第188話 戦争の経緯

 王様の発言に気を引き締める僕たち。

 

「今回の件はのう。舞台はネモス小国という小さな国じゃ。帝国は先日、ネメ共和国と戦争しておっての。そこを攻め落とした後、今度は隣接のネモス小国を標的としたというわけじゃ。」


 王様は語る。

 要約すると、

 ・ ネメ共和国は戦争に破れたが、上層部    

   はネモス小国に逃亡してきたらしい。

 ・ その情報提供で、帝国兵が強化薬のよ

   うなものを使用していたのが判明。

 ・ 軍を率いるのは、帝国の剣と呼ばれる

   帝国最強の男らしい。

 ・ 本来戦争では壊さないはずの教会を潰

   し、新たに華美な教会を立て直してい

   るらしい。

 ・ その教会では女神セレスとは異なる神

   を信仰しており、敗戦国は無理やり改 

   宗させられるとのこと。

 ・ 勇者が出てくるという噂があったが、

  戦場で勇者は発見できていない。


という事だった。

 事態を重く見た王様は、援軍として兵を送りたいが、帝国がこちらを攻めてくる可能性が否定できないため動けない。

 そのため、Sランク冒険者を複数有する僕たちシャノワールにお鉢が回ってきたわけだ。


 ここまで説明した時、王様は僕たちを見て、


「まさか、あの阿呆が詳細を書かずに招聘しているとは思わんかったのじゃ。あやつは招聘の意味を知らんかったのかのう。こちらはあくまでも頼む立場だと言うのにのう・・・あれで大貴族だというのだから情けない・・・すまんかった。」


 そう言ってもう一度頭を下げる。

 僕もこの王様を気に入ったし、そんなに頭を下げないでほしい。


「もう手打ちにしたでしょう?これ以上謝らないで下さい。それに今回の話は情報収集にも良さそうです。お受けしますよ。ついでにネモス小国を救ってきますね。」


 そう言って笑うと、王様は苦笑し、


「そう言ってくれると本当に助かるのぅ。謝礼は期待して良いぞ。じゃから無事に帰ってこい。またこうして茶会をしようぞ。お主らもの。」


 そう言った後アイシャ達にも笑顔を向ける。

 その顔は祖父が孫に向けるような顔だった。


「王様、そう心配しなくても大丈夫だぜ!あたし達ならな。どーんと構えて待っててくれよ。」

「そうです。メイ達に任せて下さい。」

「私もエルフ族として頑張るわ。だから安心してて下さいね。」


 アイシャ達も王様にそう言って笑顔を向ける。

 王様は嬉しそうに、


「おうおう。これだけの美女たちにそう言われたら信じるしかないのぅ。こりゃ次回のお茶会は気合を入れてうまいものを出さねばの。リョウマよ。頼んだぞ。この者らを傷つけさせるでないぞ。」


 当たり前さ。

 僕はもう皆を守ると決めてるからね。

 王様に言われなくても全力を尽くすさ。


「うん。任せて。向こうにはすぐに行けばいいの?」

「いや、先触れを出してから出発してもらう。話に聞いたお主らの馬車なら、7日もあれば着くじゃろうて。一応先触れは使い魔に送らせる予定じゃから、到着を逆算して・・・3日後に出発かの。供回りを選定せねばならぬしのぅ。」

「う〜できれば少数精鋭で行きたいので、一人か二人でお願いします。」

「そうじゃのう・・・」


 王様が考え込む。

 すると、


「王よ、お願いしたき事がございます。出来ましたらその供回り、私にして頂けないでしょうか。」

「ほう?お主がかの?」

「はい。私は五剣姫であることに胡座をかいていました。しかしそこのリョウマ殿に鼻っ柱をへし折られました。出来ましたら、今回の旅に同行させて頂き、鍛え直していただこうと思います。」


 そう言って頭を下げるウルトさん。

 でも、宰相さんが、


「私としては許可できませんな。王の身辺警護が薄くなる。他に適任者もおりませんし・・・」


 そう言って止めた。

 でもそこは豪快王様!


「ふむ。ウルトよ。リョウマと同行し、精進してこい。その間はなんとかしよう。」

「王!?私の話を聞いておられましたか?」

「宰相よ、この戦いで終わりではない。遠い目で見れば、ここでウルトが実力を上げることはプラスに働くはずじゃ。それにウルトには無理を言って近衛騎士をして貰っていた。ならば願いくらい叶えてやらねばのう。」


 本当にいい王様だな・・・

 すると、宰相さんは渋々、


「わかりました。ウルト殿、存分に強くなって来なさい。リョウマ殿、お願いできるだろうか?近衛騎士筆頭の切なる願いなのだ。」


 そう言って僕に頭を下げた。

 この人も良い人だったか・・・やっぱりこの国はいい国なのかもしれないね。


 僕は了承してウルトさんを鍛えるプランを考えた。

 ウルトさんは大喜びだった。


「よし!これで、グレイスにも対抗できるようになれる!待っていろグレイス!」


 僕達の話から現在のグレイスの実力を予想したみたいだ。

 ・・・任務そっちのけにはならないようにね。

 なんとなくこの人からはグレイスやアイシャ臭がする気がする・・・脳筋じゃないといいけど・・・


 そして僕たちは王城を後にし、準備を終え、3日後に城を出発するのだった。

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