第218話 竜の巣

 僕たちはそのまま山頂へ進路を取った。

 後ろから大規模な魔法を使ったような爆発音が何度も聞こえる。

 みんな頑張ってるな。

 僕も頑張ろう!


 山頂付近には竜が5匹ほどいた。

 全て黒いオーラを出している。

 鑑定!

【種族:飛竜種

    赤竜

状態:魔狂薬を摂取しており強化されている。中毒状態。魔狂薬の取り過ぎのため変色している。】

 やっぱりか!!

 本来は赤い竜鱗だろうに、魔狂薬の影響で黒くなってるのか。

 中毒状態みたいだし。


 僕たちが近づいて行くと、黒い竜の一体が睨みつけて来た。


『エスメラルダ!!貴様人族などに助けを求めよって!!やはり王族など軟弱よ!そやつもろとも食い殺してやるわ!!』

『ふん。その前に姫で遊ぶとしようぜ。ワグナが来る前じゃないと楽しめないだろ?』

『あいつはエスメラルダにご執心だったからな。』


『あなた達こそ恥を知りなさい!!』


 あまりに下衆い竜たちにエスメラルダさんが吠える!


『おいおい・・・キレイなキレイなお姫様がご立腹だぜ?』

『ぐわははは!まあいいじゃねえか。そのキレイなお姫様がどこまでもつか見ものだぜ!』


 ・・・人間も竜も下衆は変わらないな。


「は〜竜族って言ってもこんなもんか。」


 僕がため息まじりにそう言うと、5匹が一斉にこちらを向いて威圧してきた。


『なんだと!?たかが人族の小僧が高潔なる竜種を馬鹿にするのか!!』

「そりゃするでしょ。偉そうに言ってるけど薬でちょっと強くなっただけだし、薬に頼らなきゃ先輩竜にも勝てない。話してるのは下衆なことだけ。人間の下衆と何が違うのさ。」

『貴様あ!!』


 さて、煽りはこれくらいにしてっと。


「さっさとかかってこい三下。僕は怒ってるんだよ。薬に頼った強さなんて、頑張っているエスメラルダさんの足元にも及ばない事を教えてやる!エスメラルダさんは少し離れてて。」

『リョウマ様・・・』


 そして戦闘は始まった。


 僕は身体強化魔法を全開にする。

 しかし、魔狂薬の影響下にある馬鹿竜達は、僕の雰囲気が変わっている事に気づかない。


『GAAAAAAAAA!!!』


 大口を開けてバカ正直に突っ込んできた馬鹿竜。

 僕は少し右上に移動しそのまま横面をカウンターで殴りつけた。


『GYO!?』

「次は良い竜に生まれ変わるんだね。」


 僕はそのまま手刀で首を切断する。


『なっ!?』


 そしてそのまま動きを止めた別の竜の懐まで移動し、手のひらを当てる。


「遅いよ。ふん!」


 僕は空中に魔法で足場を作り、そこに震脚をしながら寸勁を放つ。

 その際に頸と魔力を同時に思い切り流し込んでやった。


 馬鹿竜は目、耳、口、等、ありとあらゆる穴から血を噴出させて落ちていった。

 よし!修行の成果が出ているな。


 そう、僕も、魔力と気を同時に使うコツを掴んでいた。

 実戦で使う時には溜めがいるので中々使えないから、次はこれをもっとスムーズにできるようにしなければ。

 とはいえ、今回の的は、凄くでかいからどうとでもなるんだけどね。


 そこで、ようやく馬鹿竜は僕が普通の人族ではないことに気づいたらしく、後ずさりし始めた。


「逃がすと思ってるの?」


 僕は生き残っている馬鹿竜の一匹に正対してストレージから刀を取り出す。

 そしてそのまま、その場で魔力を込めながら袈裟斬りに一回、返す刀で逆袈裟斬りで一回、水平に一回切る。

 感じ的には△形を作るような感じかな。


 馬鹿竜は両翼と両足を切り取られた。

 魔力で刀身を伸ばしてたんだよね。


『GYAAAAAAAAA!?』

「うるさいなぁ」


 そしてそのまま止めの突き。

 馬鹿竜の腹を突き破った。


「廻里流剣術鹿威しししおどし


 この技は鹿威し→四肢落としから来る怖い技だ。

 本来は一閃目で右腕、二閃目で左腕、三閃目で両足を落とし、最後に突きで心臓を一突きする。

 

『ば・馬鹿な』

『おい!やばいぞ!』


 馬鹿竜達が逃げ出そうとした。

 そうはいかない。


 竜たちは僕と反対方向に飛んだけどすぐに壁に激突した。 

 そうです、既にここは結界の中なのです。


「僕を殺さないと結界内からは出られないよ。」


 馬鹿竜達は絶望したようで明らかに焦っている。

 そんな隙だらけだと・・・


「来ないならこっちから行くよ。」


 僕は手のひらを向ける。


「オリジナル魔法『レーザービーム』」


 馬鹿竜の一体の顔を消し飛ばす。

 当然この魔法、僕も使えますとも。


『ヒィィィィ』


 馬鹿竜は既に戦意喪失している。


「おいおい・・・高潔なる竜ともあろう方が、下等な人族一人になんて様なの?」

『ゆ・許してくれ。』

「馬鹿だなぁ。自分たちはエスメラルダさんをどうしようとしてたのか忘れたの?自分がやられたら嫌なことをやっちゃいけないなぁ。下等な人族の子供でも知ってるよ?という事で・・・」


 僕は大上段に刀を構える。

 

『やめてくれ!やめ・・・』

「さようなら。次は相手を見てから喧嘩を売るんだね。廻里流剣術『烈』!」


 刀に力を乗せて一気に振り下ろす。

 馬鹿竜は縦に両断された。


 周囲にはもうエスメラルダさん以外の竜はいない。


「終わりましたよ。さあ!王竜様を助けにいきましょう!」


 そう言ってエスメラルダさんを見ると、エスメラルダさんは何故かモジモジ?してる?

 そして何かをブツブツ言っているけど、小さくてよく聞こえないな。

 なんだろう?


『・・・凄い・・・強い・・・格好いい・・・素敵だわ・・・まさか、まさかわたくし人族のリョウマ様に・・・どうしましょう?父様になんて言ったら良いかしら・・・』

「エスメラルダさん?」

『ひぐっ!?な、なんでしょうか?』


 なんか女の子からでちゃいけない声が出てたけど・・・


「ねぐらに入りませんか?」

『えっ!?ね、ねぐらに一緒に・・・ですか!?は、早くないですか?もうちょっと心の準備をさせて頂いても・・・わたくしはじめてですし・・・』

「?いえ、王竜様の救出に・・・」

『はっ!?そうでしたわ!ごめんなさい!すぐに参りましょう!!』


 なんだったんだろう?

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