第34話2-13宣言


 「ミーニャ、これ以上皆さんに迷惑かける訳には行かないわ! 大人しく私たちと一緒に村へ戻るのよ!!」



 姉さんは隙無くなぎなたソードを構えながらミーニャと対峙する。

 そんな姉さんをミーニャは見てふっと笑う。


 「フェンリルさん、あなたはあたしの義姉さんになる人。できれば手荒な真似はしたく無いのですけど?」


 「どうやら言う事を聞く気は無い様ね? だったら少し折檻よ!! はぁっ! ガレント流五の型、雷光!!」



 どんっ!



 姉さんがその場から消え一瞬でミーニャの前に現れるけどミーニャは慌てずいつの間にか持ち出した槍を持ち後ろに振り返る。

 そしてその槍を一閃させる。

 振り返ったミーニャの後ろになる場所にいたはずの姉さんの姿が掻き消える。

 それは残像だったのだ。



 がきぃぃいいいぃぃぃんっ!



 「なっ!?」


 「いくらフェンリルさんが強くても今のあたしには敵わない。諦めてください」



 ヒュンっ!

  

 どがっ!



 ミーニャはその槍を横に振り姉さんを吹き飛ばす。

 だけど姉さんだって黙ってはいない。


 「このぉっ! 悪い子にはお仕置きよ!!」



 どんっ!



 いきなり姉さんは【紅蓮業火】を発動させミーニャにとびかかる。

 真っ赤な炎の柱が姉さんを包み激しく燃え上がらせミーニャに肉薄する!


 「いくらフェンリルさんの最大攻撃魔法でも今のあたしには通じない! 怪我したら治してあげますよ!!」


 そう言ってミーニャも手に持つ槍を光らせ迫りくる姉さんの炎の柱に切り込む。



 ざんっ!



 ミーニャは姉さんの【紅蓮業火】を真横に切り裂く。

 その一撃は凄まじくなんとあの炎の柱が上下に分断されてしまった!


 

 「姉さんっ!」



 慌てる僕。

 しかし切り裂いた業火の柱の中にいるはずの姉さんがいない?



 「ミーニャぁぁあああぁっ!!」


 「何っ!? フェンリルさん!?」



 がきぃいいぃぃぃん!!



 いつの間にか空中に飛び上がっていた姉さんは落下の速度も加算して重い一撃をミーニャに叩き込む。

 ミーニャはそれを槍を頭上にかかげ受け止めるも姉さんに押され地面に亀裂を走らせ少し沈み込む。



 「なんですって!? フェンリルさん、いつの間に『同調』出来るよういなったんです!? まさか昔を思い出した!?」


 「前世だか昔だか知らないけど、いい加減にしなさいってば!!」



 がんっ!



 がきぃいいぃん!!



 どっ!



 きんっ!

 きんっ!!



 姉さんの攻撃を受け止めたミーニャと姉さんが目にも止まらない剣戟を繰り広げる。

 その攻防はまるで演武の様に流れ打ち込み、防ぎ舞い踊る!



 「す、凄いですわ。こんな戦い始めて見ましたですわ」


 「あのミーニャって子かなりね。やはり完全覚醒した『魔王』の力ね?」


 「あー、こうなっちゃうと手が出せない! フェンリル頑張りなさいよ!!」


 エマ―ジェリアさんが僕と同様その攻防に驚きセキさんやシェルさんも手が出せずにこの戦いを見守る。



 「このっ!」


 「なんのっ!!」



 ミーニャが光る弾を姉さんに打ち込むけど姉さんは瞳の色を金色にしてその魔光弾をなぎなたソードで弾き返す。



 って!

 弾かれた魔光弾がこっちに飛んでくるぅ!?



 「【絶対防壁】ですわっ!!」


 でもエマ―ジェリアさんが防壁魔法をかけてくれた。

 

 危なかった、なんかあの魔光弾かなり強力そうだったもんね。



 ちゅどぉぉおおおおぉぉぉぉん!!



 「あらぁーーーーっ!?」



 着弾した魔光弾が僕を吹き飛ばす。

 空中に吹き飛ばされながらエマ―ジェリアさんの防壁魔法がかけられたところを見るとしっかりとシェルさんやセキさんは取り込んでいた。

 でもすぐ隣の僕の場所は何故か防壁が展開されていなかった。



 「あ、しまったですわ! ソウマ君の場所まで防壁展開するの忘れていましたわ!!」


 「そんなぁっ~~~~!!!!」



 しっかりとエマ―ジェリアさんのつぶやき声が聞こえる。




 ひゅるるるるるぅ~~~~


 ぼてっ!



 ミーニャの魔光弾かなり強力だよ!

 あまりのダメージに受け身取れなくて地面にたたきつけられちゃったよっ!!




 「ソウマっ! くっ! アイミ、ミーニャの相手していて!!」


 姉さんはそう叫びポーチからアイミを引っ張り出したようだ。


 「くっ! アイミまで復活してたんですかフェンリルさん!? まさか『赤い悪魔』にまでなれるんですか!?」



 ざざっ!



 ミーニャはアイミの姿を見ると大きく下がって槍を構える。



 顔面から行っちゃったけどここが森の中で助かった。

 何とか大けがはしないで地面に突っこんだ頭を引き抜く僕。



 「ソウマ! 大丈夫!?」


 「ううぅ、流石にきついけど大丈夫だよ姉さん」   

 

 姉さんに助け起こされながら僕は頭を振る。

 そして対峙しているミーニャとアイミを見る。



 ぴこっ!

 ぴこぴこ!!


 「久しぶりねアイミ。でも今はそこを退いてもらえないかしら? 私はソウマ君を連れて魔王城に戻るのだから!」


 ぴこっ!


 ミーニャに対峙しているアイミは人差し指を建てて左右に振りながら首も横に振る。

 どうやら拒否をしている様だ。



 「『魔王』いい加減に大人しくするのじゃ!!」


 メル長老さんたちがもう一度上級精霊を使ってミーニャを捕らえようとする。

 しかしことごとく空間が裂けその攻撃は吸い込まれていく。



 「フェンリルさんの『同調』にアイミの復活、シェルさんたちまでいるのでは流石に分が悪いですね? ソウマ君、ケガは無かったよね? ソウマ君もちゃんと強くなっているんだ‥‥‥ ここは退きます! ソウマ君、もっと強くなってあたしに会いに来て、魔王城で待っているから。そしてその間に必ず『ハーピーの雫』を手に入れソウマ君に初めてをもらってもらうんだから! 待ってるねソウマ君♡」


 そう言って溶けるように虚空にミーニャはその姿を消した。




 「あっ! 待ちなさいミーニャっ!!」



 姉さんはすぐにでもミーニャにとびかかり捕まえようとするけど既にミーニャの姿は消えてしまった。




 「ソウマ、大丈夫そうね? しかしイオマが‥‥‥いや、ミーニャって子があそこまで完全覚醒しているとは。こりゃぁアイミ復活でもきついかな?」




 シェルさんは僕のすぐ横まで来てミーニャの消えたその場所を見つめるのだった。 


 

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