第65話3-24ハーピーの巣
「うーん困った」
僕はハーピーに掴まれて空を飛んでいる。
そして下を見るとアイミもたくさんのハーピーたちに掴まって一緒に運ばれている。
僕ってこのまま連れ去らわれて食べられちゃうのだろうか?
下を見ると流石にかなりの高さがある。
無理して拘束を振り払ってもこの高さじゃ受け身が取れないから死んじゃいそうだ。
アイミも何故か大人しくしているのが不思議だけど、今は僕も大人しくするしかない。
ああ、そう言えばエマ―ジェリアさんつけっぱなしのコンロ止めておいてくれただろうか?
あれに使うオイルって高いんだよなぁ~。
そんな事を思っていると険しい岩肌にぽっかりと穴が開いた場所が見えてくる。
よくよく見ればそこから他のハーピーたちが飛び発ったり戻ったりしている。
どうやらあそこがハーピーたちの巣の様だ。
とりあえずあそこに行くまでは大人しくしていようかな?
姉さんたち心配しているかな?
僕はそんな事を思いながらどんどんと近付くその穴を見るのだった。
* * *
「え~と‥‥‥」
ハーピーの巣に着いたらいきなり襲われる事無く座布団出してもらって飲み物まで出された。
そして僕の目の前にひときわ大きなハーピーの女の人が座る。
「ニンゲン、ヨクキタ。コトバワタシダケワカル」
驚いた事にこのハーピーは人の言葉をしゃべっていた。
どうやらいきなり殺されることは無くなったようだね?
「えーと、僕はソウマって言います。あの、僕を帰してもらえませんか?」
「ソウマ、ワタシオサイウ。ソウマワタシテツダウ、ソウシタラカエス」
ちょっと聞き取りにくいけど、どうやらこの人ってオサって言うらしい。
あ、人じゃなくてハーピーか。
「ソウマ、アノオトコタチツレカエル。コドモオオスギ」
「はい?」
怪訝に思いオサさんが羽で指す方を見るとハーピーの女の子たちに囲まれたダグスさんたちがハーピーたちにもてなしを受けまくっている。
飲み物や果物なんかを乗せたお皿を器用に羽根の手で持って来てダグスさんたちに食べさせてやったりしている。
もしかして太らせてから食べるつもり!?
「オトコタチハタラカナイ。コドモツクルダケ。コドモオオスギル」
「ええぇとぉ、僕たちを食べるんじゃないのですか?」
「ニンゲンタベナイ! オイシクナイ!! コヅクリダケヒツヨウ、デモコドモオオスギ!」
一応食べた事あるんだ‥‥‥
ちょっと引き気味でオサさんの言葉を聞いていたけど子供が多すぎるって何?
「あの、子供多すぎるってどう言う事ですか? あなたたちが子供増やす為に男の人さらったりしているって聞いてますけど?」
「ソレムカシノハナシ。イマイラナイ。オトコオオイ、タベモノナクナル。アイツラハタラカナイ」
そう言ってオサさんは器用にため息を吐く。
ぴこぴこ~
アイミがちょんちょんと僕の肩を突く。
振り返りアイミが指さす先を見ると男の人がハーピーの女の子に皿を投げつけ怒っている。
「ちっ! まぁた果物かよ!? もっと精のつくモン食わせろやぁ!!」
そう言ってハーピーの女の子を蹴飛ばそうとする。
まずい!
そう思った瞬間僕は考えるより先に体が動いていた。
「操魔剣」を使って足に一気に魔力を流し込み瞬間身体能力強化をして踏み込む。
そして蹴りが入るその間に入り込みその蹴りを僕が受ける。
げしっ!
「うぉっ!? なんだてめぇ!?」
「とっ、いくらハーピーでも女の子に足蹴は良くありませんよ。ダグスさん! ぼうっと見ていないで何とか言ってくださいよ」
僕を足蹴にした男の人は三十過ぎくらいの人だったけど、ぺっと唾を吐いて向こうに行ってしまった。
「ソ、ソウマさんですか‥‥‥ あの、シェル様やセキ様は?」
「僕だけハーピーに掴まってここまで来ました。姉さんたちはここを探していますよ。それよりダグスさん無事で何よりです」
ダグスさんはおどおどしながら僕の前に来てちらちらを周りを見る。
「ソウマ、オマエイイヤツコイツラチガウ」
オサさんはそう言いながら僕のすぐそばまで来る。
そして数人いる男の人たちに大声で言う。
「オマエタチイラナイ! モウカエレ!! コヅクリソウマダケデイイ!!」
すると数人の男たちは立ち上がり近くにいたハーピーの女の子たちを蹴飛ばす。
「んあだぁとぉ!? 今までガキ作ってやったんだぞ!?」
「今更あんな村に戻れるか!」
「ここの方がずっと良いんだぜぇ~、飲んで食って女を抱ける。最高だぜぇっ!」
そう言いながらこちらに来る。
なんか盗賊のおじさんたちみたいだな。
「でも村の皆さんだって心配しているし、いくらハーピーでも女の子を蹴るのは良くないと思いますよ!」
「なんだお前は、新入りかぁ? ガキぃ、分かってねぇなぁ。ハーピーどもは俺たちの子種が欲しいんだよ! 若けりゃ若いほど本能が強くその人間の言葉喋るやつより素直なんだよ!!」
そう言って僕に殴りかかって来るけどその拳が僕に届く前にアイミが男の人を殴り飛ばす。
ばきっ!
ひゅーん、どかっ!
ぼてっ!!
