第49話 次女、疑問

 休日、私達はエプロンに身を包んでいた。手もハンドソープできれいに洗って、料理を作る準備は殆ど整っている。



「ふふふ、クッキングマスター千秋の出番だ!」

「秋姉、動かないで欲しいッス。まだ、三角巾が結べてないんスから……」



 妹である冬に三角巾を結んでもらっている三女である秋。幼いなと感じながら、同時に自分も姉である春に三角巾を結んでもらっているので特に何も言えない。



「できたよ」

「ん……ありがと」

「……それにしてもうちの妹は全員可愛いなー」

「はぁ……そう……」

「本当だよ?」

「だとしても、よ……ため息も出るわ。シスコンが過ぎるのよ」

「シスコンにもなるよ。こんなに可愛いんだもの」

「もう少し、厳しくしても良いと思うわ……」



 自分だって可愛いのにそのことには触れない。興味がないとでも言うのか。いつも私達しか見えていない。



「いや、本当に可愛いから仕方ないよね。エプロン姿もグッジョブで。以上の理由から千春ジャパンはこの活動を支援しています」

「もう……本当に何言ってんの?」

「お茶目な姉の姿を見せて好感度を稼ごうと思って」

「そう……」





彼女はちょっとドヤ顔で私の方を見る。どうだ? おもしろい事言っただろう? 的な視線だ。


正直、あんまり面白くない。



「それより、そろそろ下に行きましょう? 魁人さんがしーすーを作る為に色々準備してくれているわけだし」

「そうだね」




私達はエプロン姿のまま下に降りていく。部屋に入ると既に殆ど準備が終わっていた。テーブルの上に酢飯と小皿に分けられた、いくら、ウインナー、卵、海苔、キュウリ、ツナ。


手巻きずしスタイルと言う事か。全部、カットしてあるし後巻くだけ……これ、エプロン着る必要あった?


いや、安全面を考慮してくれたんだろうけど



「カイト! もう、やることがないぞ!」

「ごめんな。火とか刃物はもうちょっと大きくなってからだ。今日は取りあえず巻いて巻いて、食べてくれ」

「うーん……もっと、料理したかった……」

「ごめんな。でも、巻くのだって立派な料理なんだ」

「そうか?」

「そうさ」

「そうか!」


単純……ワザとか、素か。秋は偶に分からなくなる。


「か、魁人さん、千冬のこの姿どうでスか……?」

「……似合ってるな」

「っ、あ、ありがとうございまス……」

「えっと……まぁ、好きなように食べてくれ」




何故、頬を赤らめる? 冬? 良く分からないなー


魁人さんの号令で妹の冬が嬉しそうに海苔を取ってその上に具材を乗せていく。次に秋が。


私は秋の次に海苔の上に酢飯と卵とかいくらとか、ウインナー、豪華に沢山乗せる。しかし、具材が多すぎて巻けない。


「ふっ、下手糞だな」

「直接スプーンでいくら食べてる人が何言ってんの」



秋はもはやルール無用で食べ始めた。普通にウインナーを箸で掴んで直で食べたり、お椀に酢飯入れてその上にいくらを乗せて醤油をかけて、口にかきこむ。


手巻きずしの調理実習なのに、無法者だ。



「か、魁人さん、こ、こんな感じでスか……?」

「そう、だな……上手だ」



そして、冬はそんなに魁人さんに聞くのはどうして? 私は思わず首をかしげるが私には分からない何かがあるのだろうと気にしないことにした。


一つ、自作オリジナル巻きずしを食べ終えて、次にどんな巻きずしを作ろうかなと材料を見渡す。


秋がいくらを食べ過ぎて、残りが少ない。次はいくらを入れて……ふふ、楽しい……




「千夏?」

「ん?」

「楽しいね」

「……そうね」




どうやら、春も同じようだった。私もそうだ。楽しい。心が暖かくなって自然と笑みがこぼれる。


そのまま海苔の上にご飯といくらと乗せて、巻いて口でパクリ。


おいしいなぁ……



◆◆




 うち達は手巻き寿司調理実習を終えた後にテレビなどを見て、五人で談笑して時間を潰して、今は湯船に姉妹四人で浸かっている。



「ふぅ、いい湯だな!」

「アンタ、いくらをいくら食べれば気が済むのよ! 全然、私食べれなかったじゃない!」

「あれ? このお湯急に冷えたか?」

「ダジャレを言ってるわけじゃないわよ! バクバク、周り考えないで食べて!」

「まぁまぁ、夏姉、落ち着くっスよ。楽しかったんだから良いじゃないっスか」



 うちの可愛い姉妹が湯船に浸かりながら会話を交わす。



「冬、アンタは甘いわ。このままだと秋が凄いダメダメのダメ人間に成ってしまう」

「いや、それは無いと思うっスよ」

「そう? 私の勘だと絶対になると思うけど……」

「むっ! 誰がダメ人間だ!」



 千秋が少し眉を顰めて不機嫌そうな顔をする。体をわずかに動かして不満感をアピール。湯の水面が揺れて小さな波が立つ。



「アンタは本当にバクバク食べて……私だって、もっといくら食べたかったのに……そんなんだから……最近、ちょっと太ったでしょ?」



この、何気ない千夏の一言が千秋を怒らせた。



千秋はちょっと素直で幼い所はあるが根っこは列記をとした女の子。オシャレを意識したり、見た目を意識したり、中身を意識したり。


偶に気を付けない時もあるけど、千秋は千秋なりにそこらへんは気を付けてる。だから、その一言は怒る



「カッチーン……はぁ? 太ってないですけど? 健康的な体つきになっただけですけど?」

「ふーん、何かお腹周りがポッコリして、ついでに胸もポッコリしてきてない?」

「きてない! 胸は変な感じはするけど……そういう千夏は顔がぶくぶく狸になってるぞ」

「はぁ? どこが? 滅茶苦茶気を遣ってますけど? 毎日顔の血行マッサージしてますけど?」

「我も滅茶苦茶運動してるから、太ってないですけど?」

「運動してもそれ以上食べちゃうからねー」

「はぁ? 千夏、お前握力なんぼだよ?」

「13ですけど?」

「はい、我18ー! 13って! 箸より重い物持った事ないんですかー!?」

「カッチーン……喧嘩売ってるの?」

「寧ろ、買ってる」



喧嘩する程仲が良いと言うがこの二人は……勿論、この二人にも適用される。だが、徐々に睨み合いが始まる。


これは不味いと千冬は一足先に湯船から脱出。それを見てうちも脱出。


「これは、またあれが始まる感じっスね……」

「そうだね……」



湯船の水面が嵐でも降っているかのように激しく揺れる。


「オラオラオラオラ!」

「なによ、このこのこのこのこの!」



湯船の水を互いに叩いて水を当てっこ。お兄さんの家に来てから、風呂場で二人が喧嘩すると大体これをやる。



そして、大体、数分経つと笑顔で仲直りをする。こちらの心が浄化されていく。


バシャバシャ、ざぶーん、数分ほどで嵐はやんだ。そして、うちと千冬は再び湯船に。


「そう言えば、秋、アンタ最近、西野とはどうなのよ」

「別に、何もないが?」

「教室で見てるけど、かなり話しけられてない?」

「そうだな」

「秋姉はモテモテっすね」

「そうか? まぁ、我は可愛いからな!」

「自分で言うってどうなのかしら?」

「でも、真実だからしょうがないよ、広辞苑で可愛いって調べると一番最初の行に千秋って出てくるし」

「えッ? 本当!?」

「春! 嘘をつくんじゃないわよ!」



西野は確かに千秋に話しかける頻度は多い。四年生の時からもだけど、五年生になっても絡む頻度は衰えない。


「全く、デマ情報を……そうだ。冬、アンタはどうなの? 浮いた話が全然ないけど?」

「えッ!? ち、千冬は別に……」

「なんだ! 千冬はそう言う話が無いのか!」

「いや別に……」



千夏と千秋に迫られて、オドオドと煮え切らない反応をする千冬。


「ふーん、ないんだ……まぁ、冬って理想高そうだしねー」

「そうだな。千冬は理想高そう」

「べ、別に……そんなに……」

「じゃあ、どんな感じなの?」

「話してみんしゃいヨか石鹸だぞ」

「え、ええ……」

「良いじゃない、話してよ」

「ええじゃないか! ええじゃないか!」

「う、うーん……」



千冬、最早姉二人に迫られて何も反抗できず。


「そ、その、りょ、料理が上手で……」

「へぇ、まぁ、確かに出来た方がいいわね」

「そうだな! 我も同意!」

「あとは、け、経済的に安定してて……」

「確かに重要ね」

「我も安定が良い!」

「清潔感があって、運転も上手で、大人な雰囲気があって、優しくて、気遣いも出来て……」

「まぁ、確かに、そう言うのは重要ね」

「うん? 何だか、近くにそんな感じの人が居たような……」

「朝、眠い時にする欠伸が可愛い人……っス……」

「いや、それは分からないわ」

「何か、カイトに近いな!」



千冬は顔を赤くして両手で顔を覆う。どうやら千秋がドンピシャで名前を出したことが恥ずかしいらしい。


「そうね、魁人さんの感じがどことなく……」

「我も気持ちはわかるぞ! カイトみたいな人が側にいてくれると嬉しいからな!」

「へぇ、秋は魁人さんみたいな人がタイプなんだ」

「うーん……そうなのか? 良く分からないけど! カイトは好きだぞ!」

「それは知ってる」




千冬は自分の好きな人がバレなかったことにホッとしているようだ。うちにはバレてるけど……これは千冬の問題でもあるし、黙っておこう。



その後は十二分に温まり、お風呂上りに全員でお肌パックをした。



◆◆




 俺は四人がお風呂に入っている間、ソファに座りながらテレビを見て先ほどの手巻き寿司の事を考えていた。


 流石に過保護になり過ぎたか。小学五年生で巻くだけは……でも、楽しそうではあった。それに包丁って千夏が少し苦手だし、単純に危なそうだし。もうちょっと大きくなってからだな。



 ……大きくなったらか。今後、どうするのが正解なんだ? 育てるって言う事にしているが具体的にどうするのか決まっていない。


 ゲームなら高校でエンディングを迎えて、ハッピーエンド。その後結婚までは行くけどその後は知らない。


 筋書きがないとも言える。ゲームはエンディングを迎えたらそこで終了なのだ。ただ、この世界は違う、似たり寄ったりの場所はあってもエンディングで終わるはずだった場所の先がある。


 職業とか、就職とか、今から考えた方が良いのかな?


 だとしらた、塾とかお稽古……行かせた方が良いのか?


 いやいや、まだ小学生、自由にさせて……いやでも、やはり小さいころから親の英才教育を受けてきた子供たちは違うって聞くぞ。



 あと、超能力の事はどうしたらいいんだろうか。下手に触れて距離をとられたりはしたくない。


 そもそも、人に秘密とはつきものだ。わざわざ知って暴いて、なんてする必要はあるのか……。俺は父親らしく単純な愛を与え続ければ良いのでは……


 超能力ってそんな単純な物じゃない。ダメだ、どうしたら良いのか。分かんねぇ。


 主人公ってどうやってそこら辺、関わっていたっけ……。好感度上げて、そしたらイベントが起こって、姉妹達から教えてもらったり、事件が起きてそれが原因でバレてしまって、それで姉妹が慌てて秘密にして欲しいと言われて……



 参考にならなねぇ……



 まぁ、主人公と俺は違うから参考にする事もできないし、ゲーム知識を主軸にするのはダメだな。俺の眼で見て、感じたことを主軸にした方が良いんだろうな……。俺が見て感じた事……それを主軸にしたらそもそも超能力を事細かに知ってしまっている俺の知識は無視した方が



 ……あ、ダメだ。頭がパンクする。



 偶にこうやって考える時があるがどうしたら良いのか、最適解が浮かばない。



「お兄さん」

「ッ! あ、お風呂あがったのか?」

「はい、上がりました」

「うん……全員でパックしてるのか?」

「はい、お兄さんが折角買ってくれたので」



四人は全員お風呂上がりのパックをしていた。白いパックが顔包んでいる四人を見て少し驚いてしまう。


「カイトー! お化けだぞー!」



両手の指さきを下に向けて声を低くし、俺に迫ってくる千秋。可愛いな。



「どうだ!? 怖いか!?」

「うーん……あまり怖くないかな」

「そうか……」

「でも、可愛くはあったな」

「えへへ」



何というか、素直過ぎる。そこが長所でもあるんだろうけど。パックに包まれたままの笑顔だが可愛さはいつも通りだ。


「そう言うのがずるいっスよ……」


ジト目を向けてくる千冬。どんな、反応をすればいいのか……これも考えないと……


暫くパックで保湿肌お手入れタイムを等をした四人はツルツルの肌のまま、リビングを出て行く。健康な生活でよろしい。


「おやすみなさい、お兄さん」

「カイト! おやすみ」

「魁人さん、おやすみなさいっス……」



四人が出て行ったが直ぐ後に千夏がリビングに戻ってくる。肌がツルツルだ


「あの、魁人さん」

「どうした?」

「一つ、お願いしてもいいですか?」

「何でもは無理だが、出来る限りはするぞ」

「ありがとうございます……私は自分のやりたいことを見つけたいです……」

「ほう? 将来の夢とか、そんな感じか?」

「そんなに遠くなくても良いんですけど……何か、夢中になれるものと言うか、熱中できるものと言うか」

「習い事とかそう言う感じか?」

「そう、なんですかね……? すいません、大雑把で……」

「いやいや、謝ることはないさ。だが……」



まさか、こんなお願い、相談を俺にしてくれるとは! 今までこのような重要な相談などを俺にしてくれた事があっただろうか?


否である。これは俺の事を父として尊敬してくれている証。内心で父としての自身の成長を俺は喜んでしまう!



「そうだな、勉強をすると色々知識が増えてやりたいことが……そんな嫌な顔をしないでくれ、塾とかには入れないから」

「はい、ありがとうございます」



勉強が嫌だと顔に書いてあるようだ。千秋もだけど、親として勉強は出来て欲しい。絶対に将来得になる。だが、無理にはな……


おっと、取りあえずこのことは置いておこう。今は千夏のやりたい事。


「スポーツとか、ゲームとか、そう言う感じか?」

「ゲーム……普通に欲しいです。でもいいんですか? ゲームって高いし、頭に悪いからって買って貰えない人も居るって……」

「ずっとゲームはダメかもしれないが、時間を決めれば大丈夫じゃないか? あと、七月七日は四人の誕生日だろ? 誕生日プレゼントって事にすれば全然いいぞ」

「……そうですか……あの、私誕生日って言いましたっけ?」



千夏が少し怪しむような視線を向ける。まぁ、本来なら知りえない情報を相手が持って居たらちょっと怖いよな。ゲーム知識で知っています。何て口が裂けても言えない。


「ほら、あそこを見てくれ」

「?」


俺は家に貼ってあるカレンダーを指さす。今は六月の日にちが。俺は立ち上がりカレンダーを一枚めくる。すると七月七日に


『祝! 我等の誕生日!』


と赤文字で書いてあった。ついでに可愛い花も書いてある。パンジーかな?


「これだけ、大々的に書かれてたら祝わないわけにいかないよ」

「……本当に秋がすいません」

「いや、これくらい堂々としてくれると逆に接しやすくて助かる。それに直接言ってこないって事はちょっと遠慮してる所もあるんだろうさ」

「遠慮……? これだけ大々的に書いて遠慮は無いと思いますが……」

「……そうかもな」



遠慮しているのか、どうなのか。真相は千秋の中だが俺はちょっと遠慮していると言う判断を下したい。


遠慮はしなくて良いと言ったが、きっと十割しないと言うのは無理だろう。性格が良い四人はどこかしらで優しさが出てブレーキをかけてしまう。


これは俺が見て感じてきたことから推測したことだ。


多分……あってるよな?



「それでやりたい事は……直ぐには難しいかもな。今度、サッカーとかどこかでやってみるか?」

「サッカー……それなら私は、バレーの方が……良いかもしれません」

「へぇ、バレー興味あるのか?」

「ちょっとだけですけど……」

「そうか……」



意外だな。バレーに興味があったとは。初めて知ったなそれは……。俺も前世でしていたから少しだけなら心得はあるが……教えるのはしたことがない。



「取りあえず、今度してみるか?」

「はい……お願いします」

「うむ、分かった」



千夏はそれではと言う感じでドアの方へ。



「魁人さん、おやすみなさい……」

「おう、おやすみー」



彼女はぺこりと頭を下げて部屋を出て行った。礼儀正しく可愛い子だ。


さて、頭の整理をしよう。




◆◆




いつもの職場。デスクで本を広げながら昼休みを過ごす。読んでいるのは算数の本である。


『小学五年生の算数を分かりすく!』


と言う文字がデカデカと表紙に入っている。隣の佐々木がうどんを食べながら彼は俺に不可思議なもでも見たように聞いた。



「それで、なんでお前はそんな本を読んでるんだ?」

「勉強を教える為だ。無理やりにさせる気はないが聞かれた時に答えられる程度にはしておかないとな」

「くぇー、今更勉強はしたくない。俺はさ、高校の時に数学で赤点何回も取ってたんだよ」

「へぇー」

「お前はどうなんだ?」

「赤点は一度もないな。俺はテストを乗り切る必勝法を持っていたからな」

「マジかよ、俺はガチで手こずったぞ。特に順列がな」

「確かに順列は難しかったな」


二人で話していると後ろから声をかけられる。宮本さんである。


「あら、魁人君、純烈知ってるの? 良いわよね、あの歌声が」

「すいません。全国の温泉を回っておばさま方に人気の純烈ではなく、数学の順列の話です」

「ああー、そっちね! ごめんね、勘違いしちゃった」

「いえいえ、お気になさらず」

「それにしても、算数の本でも読んじゃって、教師でも始めるつもり?」

「教師……したい所はやまやまですが所詮真似事しかできないですね。教員の免許を取らなかったことが悔やまれます」

「あら、そんな風に一緒に勉強をしてくれる人が居るだけで子供は幸せよ」

「そうですかね?」

「そうよ」



そういうものか? 一緒に勉強すればやりたくなるのかな? 


「最近、子供の将来の事を考えてしまってついつい、口を出しそうになってしまいます」

「まぁ、勉強が出来た方が良いわよね。保険的な意味でも」

「そうなんです。だけど、無理やりはさせられないので……」

「無理にやらせてもさぼったり集中力が続かないなんてこともあるわね」

「やはり、そうですよね」



勉強、やりたい事、将来、就職。色々な事が俺の頭の中に渦巻いている。取りあえず何か行動を起こさないと思い、こうして小学五年生の算数を振り返っているがこれもどこまで意味があるか。


取りあえず俺は頑張っている背中を見せて奮い立たせたり、言葉に説得力を持たせる方針にした。



「前に千秋ちゃんと千夏ちゃんが勉強が苦手って言ってたわね」

「はい、ただ、二人は記憶力は悪くないはずなんです。買ったお菓子とか全部把握してるから、隠しても何処だ何処だと探すくらいですから。あとはテレビで出た女優の名前覚えていたりと」

「なるほど」

「つまり、問題は好奇心の有無……好奇心の幅が二人共かなり広いから興味あることはやるけど、興味ない事はとことんやらないと言うスタンスが完成しているんだと、ただ、それをどうするかはまだ、考えていませんが」

「なるほど、もう、教師ね。パパの次は家庭教師かー。魁人君って多彩ね。給湯室でも話題よ。若手のカメレオンパパって」

「この職場の給湯室ってどうなってるんですか?」



変な話題が職場で広がっている。まぁ、どうでも良いけど……


「……俺、空気じゃね?」



あ、ごめん……佐々木。



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