第95話 告白(1)

 室内には僕と、リディアと、グレイスの三人だけ。

 少し、無言でいたが、リディアが意を決っしたように顔を上げた。


「シエイラはリョウマさんとの別れが辛いようですね。あそこまで酔うとは。」


 顔は笑顔・・・だけど何か瞳に決意の色が見える。


「さて、リョウマさん。困惑していないところをみると、色々察しておられるとは思いますが・・・きちんとしようと思います。私もシエイラに負けていられないので。」


 リディアは居住まいを正した。


「リョウマさん。私はあなたに命と尊厳を助けられました。伸び悩んでいた力も向上させて頂きました。大変感謝しています。でも、それとは別に、あなたの人柄を見て思ったことがあります。」


「私は幼い頃より公爵家の娘として扱われ、大人であれ子供であれ、敬って扱われてきました。メイビスの至宝などと言われ、もてはやされてきました。しかし、私にはこの【眼】があります。幼少の頃より、汚い本音・・・権力や口に出すのもおぞましいような欲望が見えていました。人を信じられず、グレイスのような信頼できる数少ない人のみが心の安らぎでした。」


「そんな中、打算無しで人を助けられる、心を守ってあげられる、あなたの強さ、心の美しさ、そして私を貴族としてではなく、一人の人間として見てくれる所に、私はとても惹きつけられました。」


 僕が息を飲んで話を聞いていると、リディアはそこで一度深呼吸し、続けた。


「気づいたら、私の心の中で、あなたはとても大きな存在になっていました。しかし、あなたには想い人がいると知って、最初はとてもショックを受けました。でも、やはり諦めきれません。」


 リディアは僕の目をしっかりと見て、

 

「私は、あなたが好きです。心の底からお慕いしています。」


と言った。


 ここまで言われたらしっかりと受け止めるしか無い。

 僕は、口を開きかけたけど、リディアは手でそれを制して、


「言われなくてもわかっていますよ。あなたには桜花さんがいます。だから受け入れるわけにはいかない、そうですね?」


 僕は頷く。


「わかっています。わかっているのです。ですから私は考えました。」

 何を考えたんだろう?


「その前に一つお願いと、一つお聞きしたいことがあります。お願いは・・・私の話の前に、グレイスの話を聞いてください。」


 そう言ってグレイスに目配せするリディア。

 グレイスは頷いて僕の前に出た。


「リョウマ。私からも聞いてほしい。」



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