「うわぁ、アイミ手加減しなきゃだめだよ!! 【回復魔法】!!」
殴られた男の人は吹き飛ばされ壁まで飛んで行くけど不意を突かれたためか受け身を取らないから大ダメージを受けてしまった。
僕は慌てて僕に使える数少ない魔法のうち回復を促進させる【回復魔法】をかける。
「ふう、何とか死なずに済んだ。アイミ、いきなり殴ったらだめじゃないか」
ぴこお~
しゅんとするアイミだけど男たちに向ける視線はきつい。
そんな中ダグスさんが僕の足元に倒れ込んできた。
「ひぃぇえぇぇぇぇっ、ソ、ソウマさん大人しくしますからご勘弁を!」
その後ろで他の男の人たちもおののきつつ聞いてくる。
「ダグス、何なんだよこのガキとその機械人形は!?」
「回復魔法とか使えるとか、ガキの癖に?」
「お、おい‥‥‥」
するとダグスさんはその男の人たちに振り向きながら言う。
「このお方は『女神様の伴侶』シェル様と『爆竜』のセキ様、そして聖女エマ―ジェリア様のお連れの方だ」
「「「「な、なにぃいいぃぃぃぃっ!!!?」」」」
ダグスさんがそう言うと男の人たちは顔面蒼白になり腰を抜かす人もいた。
ええぇとぉ~、シェルさんたちって一体どう言う風に世の中では知られているんだろう?
首をかしげていると後ろから何やらよく知った殺気を感じる。
「ソぉ~ウぅ~マぁ~どぉ~こぉ~」
振り向く事すら必要ないその声はフェンリル姉さん。
どうやらここへたどり着いたようだ。
まあ姉さんたちならそうだろうけどね。
「ソウマ君、無事ですのぉ!? って、ダグスさん?」
「あら、ヤリ殺されたと思ったら案外、生きていたわね?」
「うーん、なんかこいつら元気そうじゃない?」
『なんだ、ソウマ君連れ去られて初めてを奪われちゃったかと思って焦ったけど大丈夫の様ね?』
エマ―ジェリアさん、シェルさん、セキさんにリリスさんも無事に此処へたどり着いたみたい。
「ソウマぁっ!! お姉ちゃん心配したんだからねっ!? 大丈夫? 無理やりされてない? 初めてだから痛くなかった!? お姉ちゃんより先に大人の階段上っちゃったの!!!?」
「ぶっ! 姉さんいきなり抱き着かないでよ!! 何その階段って!? 僕階段なんか上った覚えないけど?」
みんな無事に此処へ着けた事に安堵の息を漏らしていた僕に姉さんが抱き着く。
「ソウマ、コノメスダレダ? ソウマノツガイカ? ソレヨリホカノオトコイラナイ。オマエラカエレ」
オサさんがそう言いながら僕を姉さんから引っぺがす。
「なっ!? 何すんのよ私のソウマに!!」
姉さんはつかさず僕をオサさんから引き離し抱き着く。
それをオサさんがまた引っ張ってと‥‥‥
「何この状況?」
「ソ、ソウマ君やっぱりお姉さんキラーですわぁっ! そのハーピーと大人の階段上っちゃうのですのぉっ!!!?」
「落ち着きなさいってエマ」
『流石に目の前でそれは困るわね。魔王様に知られたらあたしの責任になっちゃうじゃない』
ぴこぴこ。
僕が姉さんとオサさんの間を行き来している間にアイミがシェルさんに何か話している。
「ふんふん? なんですってぇ!?」
そう言いながらシェルさんはダグスさんたちを睨みつける。
「あんたら随分と好いご身分の様ね? 何こんな所で油売ってんのよ? 村に帰るのが嫌だぁ? 飲んで食って女抱けて最高だぁ? 気に入らないとハーピーの女の子を脚げにするぅだぁ? いい度胸ね!!」
「へぇ、いくらハーピー相手とは言えそんな事ばかりしていたんだぁ~」
「どう言う事ですのシェル様ですわ?」
どうやらアイミの説明があったみたいだけど、なんかシェルさんたちの雰囲気がおかしい。
「こいつらここが居心地よすぎて子作りばかりして他には何もしないでだらだらとヒモ生活していたのよ! しかも気に入らないと女を足蹴にするとか、更にそれを助けに入ったソウマを足蹴にしただけでなく殴りかかりそうになったらしいわよ!!」
ぴくっ!
あっ、姉さんが‥‥‥
ぴくぴくっ!!
あ、なんかエマ―ジェリアさんやセキさん、リリスさんも‥‥‥
するりと姉さんが僕に抱き着く手を放す。
そしてコツコツと靴音を鳴らせダグスさんたちの前に行く。
「私のソウマを足蹴にしたぁ? 殴り飛ばそうとしたですってぇ~?」
「ひぇええぇぇぇぇぇっ! 私じゃありませんっ!!」
姉さんのそれにダグスさんはすぐに土下座する。
あ~、この展開は‥‥‥
「フェンリル良いわよ? 性根の腐った連中は叩き直してやらないと」
「エマ、死にそうになったら回復お願いね。三回は死の淵を見せてやらないと収まらないわ」
「そうですわね、腕の一本二本落としても良いですわ。ちゃんと元通りにしてまたちょん切れるようにしてあげますわ!」
『そうねぇ、いくらサキュバスでもそう言ったプレイじゃ無きゃ女を足蹴にするゲスの相手は嫌ね。搾り取らないで痛めつけてあげようかしら?』
姉さんたちが怒っている。
もうどうにもならないよね?
僕は合掌するしかなかったのだった。
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