第113話5-14ソウマの危機
「まさか町の住民全部が悪魔と融合しているとはね」
とりあえず一つの部屋に集まって話し合う僕たち。
シェルさんたちは心底嫌そうな顔をしている。
僕は状況がよく呑み込めていないのでシェルさん聞いてみる。
「あの、良く分からないのですけど、悪魔と融合するってのはどう言う事なんですか?」
「それはね、異界の住人である悪魔はこの世界では召喚に応じるのはその精神体なのよ。レッサーデーモンなんかはそれの代表なんだけど精神体だけだと、とても弱くて聖水なんかでも退治できるわ」
シェルさんはポーチから聖水を取り出す。
これは女神様の加護が付加された清められた水。
実際には魔力付加がされていると聞いている。
「精神体の魔物には魔力を帯びたこう言った聖水なんかで対応できるけど、レッサーデーモンの中でも強いのがいるでしょ? そいつらはこの世界の小動物や依り代に憑依しているのよ。だからかりそめの肉体を持ち力も強くなる。そしてアークデーモンはこちらに依り代が無ければ召喚する事は出来なわ」
シェルさんはそう言ってみんなを見る。
そして続ける。
「上級デーモンは代価を払ってこちらに肉体ごと来るので『魔人』の様に強力なの。でもそれ以外は大体こちらの依り代を必要とするの」
「‥‥‥まあ、なんだ、講義はそれくらいであいつらって結局悪魔なのか?」
シェルさんの説明に頭の上にクエスチョンマークを浮かべてリュードさんが聞く。
「そうね、悪魔とも呼べるし悪魔でもないとも言わるわ。それが融合。精神の強い方にその基本が引っ張られるからレッサーデーモンあたりが住民と融合しているのかもね‥‥‥」
「シェル、それって元に戻せないの?」
姉さんはシェルさんに聞く。
シェルさんはため息を吐いて答える。
「女神の力が有れば出来るでしょうけど、それ以外でその融合を解いた事例は知らないわ」
つまりもう元には戻れないって事?
その答えにしばしみんな黙ってしまう。
「で、でも、あのお店にいた人は今まで通りだって言ってましたよ‥‥‥」
「それは悪魔融合した人から見ればよ。精神は人間に近いでしょうけどその肉体は悪魔のそれを有している。上級の悪魔に何時その精神を支配されるか分からないわよ?」
「‥‥‥やはり人では無くなってしまったのですわね?」
それでも僕は聞いてみるもののシェルさんの答えは僕の希望を打ち砕く。
そしてそれを確定づけるかのようにエマ―ジェリアさんが言う。
思わず拳を握ってしまう僕。
ミーニャ、いくら何でもやり過ぎだ!
唇を噛んでしまう。
「とは言え、今の所は大人しいから早い所魔王城に向かって魔王ミーニャを取り押さえる事が先決ね‥‥‥ ああ、ごめん、疲れた。続きは休んでからね。お金はエマに渡すからみんなは食事でもしてきて。それと部屋割りはエマはセキと離れられないから一緒となるから、男同士のソウマとリュードは一緒ね? フェンリルは私と一緒よ」
そう言ってこの部屋以外の残り二部屋の鍵を僕たちに渡してくる。
そのカギをもらったエマ―ジェリアさんとリュードさんはまじまじとそのカギを見る。
「セキが隣の部屋ならシェル様と一緒の部屋でも大丈夫ですわよ!?」
「おいシェル、マジでソウマと一緒で良いのか!? ソウマ、男同士仲良くしようぜ!!」
途端にエマ―ジェリアさんとリュードさんがそう言う。
「ちょっと! ソウマは私と一緒よ!! シェル!」
「あたしは誰とでも良いんだけどね~」
姉さんは抗議の声を上げ、セキさんはどうでもいいような風に言う。
「少なくとも私とリュードが一緒の部屋になると仕返しされるから嫌よ?」
「ぎくっ! な、何の事かなぁ~」
シェルさんは靴を脱ぎ装備を外してベッドに潜り込む。
「あ~、マジもう駄目。とにかく私はリュードとエマ以外ならいいわ。エマも寝ている間に襲ってきそうだしね‥‥‥ふぅぁああぁぁ~」
ぽてっ!
最後にそう言いながらシェルさんはベッドに倒れ込んですやすやと寝息を立てる。
相当疲れていたんだろうね?
「くっ! シェル様ぁ~!!」
悔しそうにしているエマ―ジェリアさん。
「ソウマぁ~」
僕に抱き着く姉さん。
「くっくっく、ソウマと一緒かぁ~。ソウマさえその気になれば!」
何かうれしそうなリュードさん。
はて?
どうせ寝るだけなんだから誰とだっていいような気がするのだけどなぁ?
不思議に思う僕だったのだ。
* * * * *
「納得いきませんわ! フェンリルさん部屋変わってくださいですわ!」
「私だってソウマと一緒がいいわよ!」
「何言ってやがる、ソウマは男同士仲良く俺と一緒だ! たとえ主でもこの機会は譲れねぇ!!」
下の階に行って食堂で食事を頼み話が続く。
あの悪魔と融合した店の人もちゃんと僕らが食べれるようなものを出してくれた。
実はリリスさんの件が有ったから飲み物に血でも入れられるんじゃないかと冷や冷やしていた。
でも出て来たものは普通の食事だったので安心して食べている。
「う~ん、この獅子牛の焼いたの美味しいわね!」
「セキさんお肉好きですもんね~」
僕とセキさんは食事を続けているけど他の三人はまだあれやこれやと言っている。
そんな様子を見ていたセキさんはニヤリと笑ってエマ―ジェリアさんに言う。
「じゃあさ、エマがソウマと一緒ってのはどうよ?」
「「「!?」」」
その一言にこの場がなぜか凍り付く。
姉さんもリュードさんも、そしてエマ―ジェリアさんも。
「ななななななななっ! 何を言っているのですのぉっ!? わ、私がソウマ君と一緒だなんて!! 私初めてなんですわよ! シェル様をさしおいて、そ、それをソウマ君と何てっ! できちゃいますよわよっ!!!?」
「だめだめだめだめぇっ! ソウマとエマ―ジェリアさんが一緒だなんて! ソウマの初めてのは私とだって決めているのに!!」
「おいおいおい、この嬢ちゃんやっぱりソウマの事アレなのか!?」
頭から爆発するような湯気を出し顔を真っ赤にするエマ―ジェリアさん。
涙目で抗議している姉さん。
ずいっとエマ―ジェリアさんを覗き込むリュードさん。
そんな様子をセキさんはカラカラと笑ている。
うーん、僕は別にエマ―ジェリアさんと一緒の部屋でも良いけどエマ―ジェリアさんシェルさんと一緒が良いって言ってるしなぁ。
そんな様子を十分に楽しんだセキさんは四本の棒に一本だけ色を塗って差し出す。
「じゃあさ、公平にくじ引きで決めない?」
ずいっと出されたそれにみんな振り向く。
「色のついたのがソウマと一緒で、それ以外ははずれね♪」
するとみんな顔を見合わせ唾を飲む。
なんなんだ一体?
別に誰とだっていいじゃないか?
そう思う僕にみんなセキさんのくじに手を伸ばすのだった。
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