第129話 突然の闖入者(1)


 青年が激昂しながら飛び込んできた。


 リディアと同じ様に銀髪で、顔立ちはかなり整っている。

 身長もすらりと高く端的にいってもイケメンというやつだね。


「来客中だ。勝手に入ってくるな!」


 アルザードさんが怒鳴る。

 青年はそれを聞いて、一瞬固まるも、すぐに、


「それどころではないでしょう!?上手くいくそうだった縁談を突然ご破算にする!?俺がどれだけ根回ししていたか知っているだろう!?この縁談は我が家に必ずや利益を生むのだ!!いまさら取りやめられても困る!!」


と怒鳴ってきた。


 ふーん・・・想い人との縁談を取りやめられたのかな・・・

 そう思ってボケーっと見ていると、若干アルザードさんが冷や汗をかきながら罰の悪い顔をしている。

 レイチェルさんはため息をつきながら冷ややかにそれを見ていた。


 何かあったのかな?


「・・・お見苦しい所を見せて申し訳ありません。あれは私の兄のアゼル・リヒャルト・メイビスです。長男でもあります。」


と小声で教えてくれた。


 お兄さん・・・にしてはリディアの兄を見る目がきついけど。


「私には兄が二人いますが、長男は端的に言って俗物なのです。厳格なお父様も跡継ぎには甘いためそうなったのですが、常に利益のことばかり考えていて、傲慢であり、メイビスの使命などは二の次。見た目こそ優れていると言って良いのでしょうが、私は好きではありません。」


 なるほどね・・・馬が合わないからこそ、その視線なわけか。


 リディアのお兄さんはまだ続けている。


「いいですか!この縁談は必ず勧めさせていただきますので!先方も乗り気でもうかなり話は進んでいるのです!今更取りやめなど絶対にさせない!!」

「いいから黙れ!この場には客もいるのだ!!」


 アルザードさんが怒鳴ると、そこで初めて僕たちの方をちらり見ると、見下したように「フン!」と鼻息一つ。

 そして、


「冒険者風情などどうだっていいでしょう。お前達、さっさと帰れ。こちらは我が家の行く末を決める大事な話し合いがあるのだ!お前たちのような下賤の者の相手をしている場合ではない!父上、よろしいですね。」


 ・・・うわぁぁ感じわる・・・リディアが俗物って言ったのもよくわかるなぁ。 僕がドン引しながら見ていると、アイシャとグレイスから殺気が漏れていることがわかった。


 落ち着いて!どうどう!

 僕は視線で二人を諌める。

 しかし、


「お兄様。さっきから聞いていれば私の大切なお客様になんという言い草ですか。来客にそのような態度など恥を知りなさい!」


 リディアがブチギレていた!

 リディアのお兄さんはそこでようやくリディアに気づいたようで、


「おお!我が妹ではないか!喜べ!お前の嫁ぎ先が決まったぞ!!パムール伯爵の次男だ!この男は俺の親友と言っていい男だぞ!先方もメイビスの至宝と婚姻を結べると、かなり乗り気なのだ!利権をいくつも譲ってくれるらしい。我が家はかなり発展するぞ!!」


 そのように捲し立てた。


「・・・はぁ?」

 

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