第48話 ドラゴンの痕跡
『テオ! あそこ! アイリスさんの家が……!』
「……
バチバチバチィ……ッッ! と、赤黒い魔力が村の中を駆け巡っていく。それがアイリスさんの家を襲っていた魔物に命中し、木っ端微塵に消しとばした。
俺たちはコーネリスの力もあり、無事に村の近くへとたどり着けていた。
今は、村から少し離れた場所から、村の状況を確認している最中だ。
「コーネリスはここまで移動させてくれてありがとう」
「どういたしまして。これぐらい、何回も頼んでくれると私も嬉しいんだからね!」
俺はそのコーネリスの頭をそっと撫でて、そうしながら周りを見回してみる。
聞いていた通り、村には魔物が襲ってきているようだ。
数は、2、3体。それが時間を置いて、村の近くに出現している。
それでも、村はなんとか無事だ。
建物が壊れたりしている様子はない。
村人たちが武器を手に持ち魔物の迎撃をしているようで、しかし、その顔には疲れが見える。
「魔物が来ているのは……山の方からか……」
つまり、この問題を根本的に解決するなら、山に行くしかない。
となると、そのためにも……。
「……村を魔力で覆っておこう……」
バチバチバチィ……ッッ! と翡翠色の魔力が発生する。
それが空へと昇り、村の上で弾け、村全体に降り注ぐ。
降り注いだ魔力が、村の周囲にいた魔物たちを一掃した。
こうしておけば、しばらくは魔物も警戒して、その動きが収まるはずだ。
俺はその様子を見届けると、山へと向かうのだった。
* * * * * *
村の近くに山がある。
そこはかなり大きな山で、まるでそびえ立つように佇んでいる山だった。
頂上は見えず、雲に隠れている。それが村の近くにある山で、俺もこの山に足を踏み入れた回数は少ない。
「ご主人様、山の上の方に大きな足跡があったわ!」
空を飛んで戻って来てくれたコーネリスがそう報告してくれた。
コーネリスが偵察して来てくれたのだ。そのおかげで、情報を得ることができた。
「複数の魔物の足跡と、それとは比べものにならないぐらい大きな足跡が一体分だけあったわ。魔物が来てる原因がこの山だというのは、確定みたいね」
「複数の魔物の足跡……か。やっぱり群れができていて……その大きな足跡の方も気になるな」
「うん。だから、実際にご主人様も見にいきましょう。私がそこまで抱えるから、一緒に空の上から見ましょう」
「捕まって」と言ったコーネリスが、俺を抱きしめて浮かび上がってくれる。
正面から、俺の背中に両手を伸ばしてくれて。
俺の足が地面から離れ、俺も空へと浮かび上がる。
「ふふっ、ご主人様とこうやって飛ぶの悪くないって思うわ。ご主人様も、もっとしっかり私のことを抱きしめてくれていいんだからね」
「それならーー」
「ふぎゃ……!?」
俺が抱きしめ返すと、「ふぎゃ……!?」と声を上げるコーネリス。
コーネリスの体がこわばり、頬がかーっと赤くなる。
でも……俺も空に浮かび上がるのなんて初めてだから、少し怖かった……。
「も、もうっ。ご主人様ったら、しょうがないんだからっ。もっと、私にしがみついてくれていいんだからねっ」
『ふふっ』
腕輪を通じて、テトラが微笑んだのが伝わってきた。
テトラは万が一のために、腕輪に宿った状態になってもらっている。
こうしておけば、テトラは安全だし、俺も安全だ。テトラのお陰で、腕輪を通じて常時回復がかかっているから、大抵のことは耐えることができる。
そして何かあった時はコーネリスも腕輪に宿せば、守りは万全なはずだ。
「あ、ご主人様、ほら、あそこ、見えてきたわ!」
山の山頂に近いところ。
そこをコーネリスが指し示すと、俺も確認できた。
鉱石がちりばめられている硬い地面の上、そこにくっきりと足跡がついており、敵がいるのが分かる。それが頂上へと続いてる。
「あれは……もしかしたらドラゴンがいる痕跡かもしれないわ」
『「ドラゴン……?」』
「ええ、ドラゴンよ。種類までは判別できないけど……多分、相当な奴がいると思うわ」
ドラゴン……か。
ドラゴンといえば、昔話とかで聞いたことがある。
何百年、何千年と生きている龍だ。
そんなドラゴンについて、コーネリスは知っていることがあるらしい。
「ええ。ドラゴンっていうのは、普通の魔物とは違うの。他の魔物はただ本能のみに従って生きているのだけど、ドラゴンはまた別みたいなの。姿を見せるのも稀みたいよ」
それはあくまでも噂らしい。
しかし、ドラゴンがそこにいるということは、何かその理由があるみたいだった。
それは今回、村を襲っている魔物と関係があるのかは不明だけど、問題を解決できそうな糸口にはなるかもしれない。
「とにかく、この山にはドラゴンがいる。それを見つけられれば、何かが変わる気がするわ」
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