第112話 朝が来て(3)

「メイちゃんにかかっていたのは呪いだ。だから普通の薬じゃ効かなかったっんだ。僕は呪いを解く『ディスペル』って魔法でメイちゃんの呪いを解いたんだ。」


 そう言うと、アイシャが、


「じゃ、じゃあ、もうメイは苦しまなくていいのか!?」


 と詰め寄ってきた。


「うん、もう心配ないよ。僕のスキルの『鑑定』でも呪い状態になってないからね。メイちゃんもアイシャもよく頑張ったね。もう安心していいよ。」


「メイ!良かった!!良かったよ!!!」

「お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!」


 僕がそう笑顔で言うと、アイシャとメイちゃんは泣きながら抱き合っていた。

 

 二人が落ち着くのは待つ。

 落ち着いた後、アイシャとメイちゃんは、


「リョウマ。ありがとう。本当にありがとう。」

「リョウマお兄さん。助けてくれてありがとう。」

と、頭を下げてきた。


「気にしないで。助けられて良かったよ。」

 そして、話を続ける。



「それでね、呪いにかかったのは、教会でだされた聖水のせいなんだけど、本当はそれは聖水じゃなくて呪水っていうんだって。」


 みんな目を見開いて驚いている。


「で、高価な薬ってのは、教会が出してる聖水、但し、女神セレスでは無く真神教徒が作った真神への祈りを捧げた聖水なんだ。この呪水と聖水は対になっていて、呪いを緩和させるには継続的に摂取せざるを得ないみたい。完治はしないんだけどね。だから多分金儲けのためにやってたんじゃないかな。」


 僕がそう言うと、アイシャは歯ぎしりして悔しがっていた。


「クソ!許せねぇ!!そんな事の為に苦しめてる奴らの何が救いをもたらす宗教だ!!」


 メイちゃんも悲しそうに、


「・・・純粋にセレス様を信仰してる人もいっぱいいるのに・・・酷い・・・」


 そうだね。

 やっぱり真神教は許せない。


「さっきも言ったけど、僕の目的にはセレス様の救出と、ヴァリスの討伐がある。だから、きっと、僕が苦しんでいる人たちの仇を取ってみせるさ。」


 そう言うと、アイシャとメイちゃんは、少し見つめ合って、お互い頷いた後、片膝立ちになり、片腕を地面につけた。


「リョウマ、狼人族は、受けた恩は命に変えても返すという掟がある。それに・・・可愛い妹を苦しめたけじめをつけてやりたいと思ってるんだ。どうかあたしをリョウマの旅に連れて行ってくれないか?」

「リョウマお兄さん。メイは、自分が苦しかったのを助けて貰った事も嬉しかったけど、本当は、メイを治す事で、苦労していたお姉ちゃんを助けてくれた事が一番嬉しいんです。今は弱いですけど頑張って強くなるので、お側に置いて下さい。」


 ええ!?

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