101話 六月
運動会が終わり、徐々に夏に近づき気温が高くなり始めていた。小学校でも半袖の服になる生徒が増えてきた。
「千秋ちゃんは肌綺麗だけど、何の化粧水使ってるの?」
「えっとねー、C10のやつ!」
(まずは千秋ちゃんから好感度を上げていこう)
千花は取りあえずママになるために娘となる千秋の好感度を上げようとしていた。千夏は難しい、千春も難しい、千冬は色々頭が回って鋭い、となると千秋に声をかけるしか道はなかったのだ。
「千花は我に凄い媚を売って来るけどどうしてだー?」
「売ってないよ。本心で話しかけてる」
「そっかー」
(意外と千秋ちゃんも分かりづらい……いつも笑顔だからどれくらい好かれてるのかとか、好感度が分かればなぁ)
千秋がどれほど自分を好いているのか、それが分かれば良いなと千花が思った時、視界に変化が起こる。
「なにこれ……?」
今まで選択肢が視界に入ったときは合った。しかし、今回は違う。だが、普通ではない変化があったのだ。
――千秋→千花、好感度20%
「どうした? 千花、ポンポン痛いなら我が保健室に連れて行こうか?」
「大丈夫……千秋ちゃんは千夏ちゃんのこと好き?」
「勿論、生意気だけど好ましいぞ!」
――千秋→千夏、好感度100%
「なんだこれ……いや、好感度が見えるって事?」
「本当に大丈夫? 不思議ちゃんって千春が言ってたけど本当だなぁ」
「……魁人さんは好き?」
「魁人は我好きだぞ!」
――千秋→魁人、好感度???% 想い爆発まで???%
「やっぱりあの人は謎。でも、……そっか、選択肢の派生的な能力って事か……」
「だ、大丈夫か? さっきから全然我の話聞いてない……」
「なるほどね、大体わかった。取りあえずどこからがどの程度の存在に成れるか、数値の具体性を知りたいけど……でも、これに頼るってのものね……選択肢に頼るみたいでいやだし」
「おーい、我の声きこてるかー」
「……ふふふ、でも上手く使えばママに成れるかも……ありがと、あとでまた」
千花はそさくさと千秋から離れて行った。
◆◆
俺は休日の朝にランニングをしていた。理由は健康に気を使うべきだと思ったからである。まだまだ二十代前半だが、長生きをするためにはするべきであると思った。
「魁人さん」
「あ、ち、千花ちゃん、ぜぇぜぇ、はぁはぁ」
走っていると横に体操着姿で走っている千花が居た。結構朝早い時間に走っているから、知り合いとかに出会う事はないと思ったんだが……偶然だろうか?
絶対体が鈍ってるから誰とも会わないようにしてたのに……。今の俺は額から汗を出しまくっており、肩で息をしている。
「大丈夫ですか? お水どうぞ」
「あ、ありがとう……」
タイミングが丁度良すぎるから、つい貰ってしまった。うん、水は美味しい。
「……水美味しいですか?」
「凄く美味しい、ありがと」
「助かりました?」
「勿論」
「僕のこと、好きになりましたか?」
「え?」
「……やっぱり見えない。はてなマークだけ……」
はてなマーク? 一体何のことだ……。よく分からない。
「帰りましょうか」
「あ、あぁ」
言えは隣同士なので帰りの道は同じだ。千花と歩いていると、俺達の前に小さい影が二つ。
「おいおいおい、お二人さん、ちょっと待ってもらおうか!」
「金出せやこら!」
小学生くらいの身長の高さの不良少女? みたいな感じの子が地かと俺の前に立っていた。あれ? でも、この感じの雰囲気どっかで見たことあるな。
「あの、僕お金持ってないです……」
「ジャンプしろやこら! チャリンチャリン鳴るか分かるしな!」
これ、どっかで見たことあるぞ。なんだこの既知感は……あ、ゲームのイベントだ……ッ。
『響け恋心』でのイベントで主人公がヒロインの誰かと一緒に居る時に、一定確立で始まるイベント。不良に絡まれるが千花がヒロインを上手く助けて、好感度を上げる筋書きだった。
でも、絡む不良はもうちょっと大きい高校生の女子だった思ってたんだけど……千花も小さい時に既に千春達と会ってるから、イベントも前倒しになったのだろうか。
いや、でもこの世界はゲームじゃないし……凄い面倒な状況だな。
「取りあえず、落ち着いてくれ。俺達は家に帰るだけだから……それにほら、朝早いのに子供だけで出歩くのは危ないから、お父さんたちの元に帰った方が良いぞ」
「「……おいこら! なめてるんか!!」」
「色んな小学生が今どきはいるんだな……」
色々あったが上手く躱して、家に帰れた。千花と一緒に走って逃げたが……朝からすごい疲れた……
「いやー、色々大変でしたね」
「あ、そうだな」
「魁人さん、どうですか? 吊り橋効果的なので僕の印象変わりました?」
「印象は、あんまりかな」
「あ、でも、僕から魁人さんへの好感度は上がってる。これって、自身の好感度も見えるのか……」
どうしよう、なんて返していいのか分からない。本当に不思議な子だと言う印象になったと言えば、確かに印象が変わったと言えるのかもしれない。
「ではまた」
千花はそう言って去って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます