第9話久々の休日にて

 さて、松浦係長の件から数日が過ぎた。


 なんとかギリギリで、無事にゲームを買うことができた。


 予約は3日過ぎると、取り消しになってしまうから危ないところだった。


 今日は土曜日だし、天気も良く、良いゲーム日和だ。


 え?天気が良いなら出掛けるんじゃないって?

 いやいや、それは大きな間違いだ。

 天気がいいのに、敢えて引きこもってゲームをやるのが贅沢なことなんだ。


「俺は誰に説明してるんだか……この間から色々あったし、やはり疲れているのかもな。ここはゲームをして英気を養うとしよう」


 ただ、本当に贅沢な時間だと思う。

 午前中から好きなゲームをできるなんて……。

 学生時代は無限と思える時間があったし、やり続ける体力もあった。

 しかし、社会人の時間は有限だし……何より体力がない。

 ついこの間までは、一日中やってても疲れなかったのになぁ……。

 今では三時間くらいやったら、一度休憩しなくてはならない。


「今は9時か……12時までやるとしよう」




 その後、待望の新作であるモンスターハン○ーのを楽しむ。


 すると……本当にあっという間に時間が過ぎる。


「マジか、もう12時か。本当に、楽しいゲームはあっという間に時間が過ぎるな……とりあえず、外に出るとしようか」


 スエットから普段着に着替えて、マンションを出る。


「今日の気分は……マッ○かな。持ち帰って、ネット小説を見ながらのんびり食べるとするか。ある意味、俺にとっては究極の贅沢でもある」


 学生時代は気が狂ったように食べていたが……。

 流石に行く機会も減るし、栄養バランスも悪いしな。

 ちなみに、宅配サービスは使わない。

 歩くことによってリフレッシュになるし、身体の健康面でもそっちの方が良い。

 さらにネット小説も夜更かしして読んでいたが、今はそういうわけにもいかない。


「ハァ、社会人って辛いなぁ……いや、生きるためには仕方のないことなんだけど」


 今の会社は恵まれる方だし。

 給料こそ、手取り25万と普通だが、定時で帰らせてもらえるし。

 休日出勤も、そうそうないから助かる。


 その後、少し遠回りをしてマッ○に到着する。


「テリヤキ一択だな。ポテトにコーラは鉄板だ」


 購入したら、最短距離で家に帰る。

 コーラは炭酸が命だし、ポテトがしなしなになる前に……。




 なんとか美味しい状態を維持して、無事に贅沢な時間を過ごす。


「やばいな、ネット小説見ながらこれを食べるのは。背徳感が半端ない……へえー、最近のラブコメは寝取られや浮気が流行ってるのか……時代は変わるんだな」


 そんなことを考えつつ、時間は過ぎていく。


 すると、スマホが鳴った。


「ん?誰だ? 姉貴かよ……」


 俺には埼玉に住む両親と、都内に住む四つ上の姉がいる。

 仲は悪くないが……俺は昔から頭が上がらないから、少々困ることがある。


「無視するか?いや、そうすると後々面倒なことになるか。ハァ……もしもし?」


『あっ——出た。お姉ちゃんですよー』


「そんなもん、見ればわかる」


『なに?怒ってるの?オナ○ーしてた?』


「してねえよ!いや、してたとしても言わねえよ!」


『まあ!乱暴な言葉!それが可愛いお姉ちゃんに対する態度なの?』


「おい、30歳にもなって……」


『なにか……?』


「いえ、なんでもございません」


 危ない危ない、逆鱗に触れるところだった……。


『なによ、年上好きなくせして……まだ、私は若いのよー!』


「はいはい、そうですねー。で、どうしたんだ?」


『久々に弟の手料理が食べたいなぁーって』


「なんだ?彼氏と別れでもしたのか?」


『そうなのー!あの男ったら!浮気してたの!』


「どうせ、姉貴の勘違いじゃないか?」


 昔から早とちりするタイプだからなぁ……。


『違いますー。絶対ですー』


「はいはい、わかったよ。で、今どこにいるんだ?」


『今、着いたよー。早く行こー』


「ハァ!?意味わからん!相変わらずだな!」


 どうして姉という生き物は、こっちの事情を無視するのか。

 永遠の謎である……。


 ピンポーンと音が鳴る。

 そしてインターホンを覗くと……。


「マジでいやがる……」




 仕方ないので、また着替えてマンションの入り口に向かう。


「遅い!」


「仕方がないだろ。全く、急に来て……」


「だって、前もって言ったら断るでしょ?」


「……否定ができない」


 ゲームや小説を理由にして、断ることが想像がつく。


「さあ!買い物に行くわよー!」


「ハァ……わかったよ」


 まあ、夕飯の買い出しには行く予定だったし。

 それに……きっと、俺を心配して来たんだろうしな。



 その後姉の車に乗り、スーパーにて買い物をする。


「なにが食べたいんだ?」


「んー……イタリアンな気分ね!」


「じゃあ、まずはサラダ系だな。鳥モモ肉と豚ロースはどっちが良い?」


「……鳥ね!」


「ソースはトマト系?それともステーキ系?」


「トマトね!」


「トマト……鳥モモ肉……フレッシュソースかな……あとはカボチャのポタージュと付け合わせか……」


「相変わらず、早いわね。昔から料理は得意だもんね」


 俺はとある事情により、幼い頃から料理をしていた。

 好きとか嫌いとか以前の問題の頃から。

 もちろん、作るのは嫌いじゃないが……。


「姉貴ができないからだろ?」


「なによ!良いの!私は料理のできる旦那を捕まえるよ!」


「わかったからくっつくなよ!いい歳した兄弟が気持ち悪い!」


「失礼ね!……何かしら……?なんか、物凄い美人さんがこっちを見て固まってるんだけど……」


「はぁ?なに言ってん……ま、松浦係長……?」


「み、水戸君……そんな……そうだったの……そうよね……」


 なんと……姉の視線の先には、買い物カゴを持った松浦係長がいた……。


 しかも……何故か、物凄く落ち込んだ様子で……。


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