッ!

 しかし、打つ手が無いのも事実・・・いや、本当にそうなのか?

 僕は思い返す。


 ヴァリスを斬りつけた時に、傷の治りが速い所と遅い所があった。

 あれはなんだ?

 どう言う理由で?

 多分、そこが勝機だと思う。


「こちらから行くぞ!!」


 ヴァリスがまた突っ込んできた。

 僕は躱しながらも斬りつけ、打ち、魔法を放つ。


 ヴァリスもまた、自分の防御力と再生能力に自信を持ったのか、まともに食らいながらでも、カウンター気味に攻撃してきた。

 こういう所がつけいる隙だな。

 こいつは確かに強いけれど、戦士じゃない。

 あくまでも研究者だ。

 だから、攻撃方法は単純だ。

 回避も防御も稚拙。

 僕が、今まだ生きていられるのがその証拠。

 ただ、攻撃力だけはとても高いからそこは要注意だ。

 集中力は切らせない。

 でも、それもずっともつ訳じゃない。

 今のうちに、解析を終えないと。


「はぁ!!」


 僕はまた刀を振るう。

 ヴァリスは腕と、胸を斬られるけどお構いなしに攻撃して来る。


「そらぁ!!」

「ぐぁっ!!」


 ヴァリスのパンチがまともに顔面・・・左頬に入った。

 鼻血が流れる。

 僕は頬を抑えながらもヴァリスを観察する。


「ははははは!!そんな様子じゃそろそろ殺してしまうぞ!?」


 無視。

 こいつは僕を傷つけるのに酔ってきた。

 そこも隙になる。

 狙うは大振りな攻撃だ。


 それよりも・・・やっぱり、胸に比べて腕の切り傷は治りが遅い。

 何が違う?

 何が・・・

 

 そうか!!

 

 僕は思い出す。

 ヒントは、黒瀬を倒した時だ!

 あの時、僕は黒瀬に浄化魔法のサンシャインを放った。

 奴はそれを受けて元の姿に戻った。

 おそらく、肉体が完全に変質しているわけではなく、魔力や神力が受肉し、鎧の様に身体を覆っているんじゃないか?

 だから、あいつの力の元がある限り、すぐに元に戻るんだ!


 だけど、あいつの力の元は、対神魔法で封印した。

 本来であればそんな事はありえない。

 

 ここから類推するに、おそらくさっき打った薬で封印に少し穴が開いたんじゃないだろうか?

 あいつの力の元は胸にあった。

 だから、胸から遠い場所は、胸付近よりも治りが遅いんだ!!


 これは突破口だ。


 でも、サンシャインを直接放っても、おそらく黒瀬と違って元に戻すほどのダメージは与えられない。

 密度がかなり違うからね。

 だから・・・


 僕は魔気合一を使う。

 そしてそれを刀に乗せた。


 この一刀で見極める!!


「なんだ?死ぬ覚悟でも出来たのか?じゃあ、望み通り殺してやる!!」


 ヴァリスが突っ込んでくる。

 バカ正直に突っ込んでくれてありがとう。

 やっぱりお前は戦う者じゃない。


「死ね!!」


 ヴァリスが、僕の胸にパンチを打ってきた。

 これは敢えて受ける!!


 僕は胸に全身の力を使って硬気功でパンチに備えた。


「ぐふっ!!」


 直撃。

 凄まじい衝撃だ!

 口から血が溢れる。

 ベキベキと骨が折れる音が聞こえた。

 内臓にもダメージがある。


「ひゃははははは!もっと苦しめ!もっとだ!!」


 ヴァリスが僕を痛めつけようと、腕を振り上げて更に攻撃しようとしてきた。

 大振り!ここだ!!


 僕は溜めていた力を一気に放出する!


「廻里流剣術奥伝『不知火しらぬい』!!」


 僕は気合を入れるために、口から血が飛び散るのも構わず叫ぶ!


 神速。

 五芒星を描くように斬りつける。

 右腕

 右足

 左腕

 左足

 そして最後に首


「あ!?」


 ヴァリスが驚愕の声を上げる。

 四肢と首が斬り飛ばされた。


 まだ!

 まだ再生する!!

 ここで、決めるんだ!

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