第127話5-28横槍


 「気を付けて、みんな!」


 

 シェルさんのその言葉を合図にみんな一斉に動き始める。



 「はぁっ! ガレント流剣技五の型、雷光!!」


 「ドラゴン百裂掌!」


 「風邪の精霊王よ!!」


 「こん畜生っ! いっけぇっ!!」



 姉さんが、セキさんが、そしてシェルさんやリュードさんまでも一斉に麒麟に対して攻撃をする。  


 

 「うわっ!」


 こんなに一度に攻撃をされたらいくら悪魔の真の王と言ってもただでは済まないはず。

 僕がそう思った瞬間だった。


 

 『悪くはないが届かんわっ!』



 麒麟がそう吠えると目の前にあの玄武が現れる!?

 


 がんっ!


 どがががががっがががっ!!


 ガンガンっ!


 どんっ!


 

 そしてみんなの攻撃は玄武に全て弾かれてしまった。


 どう言う事?

 階下の玄武を呼び寄せたって事!?



 「ちっ! あの亀を呼び寄せたの!?」


 「ならこうよっ!!」


 姉さんはなぎなたソードを構え直し、シェルさんはその後ろからいつの間にやらあのプロテクター姿で光る弓を持っていて光る矢を放つ。

 それを合図に姉さんは技を繰り出す。



 「はぁッ!! ガレント流剣技六の型、逆さ滝!」



 姉さんの逆さ滝が玄武を捕らえあの巨体を浮かび上がらせる。

 流石にダメージを与える事は出来ないみたいだけどこれで玄武は宙に舞い動きが封じられる。

 そこへシェルさんが放った光の矢が滑るかのように数十本に分かれながら麒麟に迫る。


 が、その光の矢はいきなり現れた炎の鳥に邪魔され全て叩き落とされる。


 「えっ!? 倒したはずの朱雀が!?」


 「こんにゃろっ! 【赤光土石流拳】!!」


 朱雀がシェルさんの全ての矢をその翼から放たれた炎の矢で叩き落とした隙に今度はセキさんが怒涛の【赤光土石流拳】を放つ。


 玄武が宙にいるからこれならセキさんの技が届く!


 僕がそう思った瞬間今度はその怒涛の拳を全てはじき返す真っ白な影が現れた。



 「そんな! 白虎まで出てきたのですの!?」



 エマ―ジェリアさんが驚くのも無理はない。

 倒したはずの白虎が現れた。


 「倒した連中が蘇ったとでも言うの!?」


 姉さんが驚きの声を上げると朱雀、白虎、玄武、そして見た事の無い細長い龍が姿を現した。



 「あぶねえっ! 主よ!!」



 がんっ!



 「ぐはっ!」



 その見た事の無い細長い龍は目にも止まらぬ速さで姉さんを攻撃しようとした。

 しかしその間に入ったリュードさんが何とかしのぎ弾き飛ばされる。



 『お‥‥‥の、れぇ‥‥‥ ティア‥‥‥ナ姫ぇ‥‥‥』



 「この声、まさか!?」


 姉さんはその龍を睨む。

 その龍はとぐろを巻きながら麒麟たちの一番前に出てきて恨めしそうな声を上げた。


 『ふむ、青龍はこちらの世界で完全消滅させられていたのだったな? 呼び寄せてはみたものの残った怨念のみか? まあいい、我が役に立て! その少年以外を蹴散らすがいい!!』



 しゃぁぁあああぁあっぁぁぁっ!!!!

 


 その青龍と呼ばれた細長い龍は喜びの雄叫びを上げて真先に姉さんを襲って来た。



 「姉さん!!」



 ぴこっ!


 どがっ! 



 しかし今度はアイミが素早く動きその青龍の体当たりを防ぐ。



 「この声、こいつまさかヨハネス神父と融合していた悪魔王? だから必要以上にフェンリルを狙うの?」


 シェルさんは姉さんの横に来て矢を構える。

 って事は、この青龍は姉さんの中にあるティアナ姫の魂に引かれているって事?



 「こいつがヨハネス神父が融合していた悪魔王の正体なの? 千三百年前の動乱の元凶!? そしてエルハイミを苦しめた張本人なの!?」



 姉さんは瞳の色を金色に変えて魔力を高める。



 「アイミ! 同調よ!!」



 ぴこっ!!


 アイミはすぐに姉さんに背中を向ける。

 そして姉さんはアイミの背に手をつき同調をする。


 ぶんっ!

 

 アイミの瞳が一瞬輝く。

 そして姉さんと完全同調したアイミは胸の前で拳と拳をぶつける。

 

 がきんっ!



 「いけぇっ! 三十六式が一つ、チャリオットぉっ!!」



 ボンっ!!



 アイミから炎が燃え上がりその体を【紅蓮業火】の火柱が包む。

 なんと姉さんの最大魔法をアイミがまとって体当たり技のチャリオットを放った!



 ばんっ!!


 

 床に足をめり込ませ強力な踏み込みをするアイミ。

 が宙を舞っていた玄武がその目の前に現れる。



 ばごんっ! 



 しかしアイミのその体当たりは何と玄武を弾き飛ばし正龍に迫って行った。


 「凄い! これなら!!」


 これならいけると僕が思った瞬間麒麟が吠えた!



 『甘いわ!』



 バキッ!!


 どがっ!



 「そんな、アイミ!!」


 青龍にあと少しで体当たりがぶつかるその横から白虎が飛び込み片腕をつぶしながらもアイミを殴り飛ばした。



 ぐるるるるるぅ‥‥‥  

 


 アイミを殴った右腕がぼろぼろになって砕け、骨が見えている。

 しかし白虎はその場で唸りながらこちらに振り向く。



 「くっ!」


 

 アイミと同調をしている姉さんは身動きできない。

 やばい、このままじゃ!



 「フェンリル! って、このぉ!!」


 姉さんのサポートに入ろうとしたセキさんに朱雀が炎の羽根を振り無数の炎の矢を降り注ぐ。


 

 「【絶対防壁】ですわ!!」


 なおも姉さんに振り向き攻撃をしてこようとする白虎と青龍。

 それをエマ―ジェリアさんの防壁魔法で食い止めるもなんとそれを突き破ってしまった。



 パキーン!



 ガラスでも割れるような音がしてエマ―ジェリアさんの【絶対防壁】が破られる。



 「光の精霊よ!!」


 シェルさんが慌ててそちらに精霊魔法を放つも玄武がそれを邪魔する。

 僕はその瞬間駆け出し姉さんの前に立ち塞がろうとする。


 しかし間に合わない!?




 「まったく、これだから異界の連中は困るんだよ。ここは僕たちの世界だっていうのにさ」



 ばきっ!


 ぎゅっ!



 「ほんと、これだから悪魔って嫌いなのよねぇ~」


 「そんな事はいいですから姉さまはそいつを早い所片付けてください」



 いきなり聞こえたその声はに僕は驚く。


 目の前に僕と同じくらいの年頃の短い銀髪の女の子?

 そして姉さんを襲う白虎と青龍を殴り飛ばし、掴んで締め上げている二人のメイドさん?



 「そんな、あなたたちは‥‥‥」


 「娘の窮地だもんね、お母さんが助けてあげるわ」


 「姉さまいいから早いとこそいつを片付けてください」


 「さて、それじゃあ久しぶりに僕たちも大暴れするか!」


 震える姉さんの声にいきなり現れたその三人は楽しそうにしている。




 「アガシタ! あんた今までどこほっつき歩いていたのよ!!!?」




 そんな三人にシェルさんが怒りを込めた声を上げるのだった。


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