第130話 突然の闖入者(2)

「・・・はぁ?」

 

 途端リディアから今まで聞いたことがないくらい低い声が漏れた。

 室内が十度くらい低くなる。

 ・・・寒いと思ったらリディアからめっちゃ魔力漏れてる!?

 やばい・・・超キレてる・・・


「寝言は寝てから言って下さい。何を言っているのです?私の結婚相手は私が決めるべきものです。あなたに言われてするものではないでしょう?」


「お前こそ何を言っている?貴族としての結婚とは家のためのものだろうが!!お前に自由に決める権利など無い!!それにこれはメイビス家次期当主として俺が決めたものだ!父上も了承済みのものだ!おとなしく指示にしたがっていろ!」


 リディアのお兄さん・・・もうアゼルでいいや。

 アゼルは馬鹿にしたような顔をしてリディアに怒鳴りつけた。

 ふーん・・・そういうスタンスなのか・・・


「・・・ほう・・・そのように言っていますが、お父様事実ですか?」


 リディアの『眼』がランランとしている。

 嘘は絶対許さないウーマンだね。


 アルザードさんは汗を流しながら、


「・・・いや、お前が幸せになれるようにだな・・・家格の高いものであればよいかと思ってだな・・・」


 しどろもどろとはこの事だ!と言わんばかりの回答だった。

 それを聞いて、リディアは立ち上がり、


「どうやら私はこの家にいる必要は無いようですね。何せ、本人の意思も確認せず勝手に縁談を進めるのですから。お父様お母様、今までお世話になりました。私は今日よりメイビスではなくただのリディアとして「待て!待ってくれ!!誤解だ!!」」


 リディアの離縁発言にアルザードさんが待ったをかける。

 リディアはそこでふと、レイチェルさんを見て、


「お母様は知っていらしたのですか?」

「ええ、知ってはいたわよ。ただ、反対もしていたけどね。リディアちゃんの意思を確認しなくてよいのかってね。でもこの二人が勝手に進めちゃったのよ。ちなみにゼパスも私と同じよ。」


 そこでゼパスさんが恭しく腰をおりながら、


「はい、奥様のおっしゃるとおりでございます。しかし、言い訳となってしまいますが、旦那様は、もう少し時間を見て話を進めようとされていました。勿論お嬢様のご了承を得た後で、です。しかし、アゼル様が言質を取ったとばかりにどんどん進めてしまい・・・」


「黙れゼパス!使用人風情が場をわきまえろ!!」


 アゼルは居丈高に言い放った。


 だんだんむかついてきたなこいつ。

 既に、アイシャと、グレイス、メイちゃんですら殺気が出てきている。


 これはちょっと頂けないなぁ・・・リディアが可哀想だ。

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