第291話 修行
「こういう時は、まず、周りの安全を確保するため、一度、俯瞰できる位置に移動するか、全方位を吹っ飛ばせる技を使うんだ。そうすりゃ残った奴だけ注意を払えばいいからな。と、言っても油断していいわけじゃない。遠距離から狙って来るやつもいるからな。まずは一体ずつ倒して行けばいいのさ。」
「「「「「「はい!!」」」」」」
シルヴァさんの指導を受けているのは、五剣姫とガーベラだ。
結局、カエラさん達も、参戦したいと指導を願い出てきたんだ。
シルヴァさんの剣技はかなりのものだった。
みんな真剣に講義を聞いている。
「いいか?魔法を使う者で重要なのは、どんな苦境でも、とにかく最後まで冷静に見極める事だ。何せ、近接組と違って、比較的距離を開けて戦っているわけだからな。近接組では気づけ無い事も、遠距離組が気づけなきゃいけない。それに、魔法の詠唱には集中力が段違いだからな。その時の精神状態が、そのまま威力にも反映する。常に冷静、その上で怒りなんかは魔法に上乗せするイメージだ。だからと言って、近づかれた時に、戦えないじゃ駄目だけどな。切り札はいくつか持っとくように。」
「「「「わかりました。」」」」
こっちは、マリオンさんの講座。
ダークエルフのマリオンさんは、やはり魔法に優れている。
リディア、シエイラ、メイちゃん、レーナにはいい先生だ。
「いいですか?あなたはかなり筋が良いようです。しかし、持ち前のスピードも、相手が上回っていた時に対応できないのではいけません。あなたの課題は、その足技を更に昇華する事。具体的には、どのような体勢でも、同じレベルの威力を出せるようにする事です。それと、手技もいくつか持っておくといいですね。エスメラルダさんは、竜族という事もあり、威力、防御力共に高水準です。ですが、だからこそ、隙が多いです。もう少し、防御とカウンターを意識して見ましょう。」
「おう!わかったぜ!」「わかりましたわ!」
「がんばって下さい。それえではもう一度行きますよ!」
エルさんの相手はアイシャだ。
獣人族のエルさんは、主に体術で戦うらしく、アイシャとエスメラルダに戦闘スタイルが似ている。
だから特訓相手には丁度いいみたい。
「流石はエルフ族ですね。魔法も弓もかなりの腕前です。ですが、まだ正直すぎます。例えば、一矢で複数を狙うだとか、遮蔽物を迂回して狙い撃つなども視野に入れましょう。それと、近接での薙刀はかなり良いと思います。出来れば、それに魔力を纏わせて振るえるともっと良いですね。桜花さんも、とても良くまとまっています。正直、かなりのレベルだと思います。あえて欠点を上げるとするなら、魔力の運用方法を考えましょう。どうしても剣士よりの思考に成りがちですね。」
「頑張ってみるわ。」「魔法ね・・・もう少し活用できるようにしてみるわ。」
最後は、フェオドーラさんだ。
彼女は、召喚前に日本に留学経験があり、薙刀を学んでいたらしい。
それを、こちらに召喚されてから、磨き上げたんだって。
それに、流石は元勇者だという事もあり、今でも桜花相手にアドバンテージを取らせない。
凄まじい技の切れだ。
一通り眺めていても、みんな充実しているだろう事がわかる。
「どうだ。みな強いだろう?」
「本当に強いね。びっくりしたよ。」
「何せ、我が鍛え上げ、激動の時代を乗り越えた者達だからな。戦闘経験も、かなりのものだ。そうそう遅れをとらんよ。」
「だろうね。」
ジードに師事して、何度も戦争を乗り越えたのであれば、そりゃ強いのも納得だよ。
しかし、ふと疑問が湧いた。
「にしても、これだけ強いなら、ジードが殺された時に、封印しなければ勝てたんじゃないの?」
「そうだな・・・正直五分五分だとは思うぞ。何せあの時は、敵は世界そのものだった。流石に四人増えた程度で、戦況が覆ったとは言い切れん。それに、フェオドーラに幼馴染と戦わせるというのも・・・な。」
「あ・・・そっか。」
「それに、シルヴァは魔族の姫だったし、マリオンは族長の娘だった。エルは所属していた国の騎士団長だったしな。それぞれ
「そうなんだ。それは難しいね・・・」
それでも、彼女たちは、ジードと共に戦おうと決意していたんだ。
それだけジードへの愛情が深かったんだね。
「さて、それでは休憩はこれまでとし、訓練を再開するとしよう。」
「よろしくお願いします。師匠。」
「うむ。」
僕は今、ジードの特訓を受けている。
僕の訓練内容は、対神兵装に慣れること。
僕の失敗は、既にジードに話してある。
ジードは、
「欠点に早めに気づけて良かったではないか。」
と、笑っていたけどね。
僕にとっては全然笑い事じゃない。
みんなを危険に晒しちゃったからね。
しかし、そんな時、僕の頭にコツンとジードの拳が当たった。
ジードを見上げると、
「お主の考えもわかる。だがな、失敗をいつまでも引きずったり、過剰に意気込んだりしても、上手くは行かぬ。前にも言ったが、対神兵装は心を平坦にするのが基本だ。余分なものを持ち込むのは良くない。失敗を糧にする、位の意識で良い。何せ本番はこの後なのだからな。」
そうか・・・そうだね。
ジードの言う通りだ。
幸い、僕は今回の失敗で、大きくみんなを傷つけることは無かった。
謝罪も済んでいる。
これ以上、負の感情を持って取り組むのは間違っているね。
「わかったよ。ありがとう。それじゃよろしくお願いします。」
僕とジードは、亜空間に移動した。
これは、ジードのスキルで作り出した世界。
壊れることは気にしなくていい。
「では、いくぞ!」
「はい!」
もっともっと強くなる!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます