第14話1-14ゲート
扉から出てきたのは姉さんと同じく真っ赤な髪の毛のお姉さんだった。
年の頃シェルさんと同じくらいかな?
ちょっと釣り目でエマ―ジェリアさんと同じくこめかみの上に二つもトゲの様な癖っ毛がある。
美人なんだけど何処となくエマージェリアさんにも似ている。
そしてこのお姉さんも大きな胸している。
だけど僕はそんな事よりもっと気になってしまう事があって思わずじっと見つめてしまった。
だって頭に角が生えてるんだもん。
いや、よくよく見ると尻尾もあるの?
このお姉さんの後ろでゆらゆらとトカゲの様な尻尾がうごめいている。
うちの村にも獣人の人やその血を受け継いで耳や尻尾ある人もいるけど爬虫類の様な人は初めて見た。
「はぁ、エマがいるという事はセキもいるって事よね? ユーベルトからなんでエマを引っ張り出したのよ?」
「だってシェルがお母さんを探しに行ったって聞いたからまたこの世に戻って来たってことでしょ? それにあたしだってずっとあの神殿にいるのって肩が凝るモノ。たまには息抜きしなきゃ! そうでしょエマ?」
「私はシェル様に会えるなら何でもいいのですわ!」
なんか込み入った話になって来たな?
シェルさんはもう一度溜息をついてから赤髪のお姉さんに話す。
「見つかったのは見つかったけど、思い出していないわよ? まあ私にとってはその方が良いんだけどね」
「ええぇっ!? 思い出していないの!?」
赤髪のお姉さんは大いに驚いている。
そしてシェルさんに詰め寄る。
「どう言う事よ? じゃあオーブも何も渡していないの?」
「落ち着きなさいって、それに今は先に『魔王』を何とかしなきゃでしょ? 完全に覚醒しているわ。今回は出遅れたわね」
そこまで言ってからシェルさんは唖然としている僕らに向かって話し始める。
「ごめんごめん、えーとこっちはセキって言う赤竜の化身よ。今はユーベルトで女神の守護者として聖女エマ―ジェリアと共にあの神殿を守っている事になっているわ」
「赤竜? あの女神様の僕の黒龍と赤竜ですか!?」
「うわー、本当にいたんだ!!」
姉さんも僕も話には聞いていたけど今の女神様の僕として太古の時代から生き永らえている黒龍と赤竜と言う古代竜がいるらしい。
その力は女神様さえ焼き殺せたとか言う。
今の一番新しい女神様はそれでもこの竜たちを僕に出来るほど凄いらしいけどまさか伝説の赤竜に会えるなんて!
「あの、どう見ても女の人なんですが‥‥‥」
「ああ、今は基本人型がメインでその気になれば竜の姿にも成れるのよ。えーと、セキ、彼女がそうよ」
そう言ってシェルさんは姉さんをそのセキさんと言う赤竜さんに紹介する。
するとセキさんは姉さんの前にまでやって来てじっと姉さんを見る。
「あっ!」
姉さんも気付いたようだ。
シェルさんもそうだったけどセキさんも瞳を金色に変え姉さんと僕を見る。
しばしそうしていたけどまた元の赤と黒の瞳に色を戻しガシッと姉さんの手を取る。
「おか‥‥‥いや違った、あたしはセキ! 会えてうれしいわ!!」
「あ、あはははははぁ、フェンリルって言います‥‥‥」
姉さんは頬に一筋の汗を垂らしやや引き気味に挨拶を返す。
うん、セキさん元気な人だもんな、圧倒されちゃったかな?
そんな事を思っていたらセキさんは今度は僕の手を取ってぶんぶん振りながら挨拶してくれる。
「久しぶり‥‥‥じゃなかった、初めまして! あたしセキよ。よろしく! ところで君の名は?」
「あ、僕ソウマって言います。よろしくお願いします」
僕がそう言って返事するとセキさんはシェルさんに向かって「今回のこの子ずいぶんと大人しいわね?」とか言っている。
「はいはい、それじゃあ自己紹介も終わったから予定を話すわね。明日ゲートで学園都市ボヘーミャまで行きます。そしてそこでフェンリルしか使えないあの子の封印を解きます。あの子とフェンリルの力があればたとえ『魔王』が『鋼鉄の鎧騎士』を呼び出しても抑えられるわ。そして一気に『魔王』の子を取り押さえて『魂の制約』をかけます。そうすればもう『魔王』としての力は封じられ普通の女の子に戻れるわ」
シェルさんは一気にそこまで言ってエマ―ジェリアさんとセキさんを見る。
「と言う事で神殿に戻って報告しておいてちょうだい。私も早く終わりにしてあの人の所へ戻りたいから」
「何言ってんのよ、こんなに面白そうな事あたしも参加するわよ?」
「勿論私もですわ! シェル様と一緒に居られるならどこへでも付いて行きますわ!!」
あからさまにシェルさんは嫌そうな顔をするけどため息一つあきらめ顔でいう。
「まあ止めても聞かないだろうし、エマとセキを引きはがすわけにもいかないからね。あー、でも余計な事はしないでねセキ。せっかく忘れたままなんだから」
「分かってるわよ、無理やりはダメだって言われてる言いつけはちゃんと守るわよ?」
セキさんは姉さんと僕をちらりと見る。
なんなんだろうね?
シェルさんもそうだったけど‥‥‥
そう思いながらシェルさんを見ているとエマ―ジェリアさんがずいっと僕の前に出て来る。
「ソウマ君でしたっけ、シェル様に見とれるのは仕方ないと思いますわ。でもシェル様に手を出したら私が許しませんわよ!」
「は、はい?」
いきなりそうエマ―ジェリアさんに言われ僕は訳が分からず変な返事をしてしまう。
「そんなことしません! ソウマは手を出すなら私に出します!」
今度は姉さんがそんな事言って僕に抱き着いてくる。
そしてまた姉さんの胸で苦しい思いをする僕。
手を出すって、何それ?
僕が姉さんやシェルさんにかなう訳無いだろうに。
だってどう考えたって姉さんやシェルさんの方が僕よりずっと強いもの。
まだまだ当分勝てる気なんてしないよ!
エマ―ジェリアさんはしばし僕をじっと見ていて、ぷいっとそっぽを向いてしまった。
うーん、村の女の子にもよくやられたけど弱い僕って相手にされないもんなぁ。
相手にしてくれたのはミーニャくらいだもんなぁ。
ミーニャどうしているだろうかな?
世界征服なんかしないでまた一緒に先生の授業受けたいのになぁ。
姉さんに抱き着かれたまま僕はそう思っていた。
* * * * *
「さて、準備は良いかしら? みんなこの魔法陣に入って」
翌日シェルさんはみんなを集めてこの建物の地下にある部屋に僕たちを連れて行った。
そこにはたくさんの魔法陣が描かれていてどれもこれもうっすらと光っている。
「あの、これってもしかして全部ゲートってやつですか?」
姉さんは思わずシェルさんに聞く。
「ええ、そうよ。このシーナ商会は全世界に支店を持つ世界最大の商会なの。そしてその秘密の一つである品物を大量にいち早く世界中にばらまく方法がこれなのよ。更にシーナ商会は私たちの身内の者が始めたもの、だから自分の家と同じようなものなのよ」
シェルさんにそう言われ僕たちは驚く。
確かにシェルさんはお金には困っていないって言っていたけどそう言う事だったんだ。
シーナ商会って僕たちの村にも通販があるくらい知名度もあったんだよね。
昨日の晩御飯もすごく豪勢で美味しかったし、セキさんも姉さんもお肉をたらふく食べていたしね。
ベッドもふかふかでとてもよく眠れたけど大きなベッドで助かった。
姉さんが一緒に寝たいって抱き着いてくるけど大きなベッドでどうにか落ちずに眠れたしね。
「駄目ですわよ?」
エマ―ジェリアさんがすいっと僕の横に来て小声で言う。
「な、何がですか?」
「シェル様には手を出してはダメですわ!」
そう言われたまたまたプイっとそっぽを向かれてしまう僕。
「だ、出しませんよ、あんなに強い人に」
「そうよ! 出すならお姉ちゃんに出して!」
「姉さんにはいつも稽古でいっぱい手を出してるけど全然かなわないでしょうに」
「そうじゃなくて、昨日のベッドでも何もしてくれないし!」
「はぁ? なんの事??」
「もう、ソウマのいけずぅっ!!」
そんな僕たちのやり取りを見てシェルさんはくすくすと笑っている。
「さあ、そろそろ行くわよ?」
そう言いながらシェルさんは魔法陣を起動させたのだった。
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