閑話 その頃の桜花(1)


 光が治まると、そこは何もない場所だった。

 私は、キョロキョロするけど誰もいない・・・何もない・・・

 怖くなって震えていると、どこからか、


「こちらです。こちらに来てください・・・」


 女性の声が聞こえて来る。

 とても弱々しい声だ。

 どうしよう・・・


「大丈夫です。こちらへ・・・」


 こうしていても仕方がない。

 女は度胸!

 私は声のする方へ歩いていく。


 どれくらい歩いたかわからない・・・

 1時間?2時間?それとも5分くらい?


 歩いていくと、そこには水色の髪をした美しい女性がいた。

 女性は長い髪、整った顔立ち・・・うわ!胸大きい!!のに腰も足もほっそい!!


 この人はリョウマに会わせてはいけない!!


 そんなふうに思いながらもっと近づく。

 すると、女性の両手両足に枷のようなものがはめられ、何もない空間から伸びている鎖に囚われている事に気づいた。


「こんにちは。」


 女性は弱々しい笑顔で挨拶してくる。


「・・・こんにちは。」


 とりあえず挨拶を返すと、女性は、


「警戒されていますね。無理もありませんが、時間もありません。単刀直入にお話します。私は、とある世界の管理者をしているセレスと申します。今は封印されているのでこのような格好で申し訳ありません。」


 封印されている?


「はい。同じ管理者の一人に不意をつかれ、今は封印中で満足に力を振るうことも出来ない状態です。」


 え!?今心を読まれた!?


「ええ、コレくらいのことであれば簡単に。話を続けますよ廻里桜花さん。」

「私の名前を知っているの!?」


「はい。あなたの身体から読み取らせていただきました。」


 ・・・神様か何かかしら・・・


「ええ、そう呼ばれることもあります。詳しくお話したいのですが、残念ながら時間がありません。よくお聞き下さい。あなたは今から先に申し上げた世界に勇者として召喚されます。」


 それって・・・龍馬がたまに読んでた小説みたいな感じかしら・・・


「その通りです。ですが、その国では純粋に勇者を必要として、召喚するのではありません。勇者の力を利用する目的で喚ぼうとしています。」


「そうなのですか?」


「はい、残念ながら、その国の思想は、私を封印したもうひとりのヴァリスという管理者の息がかかっています。その目的は・・・いけませんね。詳しくお話する時間はなさそうです。必要なことだけ詳しくお話します。」


「ま・まってください!召喚を取りやめることはできないのですか!?」


「難しいです。私は一応外で起きていることをある程度把握することができますが、基本的に外に力を発することはできません。今回の召喚に干渉したのも正直ギリギリでした。」


「そんな・・・」


「でも、その召喚はあなたにとって希望でもあります。お聞き下さい。」


「わかりました・・・」


 なんだろう・・・私はそんなことやってる場合じゃないのに・・・

 龍馬を探さなきゃいけないのに・・・

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